弁護士の仕事と言えば、現代で最もストレスを抱える仕事のひとつと言えるでしょう。
それがなぜかと言えば、弁護士の仕事は現代におけるケンカの仲介人みたいなものだからです。
人気TV番組「行列のできる法律相談所」に出演されていた弁護士の北村晴夫氏も、以下のようにインタビューに答えております。
まあ、弁護士というのは“ストレス請負業”ですから(笑)。事件当事者の方々が受けている紛争のストレスを、我々が半分以上背負うわけです。できるだけいい形で事件を解決しなければいけないというプレッシャーもあるし、こういう証拠があるはずなのにちっとも出てこないとか、ストレスの種が色々あるんですよ。
出典:弁護士というのは、“ストレス請負業”ですから|vol.11(前編)|北村晴男|賢者の仕事、賢者の健康|おれカラ|第一三共ヘルスケア
仕事にはストレスがつき物ですが、弁護士ほどつらい仕事もありません。
今回はその理由をご紹介していきます。
弁護士の仕事の辛い部分やきついと感じる瞬間とは?
弁護士の仕事は光り輝く肩書きや高い資格を持つとされる一方で、実際には様々な辛さやきつさが存在します。以下はその代表的な例をご紹介していきます。
「弁護士」という肩書きや資格に対する過剰な期待に耐えられない
一般の人々は弁護士に対して高い専門性と解決力を期待しますが、現実の仕事は厳しい現場や困難な問題に直面することもあり、それに対応するプレッシャーを感じることがあります。
理想と現実のギャップや汚れ仕事の罪悪感に苛まれる
弁護士の仕事を一言で現すなら「法律を盾に戦う戦士」です。
これはたとえではありません。
事実として、弁護士に仕事を依頼する人は「自分の代わりに、裁判所で戦ってくれる人」として、弁護士に仕事を頼むのです。
プロ意識の高い弁護士であれば、これは絶対に否定できない事実でしょう。
逆に言えば「弁護士は法律に則って弁護するだけの仕事」「TVドラマみたいに、弱い者の味方をする正義の仕事」などのイメージを持っていると、痛い目を見ます。
これは弁護士関わらず、文系職の中でも営業や販売なども一緒で「仕事で取引相手と関わる仕事」は「大人のケンカ」ぐらいに割り切れるメンタルの強さがないと、長く勤まりません。
とくに弁護士の場合「法律の絡む問題=大きな責任やお金の伴う問題」を扱うわけですので、並々ならぬ精神力が必要です。
こういった弁護士の実態を知らないまま働くことになった「勉強が出来るだけの人」は、弁護士の厳しい現実に耐えられず、早期に離職することになります。
それが良いか悪いかで言えば「資格を取る前に現実を知らなすぎた」「自分に向いていなかった」だけです。
どの職種にしても、一定数ついていけずに辞める人はいるので、とくにストレスの大きい弁護士の場合、別に辞める人が出てきても不思議ではありません。
法務以外の事務仕事も押しつけられる
弁護士業務には書類作成や調査などの事務作業も含まれます。しかし、その量や重要性に応じて多くの時間を費やさなければならないことがあり、本来の法的業務に集中することが難しくなることがあります。
長時間労働とプレッシャーによる心身の負担
弁護士と言えば、多忙でプライベートの確保しにくい仕事です。
それは以下のような理由があるからです。
- 社会的責任の伴う仕事で法律を扱う手前、手抜きが出来ない
- 弁護士になるために難関資格を取得する必要があり、人材の数が限られている→そのため、弁護士案件となる問題に対しての弁護士数が欠けている
- ただし「利益にならない案件」を請け負うと、時間的なコストが無駄になる
政治家があいさつ回りや有識者会議の出席でプライベートな時間がないように、法律を扱う弁護士も同じぐらいに多忙です。
また、弁護士は「裁判で勝つための戦略を考えて実行する難しい仕事」ですので、プライベートでも請け負った案件について、ずっと考えておく必要があります。
これは「仕事とプライベートを完全に切り分けたい人」からすれば、ストレスの一因となるとも言えるでしょう。
医者などもそうですが、学歴や専門的な知識・技術を要求される仕事は、本人の意志や願望関係なく「仕事に追われる立場」になってしまう宿命を抱えているのです。
ビジネスとしての競争が激しく、年収差が大きい
弁護士と言えば「儲かる仕事」というイメージが強いですが、実際は年収100万以下のワーキングプアが2割ほど存在する、上下差の激しい仕事です。
上記のような弁護士がつらい理由も、常に競争意識を持ってビジネスとして仕事に取り組まなければ、途端に食えなくなる仕事だから…という事情があります。
決して、資格をとって就職して、あとは楽を出来る仕事ではないのです。
弁護士に向いていない人や辞めて良かったと思える人の特徴
弁護士の仕事には独特の要素や責任があり、それに対応することができない人にとっては向いていない場合もあります。以下はその一部です。
紛争解決や法的倫理に対する興味の欠如や絶望感
弁護士の仕事は紛争解決や法的倫理を取り扱うことが主な仕事です。しかし、これに対する興味がない人や絶望感を抱く人は、長期間にわたってこの職業を続けることが難しいでしょう。
社会的な責任や使命感に耐えられない
弁護士は社会的な責任を負い、正義や公正な判断を求められます。また、クライアントや依頼者の利益を代表する使命感も求められます。これらの責任や使命感に耐えられない人は、この職業に向いていないと言えるでしょう。
弁護士がつらい理由は、社会的責任があまりに大きすぎる仕事で、抱えるストレスが段違いだからでしょう。
利益もために手段を選ばずに勝訴しなければならないこともありますし、場合によっては犯罪者の弁護をしないといけないこともあります。
時には、自分が望まない手段を用いたり、あからさまに社会悪となる選択をとらない事態もあります。
そこを割り切れない人は、弁護士として仕事を続けていくのは難しいと言えるでしょう。
顧客対応の難しさに折り合いがつけられない
弁護士はクライアントや依頼者と密接に関わり、彼らの要望やニーズに応える必要があります。しかし、顧客対応の難しさやクライアントとの意見の食い違いに折り合いがつけられない人は、この職業に向いていないかもしれません。
弁護士がつらいと感じてしまう原因は「法知識のない愚かな依頼者の愚痴や悩みに、いちいち付き合わないといけない」ことでしょう。
それだけならともかく、時に「自分の無知さを棚に上げて、理不尽な要求を平然と押しつけてくる依頼者」も存在します。
これは非常に、強いストレスの原因となります。
どの職業にしても、顧客や取引先からのクレームは避けては通れない問題ではあります。
ですが、弁護士の場合は「法律問題」「社会的責任」「利益に関するシビアな問題」が絡むので、抱えるストレスは他の職業とは比になりません。
とくに若いうちは、自分のかしこさや専門的な能力に対してのプライドもあるでしょうから、無知な利用者に対して、イライラしてストレスを抱えることはあると思います。
弁護士となる方は「頭のいい人」が多いでしょうから、無知な人と関わることに強いストレスを感じることもあるはずでしょう。
これに関しては「慣れ」「精神的に成熟すれば気にならなくなる」悩みではありますが、他のストレスと合わさると、つらく感じます。
…が、実際問題、社会人の本音としては「付き合う相手は選ぶべき」「自分の成長のため、レベルの高い人間と関わろう」という打算を秘めている人がほとんどですので、どうしても耐えられないのであれば、転職して仕事で関わる人間を選ぶのも手でしょう。
弁護士の将来性は?無理に働き続けた末路はどうなる?
弁護士の将来性にはいくつかの懸念要素が存在します。以下はその一部です。
約20%の弁護士がワーキングプアという人材過剰供給状態の懸念
弁護士の数が増え、市場における競争が激化しているため、約20%の弁護士がワーキングプアの状態にあると言われています。人材の過剰供給が続く限り、将来性には不安が残ります。
「サービス」として見た場合の低価格競争の流れによる低収入化リスク
弁護士業界でも「サービス」としての価格競争が進行しており、低価格での依頼を受けることが増えています。この傾向が続くと、収入が低下する可能性があります。
企業内法務としての過剰な負担や不当評価のリスク
企業内法務の職務は企業の法的な問題に関与することが求められますが、過剰な負担や不当な評価を受けることもあります。このような状況では将来性に不安が生じます。
独立開業時の競合差別化の難しさや営業行為の制限
弁護士が独立開業する際、競合他社との差別化が重要となりますが、その難しさがあります。また、弁護士には営業行為に対する制限もあり、新規顧客の獲得が難しくなる場合もあります。
弁護士からの転職先の例やキャリアパスは?
弁護士としてのキャリアを活かして、以下のような転職先やキャリアパスがあります。
法務部門や企業の法務担当者へ転職
企業内の法務部門や法務担当者として、組織内での法的な業務を担当することができます。企業の内部で法的アドバイスやリーガルサポートを提供する役割です。
-コンサルタントとして法律を合わせた複合的な業務を行う
法律を活かしながら、ビジネスや経営に関するコンサルティング業務を行うことができます。法律知識を生かしてクライアントに対して総合的なアドバイスを提供することが求められます。
大手法律事務所への転職
大手法律事務所に転職することで、より大規模で複雑な案件に携わる機会があります。法律の専門性を高めるとともに、幅広いクライアントに対して法的サービスを提供することができます。
マッチング系サービス活用での顧客獲得(独立している場合)
マッチングサービスやオンラインプラットフォームを活用し、独立して法的サービスを提供することができます。自身の専門性を生かして個別のクライアントとマッチングし、法的な支援を行います。
法律研究や教育者としての道を模索する
法律の研究や教育分野に進むこともあります。大学や研究機関での研究活動や、法学校での教育者としてのキャリアを築くことができます。
弁護士がつらいなら早期の転職活動を
以上のように、弁護士は現代の中でも非常につらくてストレスの多い仕事だと言えます。
最近では「弁護士なのに、年収100万以下…」という事態も珍しくなっているので、働き先を間違うと割に合わない仕事だとも言えるんです。
仮に今回紹介したようなことに思い当たりがある方は、弁護士にこだわらず、視野を広げて柔軟に転職という選択肢を考えておいた方がいいでしょう。
もちろん、読者が弁護士として働いていて、
「つらいけど、頑張ってみよう…」
「忙しくても年収が高いので続けたい」
「キツイ分、やりがいを感じている」
…と思っているのであれば、弁護士を続けた方がいいです。
資格取得が難しい仕事の分、しっかり働き続けておけば得られるものも大きいです。
しかし、少しでも「弁護士以外の仕事に就くことも考えている」「弁護士として長く続けていく自信がない…」と思うのであれば、キャリアの軌道修正が利きやすい若いうちに転職活動しておいた方がいいでしょう。
というのも、20代のうちは未経験職への転職も容易で、選択肢が広いからです。
とくに卒業後3年以内の「第二新卒」や、就職が決まらずに卒業した「既卒」は、専門の就職支援サービスも多数登場しているぐらい、人材市場でも重宝されている存在です。
逆に、30代を節目に未経験職への間口は狭くなるので、行動するなら早いに越したことはありません。
「弁護士を辞めて後悔するか?」
「つらい弁護士の仕事を続けて後悔するか?」
どちらを選ぶかは読者次第ですが、出来れば両方の選択肢をしっかりと考えて検討した上で、先の見えない現代社会を後悔なく生きたいものです。
転職サービスを利用してプロのサポートを受ける
以上のように、「弁護士つらい…」という悩みに対し、一概に「これをすべき」という正解はなく、それぞれの状況に合わせて最適な行動を取捨選択する必要があります。つまり、多くのことを考えて計画的に行動する必要があるのです。
それを在職中の考える余裕がないうちに行うのは、かなりハードだと言えるです。
そこでオススメしたいのが、転職サービスでプロに相談してサポートを得るという方法です。
たとえば、以下のようなサポートに期待できます。
- 弁護士資格・法知識の活かせる仕事はないか?
- 弁護士のつらい部分・ストレスを感じる部分を改善できる職はないか?
- 独立前提の弁護士ではなく、正社員として長く働ける道はないか?