転職エージェントを利用する際に、知っておきたいことが「人材サービス会社側のビジネスモデル」です。
とくに転職エージェントは「分業型」か「両面型」で、提案力や運営方針、あるいは求人の質や傾向まで変わってくるので、知っておくに越したことはありません。
分業型→求人情報は、営業が聞き込みで得た情報が中心。そのため、エージェントは社内の誰かが集めた求人情報を、利用者に合わせて紹介するのが主な役割。効率重視なため「質より量」の傾向。
両面型→求人情報は、担当者が実際に聞き込みして集めたものが中心。場合によっては担当者自身が転職先に営業・交渉をかけてくれることもあり、高い交渉力や情報の”質”に期待できる。
理想で言えば「両面型」が一番に思えますが、エージェントに高い能力が求められる上、営業・交渉に関する時間的コストもかかるという問題もあり、国内の転職エージェントは多くが「分業型」が採用されています。
ですので、現実的に転職活動を考えた場合、まずは「分業型」から使うことを強くオススメします。面談の呼ばれやすさや求人傾向の把握、面談や職務経歴書の指導などを受けられるという点で、分業型のメリットはフルに活用しておくべきです。
一方で、国内の分業型エージェントから納得できる求人情報を引き出せなかったり、自身のキャリアプランが定まっている方であれば「両面型」を早いうちに併用しておくことをオススメします。
どちらもメリット・デメリットを把握しておけば、非常に転職活動を有効に進められるパートナーになり得ますので、この記事で両者の特徴を把握しておきましょう。
「分業型」と「両面型」の違いとは?
まずは、改めて転職エージェントの「分業型」と「両面型」の違いをおさらいしていきましょう。
「分業型と両面型の違い」については、世界No.1の人材サービス会社である「アデコ」のLHH転職エージェントにてわかりやすく紹介されています。
この画像からわかるとおり、分業型は面談の担当者と企業求人情報を集める担当者が別々に分かれているわけです。
これは転職エージェント運営会社からすれば効率が良い反面、利用者からすれば「求人情報の精度が落ちる」という不安が残ることになります。
良くも悪くも、日本の組織の役所的・事務的な運営体制が「分業型」の特徴だと言えます。
一方で、両面型の場合は面談担当者が直接企業側に営業しているため「求人情報の精度が上がる」というメリットがあります。
その反面で「紹介できる求人量が減る」「両面型=個人プレイなので担当者との相性が絡む」「担当者の能力に転職活動が左右されやすい」など、利用者・担当者個人間のやりとりや相性、能力に依存しやすくなる性質があります。
「分業型」のメリット・デメリット
まずは、国内の大手転職エージェントのほとんどが取り入れている「分業型」のメリット・デメリットを抑えていきましょう。
「分業型」エージェントのメリット
- 企業側からすれば効率が良いので紹介できる求人数を増やしやすい
- キャリアアドバイザーの実力が足りなくても、企業側で集めた情報量でカバーできる
- 業務範囲が別れているため、多くの求職者と面談しやすい(面談に呼ばれやすい)
- 書類作成の指導や面談の指導など、ノウハウについては期待できるため、初心者は一度利用しておく価値あり
形式としては「転職エージェント(転職交渉)」というよりは「転職サポート」という側面が強く、実質的には「転職会社が集めた求人情報を、利用者に合わせて紹介。必要に応じて職務経歴書作成・面談サポート、および日程調整」という役割が強めです。
「分業型」のデメリットを洗い出してみると、以下の通り。
「分業型」エージェントのデメリット
- 面談担当と求人情報作成者が別なので、紹介先企業の詳しい情報はわかりにくい
- キャリアアドバイザーの経験不足が目立つ場合もある(中には新卒採用、転職未経験者も)
- 面談に呼ばれやすい反面、相性や専門性、求人の質は軽視されがち
- 書類作成・面談の指導が良くも悪くも「型通り」で、柔軟性には欠ける
率直に言って「分業型」の場合、担当者の質は全体的に落ちると言ってもいいぐらいです。
また、求人も「量より質」の傾向ですので、精査した求人情報が欲しい場合には、かえって情報過多になるデメリットもあります。
ただし、マッチング精度と質が落ちることで、意外な恩恵があることは忘れてはいけません。
それは「手続きが事務的になるので未経験者でも転職が成功しやすくなる」「書類の情報上でのやりとりがメインになるため、選考基準が緩い会社にラッキー入社できるチャンスが生まれる」というメリットです。
つまり、企業側も利用者側も判定基準が甘くなることにより、思わぬ転職先から内定をもらえるチャンスも広がるわけですね。
また、求人情報の選別が機械的になることで、経歴や実績、あるいは書類情報だけで優良求人を紹介してもらえるチャンスも広がります。
ですので、ぶっちゃけて言うと本人の実力関係なしに、自己アピールや書類情報、あとはエージェント側の入れ知恵で転職チャンスが広がる可能性も高くなるので、とくに若手なら「分業型」の方がかえっていい転職先と出会えるチャンスが広がりやすいと言えるでしょう。
さらに加えておくと、担当者に若手が多いので価値観が近しかったり、人柄重視・世間話から信頼関係を築くことも可能なところは、分業型の意外なメリットでしょう。
少なからず、ビジネスライクな両面型よりは、心理面で親近感を覚える相手と出会いやすいのも、分業型の意外なメリットです。
転職エージェント自体が「二人三脚で転職活動」という性質を持ちますので、必ずしも相手の能力が高いことだけが”いいエージェントの条件”でないことは、知っておくといいでしょう。
関連:転職エージェントとの付き合い方|有利な求人を引き出すために知っておきたい根回しの仕方とは?
分業型エージェントの”裏のメリット”
- 求人紹介が事務的なので「未経験者」でもラッキーチャンスが広がりやすい
- 「書類情報」ベースで求人情報を選出するため、条件さえ満たせば意外な転職先と出会える
- 「マッチング精度が低い=紹介先の判定基準も緩い」とも言えるので、意外な転職先から内定をもらえるチャンスでもある
- 本人の実力不足も、エージェントを通すことである程度カバーしやすい
- 担当者に若手が多いため、人間性や人柄面で信頼できる相手と出会える可能性も上がる
総評で言えば「キャリアや経歴がまだ定まっていない20代の人なら、選り好みせずに多くの分業型エージェントを使ってみるべき」だと言えるでしょう。。
すべて無料で使える上に、業界経験歴のあるエージェントと個人的なコネを作るチャンスでもあるので、使い方次第では今後のキャリアプランを大きく変えるきっかけにもなります。
「両面型」のメリット・デメリット
次に「両面型」のメリット・デメリットを見ていきましょう。
両面型は全体的に「ミドルクラス・ハイクラス(30代以上向け)」であったり、あるいは「量より質」という方針の外資系・ベンチャー企業に多い傾向です。
両面型エージェントのメリット
- 求人量は少なめだが”質”は高め
- 利用者の経歴やニーズに合わせてマッチング精度の高い求人を提案してもらえる
- 担当者が直接紹介先企業に営業・取引しているので、情報の精度も高め
- 個人プレイの傾向なので、担当者のレベルが高めの傾向
純粋に「転職エージェント(転職仲介人)」としては、両面型の方が実力も精度も高くなりやすいため、より転職先選びにこだわりたい方であれば両面型を選ぶべきでしょう。
ただし、質が高い分以下のようなデメリットも発生する点には注意です。
両面型エージェントのデメリット
- 求人量が少なく、運営会社によって傾向や特色がある
- 経歴やニーズが合わなければ、面談に呼ばれない可能性が高くなる
- 担当者が少数精鋭式なので、面談の日程が組みにくいリスクあり
- 担当者の個人プレイ幅が広いので、相手が暴走する可能性あり
- 個人間でのやりとりが中心になるので、最低限のビジネス対応力が必要
- 事務的ではないエージェントも多いので、柔軟性も必要
両面型エージェントは相性さえ合えばかなり心強い味方になる反面、求人傾向が合わなければ利害が一致せず、面談に呼ばれない可能性も高くなります。
また、個人間でのビジネスメールのやりとりも増えるため、日本式の「エントリー型・応募式」の効率重視の転職活動に慣れている方であれば、戸惑うこともあります。
その分、エージェント側と利害が一致すれば心強い味方となり、提案される求人の質もかなり高くなるので、自分に合った両面型エージェントを数人ほど見つけておくといいでしょう。
両面型エージェントの性質を把握しておきたい方は、まずは経歴不問で登録できる「LHH転職エージェント」がオススメです。
世界No.1の人材会社「アデコ」が運営しており、非常に合理的な転職ノウハウを体感することができます。
面談に呼ばれずとも、精度の高い求人メールが届きますので、両面型転職エージェントの性質を知っておくためにも利用しておく価値ありです。
日本式の読む気もしないメールマガジンに慣れていると、あまりに質の高い求人メールに驚くレベルです。
国内主要エージェントの「分業型・両面型」の区分は?
最後に、国内の主要な転職エージェントについて「分業型・両面型のどちらか?」の区分について紹介しておきましょう。
国内の転職エージェントの情報を分類してみますと、おおよそ以下の通りに分かれることがわかってきます。
主要エージェントの分業型・両面型の区分の分類
- 完全分業型の転職エージェント(公表している会社とそうでない会社がある)
- 両面型・分業型を使い分けている転職エージェント
- 完全に両面型の転職エージェント
そもそも、組織人であれば完全な両面型はありえないと言ってもいいので(社内で引き継ぎ、情報共有するなどのパターンもあり得る)、あくまで転職エージェントの運営方針・目安として考えておくといいでしょう。
また、分業型のエージェントにおいても、人材価値の高い方であれば両面型の交渉力のあるエージェントがつく可能性も考えられるので、どの道多くのエージェントを利用しておくのが最善の手段だと言えるでしょう。
大手人材サービスは「分業型」がほとんど
日本国内の大手人材サービスに関しては、ほとんどが「分業型」に分類されます。
もともと、日本の人材会社は古くから「求人広告型」の情報・広告媒体主流のビジネスモデルであったこともあり、エージェント制も「求人情報が先、アドバイザーが後」という経緯があります。
ですので、あくまで「自分に合った求人情報を効率よく紹介してもらう」という意識で利用しておけば、過度にエージェントに期待せず済むでしょう。
無料で利用できる手前「力量のあるエージェントに出会えたらラッキー」ぐらいの気持ちがちょうどいいでしょう。
また、エージェント側の事情さえ抑えておけば、面談にも呼ばれやすいのも分業型の魅力ですので、使えるモノはなんでも使っておくべきです。
関連:転職エージェントから面談の案内や返信が来ない原因。担当者から見捨てられないためにしておきたいこととは?
doda(パーソル)
国内第2位のパーソルの手がける「doda」は明確に「分業制」と公表しています。
求人案内も「質より量」を徹底しており、かなりの量のメールが届くところがdodaの特徴であり、欠点でもあります。
エージェント制というよりは「求人メールも、エージェント制も、転職情報の発信も行っている」という、”広く浅く”のスタンスですので、あらかじめ性質を知っておくと勘違いせずに使いこなせるでしょう。
また「質より量」式の転職エージェントとして、最短3ヶ月での転職サポートも行っているため、短期で集中してすぐに転職したい場合は、優先的に面談対応してもらえる可能性が上がる点はメリットです。
逆に慎重に転職を検討したい場合は、あまりに情報量が多かったり、スカウトがしつこいと感じやすいため、エージェント制を使う必要性は少ないです。
ただし、dodaもリクナビNEXT同様、他社提携エージェントからスカウトされる可能性もある点は、知っておくといいでしょう。
職務経歴書や登録情報が充実しておけば、他社エージェントからのスカウトも届くので、どの道登録しておくだけチャンスが生まれそうです。
マイナビエージェント
「マイナビエージェント」もリクルート同様、社内の運営体制についてはあまり公開していませんが、求人広告型のビジネスモデルの人材サービスですので「分業型」と見ていいでしょう。
公式サイト内の記述を見ても、終始「求人の紹介」と書いており、キャリアアドバイザーの役割はあくまで「営業が集めた求人の紹介」と考えておくべきでしょう。
マイナビ自体、求人広告型の情報媒体メインの会社ですので、リクルートやdodaと性質は似たり寄ったりです。
ただし、マイナビ自体が若手向けブランドで、20代・30代向けと対象もハッキリしており、とくにIT・WEB系企業の求人は強いです。
また、担当者も業界経験者をヘッドハンティングしてきており、若手の熱量ある人物が集まっているので、リクルートエージェント・dodaとは違った運営方針がある点は知っておくべきでしょう。
その他の国内エージェント
その他の国内転職エージェントも、中規模以上の会社はほぼ「分業型」が主流です。
その他の主要な国内転職エージェント
メイテックネクスト…製造業人材派遣会社「メイテック」の子会社が手がける転職エージェント。こちらも運営実績40年以上。アドバイザーは専門職経験者なので、専門性に関しては間違いない。親会社が人材派遣会社なので、求人精度はかなり高い。
日本の企業の場合、大規模な会社はほぼすべて「分業型」ないし「分業型寄り」ですので、はじめからその気で利用しておきましょう。
また「人材サービス会社は情報が先」なのに対し「人材派遣会社は現場ニーズが先」という事情があるので、後者の方が「分業型」でも現場の声や紹介先とのコネに強い傾向にあります。
国内の分業型エージェントを使うにしても、精度や質にこだわるのであれば人材派遣会社の手がけるエージェント制を使っておけば、より良い求人に出会えるでしょう。
おまけ:ハローワーク
ちなみに「ハローワーク」も、紛れもなく「分業型」ですので、いかに日本の組織と人材採用が分業制の事務的かつ情報主義かはわかりやすいことでしょう。
ただし、ハローワークは求人の実態調査の面で転職エージェントよりも質が低い上に、求人情報も自己申告制でわかりにくい・信じられない条件の求人もあるなど、かなり企業側のモラルやリテラシーも低めになりがちな傾向があります。
転職エージェントの面談に参加できるような人であれば、ハローワークを使うメリットはないので、頭の片隅に入れておく程度でいいでしょう。
「両面型」は外資系企業やベンチャー企業が多め
「両面型」の転職エージェントは「外資系企業運営」「ベンチャー企業運営」など、個人プレイで融通の利きやすい社風の企業が多めの傾向です。
外資系企業運営と聞くとレベルが高く感じますが、英語力なしでもOKな求人も紹介してくれるなど日本流に合わせているので、気にせずに使っておくといいでしょう。中の担当者も日本人ばかりなので大丈夫です。
面談についても「ビジネスメールでやりとりした後で」「電話・Skype面談あり」などかなり融通が利くので、登録しておくだけ可能性が生まれます。
当然、両面型であってもすべて無料ですので、気になる方は登録しておきましょう。
LHH転職エージェント(アデコ)
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ビズリーチ(ヘッドハンター紹介サイト)
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まとめ:どちらも利用しておくのがベスト
以上「分業型と両面型」というテーマで転職エージェントの運営体制についてご紹介してきましたが、参考になりましたでしょうか。
国内企業および日本人の体質的に「分業型」が強いことがおわかりになられたことかと思います。
ですので、まずは素直に「国内大手エージェント=分業型」を利用しておくのが間違いないでしょう。
とくに経歴がそこまで成熟していない20代のうちは、下手に両面型で質にこだわるよりは、大手国内エージェントで「数撃ちゃ当たる」で取り組んだほうが、意外な優良案件に出会える可能性もある点は忘れてはいけません。
逆に経歴や経験が成熟して転職先が限られてくる30代以降、あるいはやりたいことやキャリアプランが明確で「質」にこだわりたい方は、両面型をいくつか併用しておくことをオススメします。
使い方としては、いくつかの両面型エージェントから質の高い求人情報を送ってもらい、冷静に検討するのがスマートでしょう。定期的に面談に参加しておくことで、担当者との信頼関係を深めるなど、決して焦らないこともポイントです。
両面型の転職エージェントの場合ですと、個人間の信頼関係構築も大事になってくるので、長期的視野での付き合いも考えておくと、思わぬタイミングで優良求人に出会えるチャンスも生まれますよ。