キャリア構成・転職活動において重要となるのが「アセスメントツール」。
アセスメントツールとは?
個人の能力や特性、能力に関する情報を得るために、実務・実践とは異なる方法で測定するためのツールである。目的としては、採用・人員配置・異動・昇進等に利用される。最近の傾向としては採用や人員配置のためだけではなく、研修や能力開発の目的で使用するケースも増えてきている。また検査内容については3つのタイプにわかれている。性格・気質などを測る検査、興味・関心・価値観などを測る検査、能力・スキルなどを測る検査。
アセスメントツールは「適性検査」のひとつとして、教育課程から就職・転職活動、果ては企業内の採用・配置など人事でも使われているほどです。
この手の診断・測定ツールは「参考にならない」と思われる方もいるでしょうが、最近のアセスメントツールは、心理学や統計学などの体系的な学問を背景としているものも多く、その精度はかなり目を見張るものがあります。
そのため、転職活動やキャリアプランでも重要となる「自己分析(自己理解・性格診断)」の参考とするためにも、アセスメントツールを有効に使っておく価値は十分あります。
…とはいえ、アセスメントツールの使い方や性質を理解せずに使うと「当たっている・当たっていない」という感想しか出てこず、ただの朝のニュースの占いレベルのツールと成り下がってしまうのも事実です。
そこで今回は、アセスメントツールの性質をよく理解した上で、より効果的にキャリアプラン・転職活動に活かす方法を考えていきます。
アセスメントツールとは?
アセスメントツールを一言で表すなら「個性や適性を”客観的”に把握するためのツール」。
ただ、占い的な使い方が出来る分、知識がないと「当たっている・当たっていない」で終わりがちな面は否定できません。
アセスメントツールを使う上で知っておきたいのは、以下のような「体系的な理論や学術的裏付け」が存在するということです。
アセスメントツールの理論や裏付けの例
- 個性・性格・適性などを”統計的”にまとめたもの
- 診断の背景には”心理学”による体系的な理論がある
…とはいえ、これだけでは「統計学」「心理学」をよく知らない方にはイマイチ想像できないかもしれません。
もっとわかりやすく言うと、先人が今まで見てきた人や付き合ってきた人から得た性格傾向をもとにしているわけです。
どういうことかというと、対人経験が豊富になると「あ、この人は◯◯タイプだな」「このタイプの人とはこう付き合うべきだな」とわかってくるかと思いますが、それと同じです。
先人が理論的に研究してきた「性格」「個性」「適性」を分類化したものなので、それなりに当たるように出来ていて、信憑性も決してバカにはできないものなのです。
ただし、アセスメントツールを自分で利用して参考にする場合は、以下のような点には注意。
アセスメントツール利用前の注意点
- 「主観(自分で思っている部分)」「客観(他者評価の部分)」で各項目への回答にムラが出る
- よって、その時の気分や考え方で診断結果に差異が出ることは知っておく
- また、他人からの過去の言動やレッテル貼りを気にせずに「素直に自分が思っている通りに答える」必要もある(他者評価を気にしない)
- あくまで”統計的な診断結果”なので、個人の人格や性格を断定するものではない(使い方を間違えると「レッテル貼り」「差別」につながる恐れもある)
たとえば、私なら仕事モードに入っている時はかなりドライな考え方をしているので、性格診断で有名な「MBTI」では「INTJ(建築家)」に診断される一方で、仕事から意識が離れている時は「INTP(論理学者)」に診断されることが多いです。
そして、そのどちらも「社会性に乏しい」など散々な評価がされていますが、それは必ずしも「社会不適合者である」という意味ではなく、むしろ「能力をより活かしたいのであれば、社会性を身につけるべき(あるいは、社会性をカバーしてくれるパートナーと仕事するべき)」と受け取るべきですので、診断結果の受け取り方にも気をつけておきましょう。
アセスメントツールは診断者の人格を否定するものではなく、客観的な現実を確認して自己肯定するために使うものです。
関連:社会不適合者は死ぬしかない?仕事を見つけ出して就職するための考え方。
有名なアセスメントツール一覧
MBTI
ネット上でも「当たっている」と評判の性格診断が「MBTI」です。
MBTIとは?
MBTI(エムビーティーアイ:Myers-Briggs Type Indicator)は、個人をタイプに分類したり、 性格を診断したりすることが目的ではありません。回答した個人一人ひとりが、自分の心を理解し、 自分をより生かすための座標軸として用いることを最大の目的にしています。そのために、原版の 研究開発は20年以上の期間をかけてなされただけでなく、現在出版されている諸外国の国際規格の MBTIも、それぞれの国のMBTIエキスパートといわれる心理学者や臨床心理士ら、専門家の手によって、 長い年月をかけ、それぞれの国の文化にあわせたかたちで、国際規格に基づいて研究開発されたうえで 出版されています
心理学の巨匠である「ユング」の理論を基にしているので、その精度はかなり高いともっぱら評判です。
ネット上では無料サイト「無料性格診断テスト|16Personalities」で簡易的な診断をすることが出来ます。
個人的には「診断結果のタイプの逆を意識してみる」という使い方が一番しっくりくるので、どちらかというと「欠点診断ツール」という性質が強く感じます。
- 「内向型」であれば外向性を意識して仕事に取り組んでみる
- 「直観型」であれば、現実的な感覚で判断する人と折り合いをつけるコミュニケーションを意識してみる
- 「思考型」であれば、より感情面を重視したコミュニケーションを意識してみる
以上のような使い方をすれば、仕事上での人付き合いや問題への対処に関してもある程度改善可能であり、それは転職活動での「自分の欠点への対処法」として、前向きな自己アピールにつなげることも可能です。
つまり、自分の欠点を知ることで、成長することができるのです。
逆に自分の強みを知りたいのであれば、後ほど紹介する「ストレングスファインダー」とリクナビNEXTの提供する「グッドポイント診断」がオススメです。
また、MBTIの正確な診断方法については「日本MBTI協会」にて詳細な記述がありますので、ネットで無料で試せるものはあくまで非公式のものであることを理解しておきましょう。
ストレングスファインダー
近年「才能診断ツール」として有名なのが「ストレングスファインダー」です。
ストレングスファインダーとは?
ストレングスファインダー®とは、米国ギャラップ社の開発したオンライン「才能診断」ツールです。Webサイト上で177個の質問に答えることで、自分の才能(=強みの元)が導き出されます。ストレングスファインダー®における「才能」は次のように定義されます。
出典:受け方・診断方法 | ストレングスファインダー®とは | ストレングスファインダーで強みを活かす 株式会社ハート・ラボ・ジャパン
ストレングスファインダーは性格診断とは違い「自分の中に眠っている才能」を探り出すアセスメントツールで、将来設計の見直しに役に立ちます。
ただし、その精度の高さからか、有料でなければ利用できない点には注意です。
具体的には「書籍購入→シリアルコード入力→WEB診断」という形になります。
まずは無料で利用できる、リクナビNEXTの「グッドポイント診断」を使ってみて、より自分の強みや適性から将来設計を考え直したい方が使うことをオススメします。
リクナビNEXT「グッドポイント診断」
人材サービス会社「リクルート」の手がけている「グッドポイント診断」も、本格的なアセスメントツールとして有名です。
この診断ツールの元ネタや背景は明かされてはいませんが、診断結果の分類や診断方法を見るに、他のアセスメントツールの理論(目的から見て「ストレングスファインダー」に似ている)を国内の転職活動用にアレンジした形だと思われます。
診断結果に関しても「当たっている・当たっていない」というよりは「統計的にこういう性格分類に入るため、転職活動や今後のキャリアプランの参考にしておく」という性質が強いので、あくまで「将来のキャリアに向けた診断ツール」という使い方をしておくといいでしょう。
また、グッドポイント診断は以下のような欠点もあります。
リクナビNEXT「グッドポイント診断」の欠点
- 一回しか診断出来ない(そのためか、診断中に「同じ質問」が重複され、診断結果自体の精度を高めている)
- あくまで転職活動の「自分の”強み”」を探り出すことが目的で、欠点についての指摘は弱め
- 将来的・キャリアプランの参考のためのツールなので「今の自分」には当てはまりにくく、実感が湧きにくい
たとえば「リーダーシップの資質がある」と診断結果が出ても、該当する経験がなければあまり実感が湧いてこないということが起こりえます。
「MBTI」については、割と心にグサッと刺さる欠点についての指摘もあるのですが、グッドポイント診断は終始「強み=いいところ」に焦点を当てている点が、良くも悪くも特徴的です。
よって、このグッドポイント診断のみを参考にしすぎると、転職活動で「欠点を補うための自己アピール」が出来なくなるので、他のアセスメントツールを使って欠点も知っておいたほうが無難でしょう。
また、単純にリクナビNEXT側の転職見込み人材の集客ツールという性質もあるので、使う場合は「人材会社の広告」と踏まえて使っておくといいでしょう。
具体的には、転職情報が届くことになるので、あらかじめ会社内でバレることのないメールアドレスで登録しておくことを強く推奨しておきます。
リクナビNEXT自体、転職総合情報サイトとしては非常に完成度が高く、チャンスも得やすいので、転職に少しでも興味がある方なら、使っておいて損はありません。
この診断結果を基に、転職のオファーを依頼してくる企業もあるので、気になるのであれば登録して試してみるといいでしょう。
アセスメントツールは性質をよく理解して「参考」に留めておくこと
以上、アセスメントツールの使い方や各種性質をご紹介してきましたが、最後に「アセスメントツールは参考にしすぎない方がいい」と強く釘を刺しておきます。
なぜなら、機械的な診断に自分を委ねてしまうような人間、ハッキリ言って「自分がない」と思われるからです。
わかりやすく言えば「アセスメントツールで診断した結果、自分の”強み”や”才能”は◯◯です!」と主張してみても、経験や結果が伴わなければ、何の説得力もないからです。
仮に、アセスメントツールで「ある分野に才能がある」と結果が出たとしても、何も行動も起こしていなければ、そもそもが「本当に才能があるかどうか判断できない」わけです。
ですので、各アセスメントツールを使う場合は「診断結果に自分の将来を委ねすぎない」という断固たる意志を持って、効果的に活用することを意識しておくといいでしょう。
自己分析・自己アピールに不安があるなら転職エージェントも使っておこう
「自分の性格と今の職場が一致していない」「転職活動の自己分析や自己アピールがわからない」と悩んでいる方は、アセスメントツールだけに頼らず、転職エージェントでプロのアドバイザーから客観的なアドバイスをもらっておくのもありでしょう。
関連:転職エージェントの仕組み・特徴・メリット・デメリットを徹底解説!転職サイトとの違いは?
アセスメントツールは自分だけで完結して独りよがりになりやすい欠点があるので、プロからアドバイスをもらっておき、自己理解を深めておくことが間違いありません。
ただし、転職エージェントを使う場合は以下のような注意点もあります。
- 担当者が未熟な場合、こちらの性格や適性を無視した求人を提案してくる可能性がある
- 自己分析・性格診断については、しっかり本音を話さないと精度が落ちやすい
- 何度か面接を重ねることで、自己理解を深めていくことも大事(行動しなければ、自分の欠点や得手・不得手も把握できない)
たまに「エージェントならなんでもわかってくれる」と過剰な期待をしている人もいるみたいですが、コミュニケーションを重ねなければ互いのことを理解できる道理もありません。
逆にしっかりと相手に相談すれば、心強い味方になってくれる可能性もあるので、本人のポテンシャル次第です。
また、複数のエージェントで色んな担当者と相談して転職活動をしていくうちに、自分の強みが客観的にわかってくるようになるので、余裕があれば出来るだけ多くの転職エージェントを活用して、自分と相性のいい担当者を見つけ出すことをオススメします。