デザイナーと言えば「やり甲斐搾取」の代名詞とも言え、ブラックな職場も多い仕事として有名です。
私はその事実を知って、在学中にデザイナーの道を諦めましたが、デザイナーになった友人では体を壊して辞めてしまった人も結構多いです。
ただ、最近ではWEBデザイナーとして在宅ワークでホワイトな環境で働いているデザイナーも増えており、ブラックとホワイトの落差が激しい職種だとも言えます。
なぜ、そのような格差が生まれてしまうのでしょうか?
それには複雑な事情が絡んでおります。
しかし、社会や経営に関しての知識をしっかり持って、自分に合った職場を選ぶことが出来れば、決してブラックな職場でデザイナーを続ける必要はないとわかってきます。
そこでこの記事では、ブラックな職場でデザイナーとして働いて悩んでいる方や、あるいはデザイナー志望でブラックな環境を避けたい方に向けて「デザイナーがブラックな職場に就いてしまう原因」をご紹介していきます。
デザイナーがブラックになってしまう原因とは?
「デザイナー=ブラック」なのは大手広告代理店の影響
デザイナーがブラックになってしまう理由としては、デザイナーのトップが関わる仕事の代表格となる大手広告代理店がブラックな働き方をしているからでしょう。
国内のトップクラスのデザイン事務所は、大手広告代理店から受注して仕事を引き受けております。
そのため納期や修正などは、業界構造ピラミッドの一番上部に属する広告代理店に引っ張られてしまう形になるわけです。
すると、主なクライアントが大手広告代理店のデザイン会社は、必然的にブラックな働き方になってしまいます。
「デザイナーは仕事が好きじゃないと続かない」と言われているのも、そういったブラックな体育会系の業界で生き残れる人ばかりだからです。
クリエイティブ業なので「成果」の目安が不透明
デザイナーに関わらず、クリエイティブ業全般に言えますが「成果」の目安が、非常に不透明で曖昧なものです。
どういうことか言うと、製造業などの厳密な規定のある職種と比べて、デザインは「完成ライン」が存在しないので、クライアントの希望するものと一致しなければ、何度も理不尽な修正を依頼され、時間を拘束されることになるのです。
このあたり、ちゃんと交渉力のある営業がいればしっかり日程調整してくれたり、事前のプレゼン・会議でクライアントの意向を聞いてくれたりするのですが、そうでなければクライアントの言いなりになってしまうことになるのです。
たとえば、クライアントが発注してきた段階で安易に仕事を引き受け、その後会議や打ち合わせもロクにせずに納品まで行うとしましょう。
そこでクライアントに「思ってたのと全然違う、これじゃお金は払えないな」と言われれば、最初から仕事をやり直しするハメになってしまいます。
…冗談みたいに思えるでしょうが、割とデザイナーに関わらず、こういう食い違いにより大幅に時間を無駄にしてしまうことは社会ではよくあるのです。
これを見極めるためには、以下の点に注意したいです。
- 会社が安請け合いして理不尽なクライアントの仕事を引き受けていないか?
- 営業がクライアントと現場のデザイナーの要望をしっかり調整しているか?
- クライアントと定期的にコミュニケーションがとれ、進捗報告ができているか?
こだわりの強い人が多いのでプロジェクトが途中で白紙になることも…
デザインの仕事とは、アイデア勝負です。
プロ意識が高くてこだわりの強い人間がプロジェクトに関わると、進行していた企画が途中で白紙に戻り、一からやり直し…なんてこともよくあります。
それ自体は意識が高く、クライアントにも満足してもらえるので、プロとしてはかっこいいかもしれません。
ですが、それで進めていた企画がゼロからやり直しとなると、関わっていた人間はたまったものではありません。
デザイナーなどのクリエイティブ業は、このあたりの時間の調整が非常に難しい仕事なので、ブラックになりやすいのです。
「デザイン」の業務範疇が曖昧なため
「デザイン」と一言で言いましても、今では以下のように多くの業務範囲がデザインに含まれます。
- イラスト作成
- レイアウトデザイン
- 文字校正・校閲
- 写真撮影
- プログラミング(WEBの場合)
これを少人数で行おうとなると、クオリティは妥協せざるを得ません。
デザイン経験のある人や、しっかり現場とコミュニケーションの取れている営業・経営者・クライアントが仕事相手であれば、そういった事情は理解してくれます。
しかし、仕事を任せる立場の人が「デザイン」と聞いて、上記のような業務範囲を分けて考えられない場合、下手をすれば人ですべてを任される…なんてことも十分あり得ます。
とくに、中小・零細クラスの企業ですと、個人個人の仕事の範囲が増えるため、現実的にすべてのデザイン業務を1人に押しつけられることもあります。
また、中小企業ですと「デザインに関する仕事はなんでも引き受けている」というところも多く、自社がしっかりと行える仕事の範囲を理解できていなこともあります。
これについては、以下の点をしっかり見極めましょう。
- 上司や営業、クライアントなどが「デザイン」という仕事に対して、しっかり理解のある相手か?
- 自社が出来もしない仕事を無理に引き受けていないか?
- 自分も「募集・採用段階で、その会社での”デザイン”という仕事が具体的にどのようなものか?」と把握した上で入社しているか?
- 社内での自分の仕事量が明らかにキャパシティを越えていないか?
このあたりを見極める能力がない人が集っている会社ですと、ブラック企業化待ったなしです。
収入格差の激しい職種のため
デザイナーと言うと、完全実力・実績主義なので、収入格差の激しい仕事です。
大手広告代理店所属のアートディレクタークラスですと、年収1000万以上になる場合もあるでしょう。
あるいはフリーランスで売り込み・営業・交渉も出来るデザイナーであれば、年収1000万クラスになる人もいます。
ですが、そうでない下請け企業の無名のデザイナーであれば、月の手取り15万円以下という実態なのが、デザイナー業界の実情なのです。
最近ではクラウドソーシングの登場により、さらにデザイナーの買い叩きが激しくなっており、デザインの仕事自体の価値が下がってきております。
実際、イラストレーター・フォトショップを使って軽いデザイン制作をするぐらいであれば、ちょっと勉強すれば誰でも出来てしまう点で、デザインの仕事の価値はそこまで大きくないのです。
ブラックなデザイン会社から転職する場合は?
以上のように、デザイナーは客観的に見ても非常にブラックな働き方になりやすい職種だと言えます。
フリーランスのデザイナーが増えるのも、自分で仕事のスケジュール管理やクライアントとの関係を調整した方が、自分に合った働き方が出来るためです。
その能力のない人は、残念ながらブラックなデザイン会社に就いてしまったら、そこで働き続けるしかありません。
ただし、しっかりと転職先を選べば、デザイナーでもホワイトな企業を見つけ出せる可能性はあります。
もしブラックな環境で働いていて転職を考えているデザイナーの方がいましたら、以下のような点を意識して、転職を考えてみるといいでしょう。
自分がデザイナーに向いているか、しっかりと考え直す
あらかじめ考えておきたいのは「本当に自分はデザイナーに向いているのか?」という点です。
デザイナー自体の価値は下がっており、以下のようなレベルの人材はデザイナー一本でやっていくのは厳しいです。
- Adobeのソフトが使える程度
- 転職先にしっかりアピールできるほどの作品量・ポートフォリオがない
- イラスト・写真撮影など、総合的なデザイン能力がない
- クライアントの要望に幅広く対応できる能力
- WEB系のスキルがない(WEBデザイナーの需要が圧倒的に高いため、WEBスキルがあった方が有利)
デザイナーにこだわっている方で多いのが「美大を出たから…」「専門学校を出たから…」という理由でデザイナー志望の道しか考えていない人ですが、自分が実力不足だと関しているのであれば、素直に他の職種・業種を目指すのもありです。
別に今までの学歴・経歴に沿った転職先を選ぶ必要はないので、柔軟に考えるといいでしょう。
クリエイター志望にこだわない方がいい理由について
とくに20代で、なおかつ卒業後3年以内であれば「第二新卒・既卒」に含まれるため、新卒同様未経験職にも転職しやすいです。
第二新卒・既卒について詳しくはこちら
ブラックな会社が増えやすいデザイナー一本で考えるよりは、給料・待遇面では大幅に改善できる可能性がある未経験職への道も考えておいたほうが、楽になれる可能性は大きいです。
デザイナーとして転職する場合はしっかり転職先を選ぼう
デザイナーでブラック企業に入社してしまう方は、会社の経営状況や取引先との関係などを調べて予測したり、あるいは業界分析・企業研究のやり方を知らないのかもしれません。
そのため「なんとなく…」「デザイナーを募集しているから…」という動機で入社してしまい、想像と違う会社に入社して待って後悔することになるのです。
ただ、別にそれ自体は社会経験の浅い20代の方なら、仕方のないことです。
ですので、デザイナーとして仕事を続けていく自信がある方は、次は間違いない転職先を見つけ出すために、今の職場に就いてしまった反省を活かしましょう。
WEB系スキルを身に着けておくと選択肢が広がる
20代のデザイナーの方で転職を考えるのであれば、WEB系スキルの基礎を身に着けておけば、グッと選択肢が広がりますよ。
その理由は単純で、WEBデザイナーの募集が増えているからです。
WEB系の通信講座はインターネット経由でも受けられるものが多いからです。
最短1ヶ月で「WEBデザイン」「UI/UXデザイン」という、転職ですぐに役に立つWEBスキルの基礎が身につきますので、利用を検討しておくといいでしょう。
講座だけでなく受講後の転職サポートまで対応しているので、辞めた後に使ってみるのもいいかもしれません。
また、ハローワーク(公共職業安定所)では職業訓練校にて、WEBデザインの受講を受け付けている場合もあるので、失業保険受け取りの申請をする際に確認しておくのもありでしょう。
ブラックなデザイン会社に疲れているなら早めの転職を
以上、ブラックなデザイン会社で働いている方に、ブラックになってしまう理由と転職方法をお伝えしてまいりました。
大手広告代理店の絡むクリエイティブ業は、異常なノリで働いていることが当たり前になっています。
そのパワーが日本のトレンドやクリエイティブ業を盛り上げており、一見華やかに見えるデザイナーの仕事ですが、その裏では多くのデザイナーがブラックな環境に耐えずに辞めてドロップアウトしていきます。
ですので、ブラックな働き方をキツイと感じている方は、うつ病になったり体を壊してしまう前に、転職活動を始めておくといいでしょう。