「弁護士と言えば高年収のお仕事!」
「難しい資格を必要だから稼げる仕事!」
「弁護士はかっこいい仕事」
弁護士と言えば、このような世間のイメージが強い仕事です。
たしかにそういったイメージがありますが、弁護士はあくまで”ビジネス”。
業界内で「稼げている人」と「まったく稼げていない人」の落差の激しいお仕事なんです。
以下の画像は有名経済誌を発行している「東洋経済新報社」のデータです。
画像出典:会社四季報「業界地図」2019
この画像の示す通り、弁護士全体の20%近くが年収100万という、上下差の激しい職種であることがわかってきます。
20%ということは、実に5人に1人の弁護士が年収100万以下という計算になります。
逆にしっかりと働き先を選べば、年収600万越えの弁護士も50%以上だとわかってきますね。
ですので、仕事選びを間違えなければ、弁護士は高収入の職業であることは間違いありません。
では一体、年収100万以下の弁護士と、そうでない弁護士にはどのような差があるのでしょうか?
当記事では各種データや経済情報を参考にしながら、弁護士が低年収になる仕組みと、低年収側にならないための方法をご紹介していきます。
弁護士業界のビジネスモデルを知っておこう
「なぜ、年収100万円以下の弁護士が増えるのか?」を考えるにあたって、まず知っておきたいのが「弁護士業界のビジネスモデル」です。
冒頭にお伝えした通り「必ずしも弁護士になったからと言って、稼げるわけではない」どころか「仕事先を間違うと年収100万円以下」なのが、弁護士の実情です。
わかりやすい例え話をしましょう。
仮にあなたが、法大に通って資格をとって弁護士事務所に就職しても、その弁護士事務所を利用する依頼者が1人もいなければ、収入源はゼロです。
ですので、弁護士資格も”ただの飾り”としかなりません。
逆に実績があって、多数の依頼者を抱えている弁護士事務所であれば、仕事が殺到し人手が足りないため、1件毎の依頼に対しての相談料も高くとることが可能となります。
弁護士の年収差が激しくなるのも、この”依頼される仕事の差”だと考えていただければ、わかりやすいでしょう。
業界に影響力を持つ「四大法律事務所」の存在が大きい
弁護士業界の力関係やビジネスモデルを知っておくにあたって、決して切り離せない存在が「四大法律事務所」です。
四大法律事務所とは?
日本国内における、所属人数の多い以下の弁護士事務所のこと。
- 西村あさひ法律事務所(537人)
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所(448人)
- 長島・大野・常松法律事務所(422人)
- 森・濱田松本法律事務所(404人)
近年では「TMI総合法律事務所」も同規模の人数(398人)になっており「五大法律事務所」と呼ぶ動きも。
※所属人数は2018年の6月26日段階のもの
※データ出典:会社四季報「業界地図」2019
では「なぜ、この四大法律事務所が力を持っているか?」を考えてみましょう。
これは単純で「大きな法律事務所ほど、法人(企業)を得意先の依頼主として抱えている」からです。
また、四大法律事務所はそれぞれに「各分野や業界に強い=専門性=強み」も持っており、各業界と強く太いコネも持っております。
もともと、弁護士は「お金を払ったからと言って、必ずしも望む結果が得られるとは限らない=非常に難しい仕事」ですので、資格を持っているのは当たり前で、それ以上の「信頼」「実績」「実力」も大事になってくる職業なのです。
たとえ話をしましょう。
仮にあなたが会社の経営者だとして「弁護士に相談しなければならない」という事態に出くわしたとします。
仮にそうした状況に出くわした場合、あなたは「どの弁護士に相談すればいいかわからない…」と思うはずです。
しかし、業界最大手の四大法律事務所所属の弁護士に相談しておけば、まず間違いないと考えるはずです。
就活生が大企業や公務員を目指して安定を求めるように、企業も安定した信用できる実績のある仕事相手を求めるものなのです。
「ビジネスとして稼ぐ」弁護士の難しさ
弁護士の仕事は「法律に基づき、裁判において依頼者の弁護を行ったり、あるいは逆に相手を訴える」ことだと思われがちです。
しかし、大前提として「依頼者がいなければ仕事が成り立たない」「依頼者に頼まれても、その依頼をこなせる実力や実績がないと信頼が得られない」という事情も抱えております。
ですので、弁護士事務所に所属するだけではなく、自分の仕事を広めるための広報・営業も行わなければ仕事が得られません。
また、ビジネスモデルとしては「訴訟で勝ち取ったお金から、何割かを手数料として差し引く」ことで成り立っていますので「勝てる裁判を中心に引き受けなければならない」という前提もあります。
これは一時期「過払い金請求」のCMが大量に流されたことからも、わかりやすい事情でしょう。
決して、テレビのドラマでよくある「悪を裁く、正義の仕事ではない」のです。
弁護士も商売・ビジネスでやっている以上は「自分の仕事がどうやったら金になるか?」を考えなければいけません。
時にはキレイゴトだけでは済まされない、悪と罵られても仕方ない仕事を請け負うこともしなければなりません。
たとえば、アメリカでは金持ちの有名人が裁判に勝つためだけの仕事しかしない弁護士も存在しています。
これは客観的に見れば「弁護士としての正義感や倫理観に欠ける」と思えるかもしれませんが、それで生計が成り立つわけですし、何よりそういった「金持ちの有名人の訴訟に強い」という専門性と実績を持っているからこそ、ビジネスとして成り立つわけです。
年収100万以下の弁護士というのは、そういった「ビジネス感覚」が欠けている可能性が高いですので、仮に読者が弁護士としてのキャリアを考えているのであれば、そういった面も踏まてく必要があるでしょう。
年収の低い弁護士にならないためには?
以上のように、決して資格を取って就職しただけでは高年収になれるわけではない弁護士の仕事ですが、低年収側の弁護士にならないためにはどうすればいいのでしょうか?
また、すでに弁護士目指して進学したり、あるいは弁護士見習いとして働いている人は、いまさら将来設計を大幅に変えるのも難しいですよね。
弁護士になっても低年収という過ちを犯さないために、以下のようなことに気をつけてみてください。
弁護士専門で行くなら「業界事情」「事務所の力」は意識しておく
読者が弁護士としてのキャリアコースを歩んでいくのであれば、若いうちに「業界の内情」「事務所間の力関係」などは知っておきたいものです。
「力関係」と言っても、単純な権力争いだけでなく、以下のような要素もあります。
- 特定企業や業界と強い結びつきがあるか?
- 事務所の実績や信頼度は十分か?
- ビジネスモデルが利益になりやすい仕組みか?
- 常に新しいビジネスにも手を出しているか?
- 事務所間の情報共有や助け合いは機能しているか?
前述の「四大法律事務所」の力関係や業務範囲を知っておくことはもちろん、出来れば「ビジネスとして弁護士として上手くやっている人の集まる事務所」を選ぶ必要が出来てます。
つまり”弁護士として儲かっている事務所”を選ぶことが大事なのです。
また、法律事務所の新興勢力としては、若手が中心の「アディーレ法律事務所」も勢いがあって、利益を出しています。
ですので、必ずしも四大法律事務所が絶対いいというわけではなく、それぞれの事務所に強みや収入源が存在するはずですので、目先の年収だけでなく「業界・事務所全体でどれぐらいの利益になるのか?」を意識して仕事を選びたいものです。
ビジネス視点を持って仕事先を選ぶ
弁護士といえば「悪を裁く正義の仕事」「加害者となった弱者を守る存在」と思われがちですが、実際は「キレイゴトを言う前に、ビジネスとして利益を出さなければいけない仕事」です。
ですので、事務所の理念や人柄を参考にせず、シビアに「この弁護士事務所に所属すれば、お金になるのだろうか?」とシビアに考えましょう。
とくに弁護士の場合、法律が絡む複雑な事例と向き合って戦わないといけない仕事ですので、悪や正義がどうのこうの言っていられる仕事ではありません。
そういったシビアな経営感覚がなければ、将来独立したり、あるいは企業が絡む複雑な法に関する仕事に関われないでしょうから、若いうちに弁護士としてのビジネス感覚を養っておいても、損はないでしょう。
弁護士だけにキャリアを限定しない柔軟さも大事
弁護士を目指している、あるいはすでに弁護士・弁護士見習いとして働いている方で「年収100万クラスの仕事しか見つからない…」と悩んでいる場合は、思い切って弁護士以外の職業を選ぶことも視野に入れておくことも大事でしょう。
弁護士自体が競争倍率の激しい業界ですので、資格をとったからと言っても必ずしも弁護士になる必要はありません。
若い頃は「いい大学でたから進路を変えるのはよくない」「せっかく資格をとったんだから、その道を歩まないともったいない」と考えがちです。
しかし、実際は3年以内に大卒でも3~4割は離職しております。
それがどういうことかというと「学校で学んだことや思ってたことと、実際の仕事内容があまりに違いすぎた…」と感じる人が多いことだということです。
ですので「資格を取って弁護士に就職しても、年収100万以下は全体の2割もいる」という現実を知って将来に不安を感じている人は、柔軟に他の職業に就く選択肢も考えておくといいでしょう。
とくに卒業後3年以内の「第二新卒」や、20代の「既卒」「フリーター」の方の場合は、国内の若手人材の不足もあって未経験職への転職も容易に可能ですので、弁護士以外の道も考えておくといいですよ。
転職エージェントを活用して、キャリアを見直しておこう
弁護士が年収100万以下であることに不安を感じていたり、あるいはすでに就職してしまって年収の低さにうんざりしている方は「転職エージェント」を活用して、プロに相談して転職してしまうのが一番ですよ。
弁護士の全体の2割が年収100万以下なのは、単に市場原理のせいであって、必ずしもその人の能力の無さを意味するわけではありません。
むしろ、しっかり勉強を積んで資格を取っている方であれば、転職活動すれば引く手数多です。
具体的に需要があると思われる職種は、以下の通り。
- 企業内で法知識が要求される仕事(法務部など)
- 弁護士・司法書士相手の営業や販売(間接的に弁護士と関わる仕事)
法律のスペシャリスト自体はいくらでも需要があるので、年収100万以下の弁護士として悩んでいる方は、若いうちに将来設計を見直しておくといいでしょう。