中間管理職と言えば、日本のビジネスパーソンでもっともやり甲斐の出てくる時期だと言えます。
関連:中間管理職に悩みはつきもの?板挟みが辛すぎる?管理職のストレスでうつ病になりそうな時に知っておくべきこととは?
しかし、それはあくまで”幻想”。
実際は部下・上司・取引先に挟まれ、ひどい場合には全方面から責任を押しつけられる難しい立場になります。
おまけに「プレイングマネージャー」として実務に関わる場合ですと、自分の仕事までこなさなければならない…。
「辞めたい…」「転職したい…」と思っても、責任のある立場ですから部下のように気軽に辞めることも許されない。
…というのは、あくまで会社側の言い分であり、世間一般の常識です。
あえて言いましょう。
中間管理職こそ、転職最高のピークの時期だと言っても過言ではありません。
ただし、未経験でも転職しやすい20代のうちと違い、かなり計画的かつ慎重に転職先を選ぶ必要があります。
この事実を知らないがゆえに、中間管理職になるとなかなか転職するチャンスをつかめず、うつになって退職後、誰でも出来る簡単な仕事に流れて、キャリア形成に失敗する人も少なくありません。
もし、今あなたが「中間管理職つらい…」と悩んで転職を考えているのであれば、焦らずにじっくりと読んで考えを改めてみてください。
目次
中間管理職の「辞めたい」という悩みは複雑で深刻
日本では終身雇用制の考え方が根強く残っており、大学生ですら「大企業」「公務員」と安定志向が強く、一般的に「仕事を辞めてはいけない」と考えられがちです。
しかし、それはもはや時代遅れの考え方であり、今の会社の仕事に不満があるなら「転職活動というリスクマネジメント」を考えておくほうが、いくぶん現実的な考え方だと言える時代になってきています。
中間管理職(ミドルクラス)であればあるほど「仕事(=責任)から逃げられない立場」になり、会社側から都合よく使い倒されるリスクが上がるので、転職活動で退路を確保しておくことが現実的な選択肢になると言えるのです。
新卒3年以内の若造であれば、すぐ辞めたからと言って、会社にも大して影響はありませんし、若手不足ですから未経験職でも内定はもらえます。
理由も「思ってた仕事と違う」「やりたい事がある」「上司の性格が合わない」など、若気の至りだからこそ許されるモノばかりです。
しかし、中間管理職となると事情は変わってきます。
「上司から執拗なプレッシャーかけられる」
「嫌がらせでまったくやり甲斐のない難しい仕事ばかり押しつけられる」
「上司や部下、他部署の責任を陰湿に押しつけられる」
「社内の工作により、不利な立場に追い込まれる」
上記のような策謀渦巻く”大人の都合”に巻き込まれ、不当な思いをすることも圧倒的に多くなります。
しかも、個人の努力や話し合いだけでは解決できない、根の深い問題ばかりになるから始末に負えない。
こうした場合、真面目に「責任をもってすべてやり遂げる」ことが必ずしも正解ではなくなってきます。
なぜなら、日本の組織人はすべてやり遂げたところで、会社側から評価されたり昇給につながるわけではないからです。
その事実をわかっているずる賢い人ほど「責任転嫁」「他人の成果横取り」「社内工作でライバルを貶める」「仕事で手を抜く」など、他人を出し抜くことに労力を使います。
そういった問題は会社全体で見れば損でしかなく、実にバカげていますが、そういった立ち回りの方が得をするのが日本組織のダメなところである事実は、念頭に置いておくべきでしょう。
中間管理職の退職理由
中間管理職の主な退職理由を見ていくと、おおよそ以下のような分類になります。
- 部下と上司との人間関係
- 上司・社内からの不当評価(昇進・給料含む)
- 仕事量のキャパオーバー
- 仕事内容に会社とのすれ違いを感じる
20代前半の「なんとなく辞めたい」「上司が嫌いだから辞めたい」という衝動的な理由ではなく、明らかに仕事に悪影響を与える原因を感じ取って「辞めたい」と考えることがほとんどです。
よほど本人が意図的に手を抜いている場合でもなければ、中間管理職の退職理由は転職時にも正当な理由として受け入れられやすいので、前向きに転職について考えておくといいでしょう。
中間管理職の転職先への志望動機
転職活動では「前職の退職理由=反省を踏まえて、転職先への志望動機=改善につなげる」ことが重要です。
- 人間関係が原因→「閉鎖的な職場なので新しい人間関係の中で仕事してみたいと思った」
- 部下が原因→「部下の指導・教育よりも、まだまだ自分の能力を伸ばしたいと感じており、会社の求めている役割とすれ違いを感じた」
- 上司が原因→「上司から不当な業務内容を振られ、キャパの限界を感じていた」
- 社内の不当評価→「社内の評価が不当に感じ、何度か人事にかけあったが何も教えてくれず、不信感を感じた」
- 会社とのすれ違い→「上司や部下との調整ばかりで、自分のやりたい仕事に挑戦できない」
以上のように、退職理由=原因さえ自覚できていれば、多くの場合は志望動機=仕事の悩みの解決につなげることは可能です。
この「ネガティブな退職理由→ポジティブな志望動機への転換」でつまずく方は非常に多いですが、多くの転職サービスでは職務経歴書の作成から自己アピール方法までサポートしていますので、一度相談してしっかりと自身のキャリアについて客観的な評価をもらっておくといいでしょう。
また、20代後半以降の管理職経験者を募集している企業であれば、仕事はキレイゴトやポジティブな動機だけではやっていけないことぐらい承知済みですので、自分に不利になる前職の反省点についても堂々と話すこともプラス評価にすることも可能です。
大事になるのは「良く思われる・悪く思われる」という自己イメージの演出ばかりにとらわれず、客観的かつ誠実に、退職理由・志望動機どちらも相手に伝えるということです。
就活生と違い、よりマッチング精度と実務能力を問われる管理職クラスの転職であれば、余計な演出や小細工はかえってマイナス評価にしかなりません。
中間管理職からの転職のポイントとは?
以上のような点を踏まえ、中間管理職の方が具体的に転職活動を進めていく時の方針をご紹介していきます。
時間をかけて転職活動を行うこと
中間管理職であれば辛抱強さが身についているので、20代前半の若者のように「今すぐ辞めたい」「早めに転職したい」という願望はそこまで強くないことかと思います。
ですので、転職活動を行うのであれば”焦らずじっくり”で問題ないでしょう。
また、場合によっては「転職しない」という選択肢を選ぶ必要も出てきます。
どちらにせよ、今の仕事に不満を抱えていたり、将来性に疑問を感じるのであれば、転職活動をしっかりと行っておくに越したことはありません。
管理職級であれば、20代の若手のように「今すぐ転職しよう」と考える必要はないので、精神的にも時間にも余裕があるうちに、コツコツ転職活動を進めておきましょう。
管理職自体を辞めたい場合は?
管理職の転職動機として「そもそも管理職したくない=部下のマネジメントをしたくない」という悩みです。
この場合、正社員で管理職の業務範囲を拒否するのはかなり選択肢が狭くなるので、以下のような選択肢を考えておくといいでしょう。
- 「派遣社員」として現場仕事のスキルを積む
- スペシャリスト(専門家)として、より高度な研究・開発に関わる
- 個人プレイ重視の外資系や、管理職クラスの少ない中小・ベンチャーで、部下の育成に関わりにくい環境で働く
日本の大規模な会社であれば、エスカレーター式に「管理職=リーダー=部下の指導」を求められますが、外資系や小規模な会社であれば必ずしもマネジメント一辺倒でないこともあります。
また職種によってはスペシャリスト・技術者として、より専門性の高い仕事を任せられることもあるので「管理職向いていない」と感じたら、自分のキャリアを見直すいい機会でしょう。
ただし、一般的に考えると「絶対に管理職は嫌だ」と考えると選択肢はかなり狭いものとなるので、柔軟に考えておくといいでしょう。
今抱えている「課題」「悩み」が転職で解決するか見極めること
中間管理職の転職は「トレードオフ」「キャリアの軌道修正」だと言えます。
何度かお伝えしている通り「今の仕事で抱えている問題を、転職することで解決できる(自身の解決したい課題が、転職先企業の抱えている課題と一致する)」という条件が整うことで、転職が成立するのです。
中間管理職に求められる能力は多岐にわたりますが、社内のポジションによって求められる度合いが変わってきます。
「人間関係のストレスが多く、業務内容に集中できない」
「社内ポジションの関係で、出世コースが絶望的」
「上司の嫌がらせにあい、不当な業務量を押しつけられる」
「人事の採用が適当で、質の悪い部下の教育を任せられる」
このように、客観的に見るとかなり正当性のある転職理由も多いですので、あくまで「今の仕事で解決できない課題・悩みを解決できる職場」を見つけ出すことがポイントになってきます。
これは転職先からしても「中途採用者と社内が同じ課題を抱えている」と「利害が一致」するわけですので、結果として両者にとってWin-Winの転職につながるわけです。
多くの仕事の交渉ではこの「利害関係の一致」は大事ですが、転職活動も決して自分だけの都合だけではなく「自分が転職することでこの会社の利益になるのか?」を突きつめていけば、自ずと志望動機と自己アピールについても見えてくるはずでしょう。
転職エージェントでアドバイザーに相談しておこう
管理職の方が転職を成功させたいのであれば、転職エージェントを有効活用しておきましょう。
転職エージェントとはプロが自分に合った転職先の求人を紹介してくれる上に、職務経歴書の作成、面談、日程調整から転職先への代理交渉まで行ってくれます。
しかも、完全無料で利用でき、内定後のサポートからアフターフォローを行ってくれます。
無料でそこまで行ってくれる理由は「企業側が費用を負担して、人材採用に関する手続きを転職エージェント側に委託しているビジネス」だからです。
ただし、中間管理職級の転職の場合、1人のアドバイザーだけに任せっきりにはしない方がいいでしょう。
転職エージェント側もビジネスで行っている以上は、クライアント側の意向を重視してくるので、モラルのない担当者や能力不足の担当者とマッチングする可能性も十分にあります。
逆に信頼できるエージェントさえ見つけ出せれば、高精度な求人や転職サポート、あるいは転職先の業界内情などディープな話まで聞き出せるチャンスですので、地道に活用しておくといいでしょう。