「DTPオペレーターになりたいけどやめとけと評判で不安…」
「専門学校でDTPデザイナーのスキルを学んだけど就くべきか悩んでいる…」
「未経験からDTPオペレーターに就きたいけど向いてるかわからない…」
このように悩んでいませんか?
結論から言えば、インターネットの普及でDTPデザイナーからWEBデザイナーの需要が増加したため、DTPオペレーターを始めとした紙媒体や印刷物に関するデザインに関わる仕事の価値は低下傾向にあります。また、印刷物は工場での生産や流通など製造業としての側面も持つため、WEBのように時間や生産管理に融通が効かないため、会社によっては残業が多くなりやすいなどの事情もキツイと言われる理由だと考えられます。
加えて言えば、印刷物からWEBへの広告媒体の以降に追い打ちをかけるように、AIツールでのデザイン制作の自動化が普及する動きが出てきているため、技術職としてのDTPオペレーターの需要は今後も減少傾向が続くことでしょう。
ただ、そんな状況の中でもDTPオペレーターになるべきかどうか悩んでこのページに訪れた方は、何かしらDTPオペレーターに興味を持ったきっかけや、活かせそうなスキルや適性があるのだと思います。
そこで本記事では、DTPオペレーターはやめておけと言われる理由を解説しつつ、DTPオペレーターに向いてる人の適性、また、DTPオペレーター以外にも関連が高く適性を活かせそうな仕事の紹介まで、まとめてお届けしていきます。
DTPオペレーターはやめておけと言われる理由は?
DTPオペレーターはやめておけと言われる理由は、広い視野で考えると「DTPオペレーターの主な所属先となる印刷業界の衰退」「デザイン技術職のDTPからWEB需要の変化」が挙げられます。
また、印刷業は製造業に含む側面もある点にも注目です。印刷物の生産や管理で工場稼働の必要があり、DTPオペレーターもそれに合わせた勤務体系になることから、納期前の深夜での追い込み作業による残業の発生や、シフト制によって不規則な生活になりやすいなどの側面もあります。
以上のような背景から、とくにDTPオペレーターとして働く上で、気になるデメリットやリスクについて詳しく解説していきます。
印刷業界が衰退産業で人材需要が低下傾向にあるから
DTPオペレーターの主な所属先となる印刷業界ですが、市場規模は1990年代後半の9兆円から4割減の5兆円にまで縮小、事業所数は2000年から2019年の間に半減しているとの調査結果が出ています。※会社四季報 業界地図 2023年版調べ
これは、印刷会社の主な受注先となる出版業界と広告業界の変化も影響を及ぼしていると考えることができます。出版業界は活字離れや出版物のデジタル化により発行部数の減少、広告業界は印刷媒体からWEB媒体への広告移行が大きな原因です。
市場規模が縮小して企業数が減れば、それだけ必要な人材も減るため採用の受け入れ口が減るわけですから、DTPオペレーターも採用求人数が減る上に、業界自体の将来性にも不安が残る形となります。そのことが「DTPオペレーターはやめておけ」と言われる、大きな理由となっているのです。
DTPオペレーターの単価が低いから
DTPオペレーターは薄給だという声も多いです。
DTPオペレーターの求人で調べてみても、賃金の最も高い東京都内でも、派遣社員やアルバイトで時給1,150円~1,300円、正社員なら月給23~25万円が主な条件となっており、最低賃金ギリギリのラインとなっています。
その背景の一つに、クラウドソーシングと呼ばれるインターネット上で個人や企業での仕事の受発注ができるサービスの登場が挙げられます。これにより、DTPオペレーターに格安で発注ができるようになってしまい、技術職としてのDTPオペレーターの価値が大きく落ちる一つの原因となってしまったと考えられます。
また、DTPオペレーターだけの仕事内容であれば、企業にとっては正社員雇用するメリットがないため、そ多くが派遣社員形態での募集されおり、正社員と比べると収入が落ちてしまいやすくなることも一つの原因です。
残業や不定期勤務が生じやすい職務体制だから
勤務体制や会社にもよりますが、DTPオペレーター含むクリエイター職は残業や不定期勤務が生じやすい仕事です。
クリエイティブ職の場合、クライアント側からの手戻しが増えると何度も作業をやり直ししないといけないためスケジュール管理が難しかったり、クリエイター側から良いアイデアが出ないでスケジュールが伸びるなど、時間管理が難しくなる事情が多数あります。
DTPオペレーターの場合、クリエイターやデザイナーの指示が来るまで待機状態が生じることもあれば、工場の稼働体制に合わせたり、印刷物を期日までに発行しなければならない都合から、スケジュールの融通が非常に効きにくい立場になりやすいと言えます。また、新聞や週刊誌などの納期厳守が徹底される印刷物に関わる場合、深夜稼働も十分ありえる話です。
今でこそブラック企業への風当たりは強くなっていますが、徹夜作業が当たり前だった価値観のある広告業界や出版業界が主な受注先となる以上、印刷業界にも残業や徹夜作業が当たり前という価値観がまだまだ残っています。
生産管理や時間管理がしっかりできている会社であれば、DTPオペレーターであっても過度な残業は生じないかもしれませんが、会社次第では頻繁に生じる可能性がある業態です。
ですので、DTPオペレーターになろうかどうか悩んでいるなら「求人内容の勤務時間や残業時間の記載が曖昧ではないか?」「印刷工場の稼働時間が24時間体制か?」など、事前に確認できる情報から勤務時間がどれぐらい拘束されるかを推定しておくといいでしょう。
印刷機械の巻き込まれ事故など身体の危機が伴うから
正社員として印刷工場でのDTPオペレーターとして勤務した場合、PC上でのレイアウト作業だけでなく、工場内の印刷管理や機械操作も行う「印刷オペレーター」相当の業務も担当する可能性があります。その場合、気になるのは機械操作での人身事故のリスクや、印刷インクの有毒成分による健康被害です。
とくに印象に残るのが「印刷機械のローラーの巻き込まれ事故」です。これには死亡事故もあれば、指が潰れたり切断するといった痛ましい事例もあります。もちろん、そういった事故の対策は会社側が行うものですが、毎年発生していることからもゼロにするのは難しいものだと推察できます。
また、印刷業で用いるインキに有毒性物質が含まれ、それが原因でガンを引き起こしたとの報告もあります。参考→印刷業で多発した職業性胆管がんと関連する、発がん性候補物質の胆汁排泄を発見 | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
このような事情もあるので、DTPオペレーターの中でもとくに印刷工場内の勤務となり、PC上での作業外の業務も行う可能性がある場合は、会社側の事故防止の取り組みや健康被害リスクへの意識は前もって確認しておく必要があるでしょう。
ネット上での一部のネガティブな評判が壮絶だったから
某巨大掲示板のDTP板では、DTPや印刷業界に対するネガティブな口コミが数多く投稿されています。たとえば、自虐ネタで「DTPオペレーターは底辺職だ」などと投稿したり、特定の会社名を出してバッシングするなど、お世辞にも知性がある批判や評価だとは言えない誹謗中傷に近い形の投稿が目につきます。また、DTPオペレーターに関して検索した際、元DTPオペレーターを名乗る人物の過酷な体験談が多数掲載された個人ブログも表示され、これもネガティブな印象を強烈に植え付けます。
これらの情報に恨み辛みが込められていたことから、ネット上でもその情報をもとに「DTPオペレーターはキツイ仕事だ」という評判が広まってしまったことが、一因にあるのかもしれません。ただ、そのような背景には、上記に紹介したような業界事情もあるはずです。
衰退している業界や過酷な業態になりやすい理由のあるDTPオペレーターとして務めたいのであれば、上記のような事情も受け入れる覚悟を持っておくか、そうでない職場環境や求人内容を見つけ出すなどするか、いずれにしても自分が潰れないように働き続けられるように考えておいて損はないことでしょう。
DTPオペレーターに向いてる人の特徴は?
DTPオペレーターに指示を振ることになるデザイナーやアートディレクターといった立場と比べると、作業の正確さや効率性を求められます。
複雑に頭を使うクリエイティブな作業や制作の上で関係者との綿密なやりとりが生じないため、仕事そのものの難易度は高くはないものの、前述のように需要が低くなっていることから求人数が少ないため、求められる経歴やスキルも高くなりやすい点には注意しておきましょう。
Adobeソフトを使える
Adobeの提供する「Illustrator」「Photoshop」「InDesign」などのDTPソフトを使いこなせる能力が必要です。実務経験があることはもちろん、専門学校などで学んでいると有利になりやすいです。
組版技術や知識がある
組版とは印刷工程の一つで、文字や図版などをページに配置し、紙面を構成していくことを指します。組版実務のためには、ページレイアウト、文字組み、色彩構成、印刷の知識と技術を有しておく必要があります。JAGATの主催する「DTPエキスパート」という資格を取得しておくと、これらの基礎知識を身につけることができます。
薄給でも我慢できる
印刷物の企画や設計、デザインを行うデザイナーに比べると、DTPオペレーターは報酬が低いことが多めです。そのため、薄給でも我慢できる強い精神力が必要です。
クリエイティビティよりはルーチンワークを好む
クリエイティビティとは創造性のこと、つまり「答えの決まっていない非定型作業」を指し、逆にルーチンワークは「答えの決まっている定型作業」を指します。DTPオペレーターはデザイナーが設計したレイアウト通りに配置したり、印刷する上でのデータの微調整が主な仕事内容となります。
微調整や配置自体にはクリエイティブな要素はあるかもしれませんが、0から1を作り出すデザイナーと比べれば、単純作業や定型作業が多くなるため、どちらかと言えばルーチンワークが好きな方が向いてる可能性が高いです。また、創造性の代わりに、作業の正確さや効率を追求する能力が強みとして活きます。
人とのコミュニケーションが苦手
クライアントやプロジェクトメンバーとの対人コミュケーションが要されるデザイナーよりは、コミュ障でもDTPオペレーターは向いてると言えるでしょう。また印刷会社に入社したとして、コミュケーション能力があると判断されると営業などへの配属もあることから、むしろコミュケーション下手な方が作業に集中させてもらえる可能性は上がります。
向上心がさほど高くない
上記のような、定型作業寄りの業務が多くなることが予想されたり、薄給でも気にならないという性質から、向上心はさほど高くない方がDTPオペレーターに向いてると言えるでしょう。逆に向上心が高いなら、将来のキャリアアップを考えても、DTPデザイナーやWEBデザイナーなどのキャリアからスタートするのが時代に合っていると言えます。
印刷業界の将来にあまり興味がない
印刷業界の将来性が芳しくないことは何度もお伝えしている通りですが、業界事情がさほど気にならず、単純に印刷物の制作やDTPソフトを使った作業が好きなのであれば、DTPオペレーターとして長く働けることでしょう。
印刷物自体の需要はまったくゼロになるわけではないので、たとえば、地域密着型のこじんまりとした印刷会社でDTPオペレーターとして働いたり、派遣社員としてやりたいDTP作業だけ請け負うなどの選択肢も考えられます。
DTPオペレーターに向いてない可能性がある人は?
次にDTPオペレーターに向いてない可能性のある人を紹介していきます。ここではどちらかと言うと「DTPオペレーターを目指すよりは、より上のキャリアや転職でも応用の利く職種を選んだ方がいい」という意味合いが強くなります。
単にDTPオペレーター以外の他の職種の選択肢を知らないだけであったり、スキルや経歴が足りていないから消去法でDTPオペレーターを選ぼうとしているなら、ここで紹介する項目についてもよく考えた上で、他の職種についても候補に入れておく方が後悔せずに済むかと思います。
そういったことを自問しながら、本当にDTPオペレーターであるべきかどうか、見つめ直してください。
クリエイティブな仕事がしたい
クリエイティブな仕事がしたいなら、DTPオペレーターは向いてない可能性があります。前述の通り、DTPオペレーターはどちらかと言うと定型作業寄りで、デザイナーが設計したデザインをもとに「デザインを組み立てる人」という立ち位置になります。
ですので、企画やデザイン段階から制作に関わりたい人や、設計段階からデザインに携わりたいなら、DTPオペレーターではなく「DTPデザイナー」「グラフィックデザイナー」となどの職種名で求人検索した方が、向いてる仕事に出会える可能性が上がります。
ただ、会社次第ではDTPオペレーターでもデザイナー相当の仕事を割り振っていることもあるので、そういった詳細は面接時に確認するなどして、自分がイメージしている仕事内容かどうか確認した上で入社するようにすれば、ミスマッチは防げやすくなるはずです。
年収アップやキャリアアップに意欲がある
DTPオペレーターが薄給なのはお伝えしている通りです。
クラウドソーシングの普及によるDTPオペレーターへの低単価化発注が可能になったことに加え、デザインソフトの低価格下によるスキルの希少性の低下、AIなどの便利ツール登場によるレイアウト・組版スキルの需要低下なども追い風もあり、技術そのものの価値は下がる一方です。
年収アップやキャリアアップ転職を考えた場合、この状況は絶望的で、せめてデザイナーとしての提案力や営業力であったり、DTPデザインと合わせてWEBデザインにも対応できるスキルがなければ、変化の目まぐるしい時代を生き残れるかどうかも危うい状況です。
工場勤務よりホワイトカラーの仕事がしたい
DTPオペレーターは、デスクワーク(DTPソフトでの作業)が中心となります。しかし、製作工程の中に機械を操作したり印刷物の加工作業が含まれることもあり、とくに印刷工場での勤務となるとその可能性は高くなります。デスク前での作業や頭脳労働のみに集中したい人は、入社後の配属や業務内容のギャップに不満を抱く機会も増えてしまうかもしれません。
印刷業界の将来性に不安がある
何度もお伝えしている通り、印刷業界はデジタル化やオンライン化によって打撃を食らっており、縮小傾向にある業界です。今後も衰退傾向が予見されるため、会社や業界の将来性を気にするなら、DTPオペレーターは避けたい職業の一つと言えます。
また、ラクスルなどのネット通販により中小規模の印刷会社の受注は増えたものの、逆に言えば流通経路の一部はラクスルに取り押さえられた形になってしまったことも見落とせません。ネットプリントの性質上、低単価競争が進んでいる証拠でもありますし、利用者側のDTPスキルが向上している点でもDTPオペレーターの価値は落ちていることが見えてきます。
DTPオペレーターに転職するためには?
DTP・印刷業界から転職する際は、転職エージェントなどの、優良な転職サービスを使いましょう。
ハローワークでのデザイン業務の募集は、やる気のないDTP・印刷会社ばかりで、待遇も事業規模も悪いところばかりです。そのような会社は、人材育成の余裕もないので前と同じような仕事内容しかありません。ひどい場合は、即戦力と言って都合よく使い潰されるのがオチです。
転職エージェントでは、企業がしっかりお金を払って長期的視野での採用を行っていますので、DTPデザインからWebデザインへの転職もしやすいと言えます。