「非公開求人のメリットとデメリットが気になる」
最近の転職サービスでは非公開求人が主流となっているため、そう気になる方も多いのではないでしょうか?
結論から言っておくと、以下のように”情報格差”が生まれているのが実情です。
人材会社から優遇されやすい人材→非公開求人のメリットが活用できる
人材会社から優遇されにくい人材→非公開求人のデメリットの方が大きい
「一部の上位職・極秘求人は非公開にせざるを得ない」という理由はその通りなのですが、それに便乗して人材会社側が「非公開にする必要がない求人まで、非公開にしている」という実態もあります。
ですので、見極めが必要です。
詳しくは以下の記事で
ただ、だからと言って「非公開求人が大したことない」という理由で求人サイトを使えばいいかと言われると、そういうわけでもありません。
それがなぜかと言うと「転職エージェント自体、企業の代わりに選考の役割を担っている」ためです。
どういうことかと言うと「他の転職サイトで一般公開されている求人であっても、エージェントを通して非公開求人として応募することで、有利になる」ということもあり得るのです。
(もともと、人材採用自体が「コネ」「仲介者経由」を経たほうが、信用面で採用されやすくなる事情がありますので…)
転職希望者には実質的な選択権はなく「選ぶのではなく、選ばれる存在」です。
ここを意識しておかなければ、非公開求人に関しての認識を見誤ったまま、転職活動が難航してしまうおそれもあります。
ですので、出来れば「非公開求人のメリット・デメリット」だけではなく「自分はどれぐらい、非公開求人のメリット・デメリットを受けられるのか?」も考えながら、お読みください。
知っておきたい「人材会社」「採用企業」側のメリットは?
非公開求人のメリットは「人材会社(転職エージェント)」「採用企業」側ににとって非常に都合がいいから主流になっているのが、実際のところです。
ですので、まずは「非公開求人を紹介してもらえることで受けられる自分のメリット」ではなく、人材会社側・企業側はメリットを意識してください。
もともと、転職活動自体が「人材会社・企業側と利害を合わせる=採用される」わけですので、知っておくに越したことはありません。
逆にここを抑えておかなければ、自分の人材価値を見誤って転職活動に難航してしまうおそれもあるので、絶対に抑えておいてください。
非公開求人を扱う、転職エージェント側のメリット
非公開求人を扱う理由に関して知っておきたいのは「転職エージェント側のメリット」です。
「転職エージェント側が都合よく求人を押しつけてくるんじゃないか?」
そう疑っている方もいることでしょう。
その疑い自体は、紛れもなく”事実”です。
それには、以下のような転職エージェント(人材会社)側のメリットが存在するからです。
非公開求人を扱うことで、転職エージェント側が得られるメリット
- 非公開求人にすることで、求職者側に与える求人情報を絞れる
- 優良求人の紹介を一部の見込みのある利用者に優先して紹介できる
- 見込みのない利用者からの応募によって発生する無駄な手間を取り除ける
- 逆に経歴や見込みのない利用者にも「非公開求人」として、非公開にする必要性までない求人を紹介できる
- ネット・求人誌に、求人情報を掲載する手間が省ける(口頭で伝える、メールだけで伝えるなど)
転職エージェント(人材会社)側にとって、非公開求人を多く扱うことで「効率」「利益」に結びつくわけです。
…というのも、転職エージェントは「登録者をたくさん集めて、その中から自社が保有している求人を紹介する」という形式で運営されています。
ですので、基本的に「転職が成功しやすい人」「年収アップが見込める人材」が優先されやすいのです。
そういった転職エージェント側と利害が合う人材であれば、エージェント側が保有している優良非公開求人を紹介してもらえるでしょう。
それ以外の人材に関して言えば「非公開にする必要のない求人まで非公開扱いにして紹介している」という側面もあります。
その場合、担当エージェントのモチベーションが低ければ、自社内の求人情報を抽出して紹介するだけの作業以上のサポートには期待できなくなるので、エージェントを仲介するメリットは低くなってしまいます。
非公開求人を扱う、採用企業側のメリット
次に、採用企業側が非公開求人を扱うメリットを考えてみましょう。
非公開求人を扱うことで、採用企業側が得られるメリット
- ミスマッチ応募を避けることで、採用に関するコストを削減できる
- 非公開にすることで新規事業・極秘案件の募集が内密に出来る
- 企業側の人材状況を見抜かれないようにする
- 求人出稿・求人票作成の手間が省ける
企業人事側の目線で見れば「効率」「情報の秘匿」「採用のマッチング精度」という点で、非公開求人を取り扱うメリットがあります。
元々、企業側からすれば「自社の人材不足の状況は、外部に知られたくない弱み」ですので、あまり積極的に公開したくないものです。
とくに会社の経営状況にもろに関わるような募集であれば、まず一般公開されることはありません。
その場合、転職エージェントにて非公開求人として公開し、見込みのある人材だけを人材会社経由で紹介してもらえばいいわけです。
(ちなみに、企業公式ホームページで公開されている求人情報は考慮していません。公式ホームページ自体定期的に更新していないため、便宜的に掲載しているだけの企業がほとんどです。そのため、企業内の本当のところの人材採用状況はまったくわかりません)
ただし、このメリットが理由で非公開求人扱いされているのは、本当に上位クラスの求人ぐらいでしょう。
以下は、国内でも最高峰クラスの集まる転職サイト「ビズリーチ」での非公開求人に関しての説明です。
この画像で説明されている下層の「一般の求人」も、今では多くが「非公開求人」として人材会社によって取り扱われております。
その理由は単純で、人材会社側が情報公開量を絞った方が、効率よく選考が出来るからです。
人材会社側はコネの強い企業や採用費を出してくれる企業への紹介を、優先できる立場にあります。
極端な話、他にも紹介できる非公開求人があったとしても、転職エージェント側の都合で「非公開求人の中で今はこれしか紹介できません」と言われれば、利用者側は「飲みしかない」のです。
ですので、非公開求人として紹介された求人を見極める場合は、シンプルに「本当にこの求人は非公開で紹介する必要があるのか?」と考えれば、人材会社・企業側の意図も見抜けるはずでしょう。
これは国内の人手不足が深刻になっている以上、大なり小なりどの人材会社や企業側にもあり得る事情ですので、利用者側でしっかりと判断したいものです。
転職サービス利用者が非公開求人で受けられるメリット・デメリットは?
転職サービスで登録者が非公開求人を受け取って応募することで得られるメリットとデメリットを見ていきましょう。
ポイントとしては「上記の人材会社・採用企業側のメリットと一致するか?」という視点で考えれば、自分がそのメリットを受けられる立場かどうか、理解できると思います。
非公開求人を受け取る、求職者側のメリット
- エージェント側と利害が一致すれば、自分に合った求人を優先的に紹介してもらえる
- 一般公開されている求人票では得られない、コアな情報を提供してもらえる
- 非公開とすることで、情報の伝達速度が速くなる
- 受かる見込みのない求人へ応募する手間を省ける
- ミスマッチ採用されるリスクを減らせる
エージェント側と利害が一致すれば、自分に合った求人を厳選してもらえる
非公開求人の最大のメリットしては「自分に合った求人を厳選してもらえる」ことでしょう。
- 限られた人にしか紹介されていない競争倍率の低い求人なので、採用確率が高め
- 極秘の案件・新規事業の立ち上げに関する求人など、秘匿性の高い情報も手に入る
- 担当者が「少数精鋭」のエージェントであれば、より自分に合った求人を厳選してもらえる
本格的に転職活動をするのであれば、自分の望む条件の求人を的確に紹介してくれるエージェント数人と地道にコネを作っておき、厳選した求人を受け取れる態勢を整えておくのがベストでしょう。
これに関しては、経歴があるかどうか以上に「いい担当者と出会えるか?」「自分の転職方針と担当者の受け持っている担当範囲の利害が一致するか?」などの運の要素もあるので、地道に活動していくしかありません。
一般公開求人情報以上のコアな情報に期待できる
非公開求人の場合、担当者との利害さえ合えば一般公開求人以上のコアな情報に期待できます。
とくに、紹介先企業と人材会社が強いコネを持っていたり、あるいは担当者が両面型で直接紹介先企業に営業・交渉しているのであれば、一般求人だけでは得られない、ディープな情報を提供してもらうことも可能です。
非公開とすることで、情報伝達速度が速くなる
非公開求人のメリットしては、求人情報として体裁を整えて一般公開する必要がないため、すぐに求職者に紹介できるという点です。
通常、一般公開されている求人情報は、出稿するまでに編集・校閲などの過程が生じるので、情報反映の速度が遅くなります。
その途中で採用者が出てしまったら、それまでの作業時間と人件費も無駄になるので、あまり効率がよくありません。
そのため、一般の求人誌や求人サイトでは「大量採用したい会社」「離職率が高いので慢性的に募集している会社」が主に利用する傾向があります。
ですので、1人だけ人材が欲しい場合などは、あまり効率が良いやり方ではないのです。
その場合、非公開求人として公に扱わないことで「とりあえず話だけでも」「こういう募集が出ているけど」と、柔軟に利用者に対して情報提供することが可能となります。
受かる見込みのない求人に応募する手間が省ける
非公開求人は、原則的に「受かる見込みのある求人」が優先的に紹介されます。
転職エージェントは、原則的に「採用される見込みのある求人」しか紹介してこないため、フィルターの役割も担っているわけです。
ですので、自分で求人サイトを一から探して応募して見込みのない求人に応募する手間が省けます。
逆に言えば、冒険的な求人や絶対に受からない求人は紹介されにくい…ということです。
ただし「採用されるかどうか?」の判断自体が、エージェントの担当者や人材会社側の基準に寄ってしまう性質がある点は注意です。
ミスマッチ採用のリスクを減らせる
非公開求人の場合、自分に見込みのある求人を優先して紹介してもらえるため、ミスマッチ採用のリスクを減らせます。
非公開求人を受け取る、求職者側のデメリット
- 求人を自由に選べない
- エージェント側の都合に振り回されるリスクがある
- 非公開で情報が限られてくるため、知りたい情報を得られない
- 非公開求人の紹介が経歴・実績重視のため、その他の要素で勝負しづらい
- 経歴不足の場合、非公開求人を紹介してもらえないこともある
求人を自由に選べない
非公開求人の場合、自分の適性や見込みのある求人しか開示されないため、自分から求人を選べません。
ですが、最近のほとんどの転職サービスでは「スカウト」「オファー」という形式で、実質的に非公開求人ばかりになってしまっているので、あまりに気にする必要はないでしょう。
逆に言えば、自分から選べる求人はそれだけの理由があるということです。
就職活動と違って、シビアに経歴・年齢が選考条件になってしまう転職活動では、選べないのが当たり前なことは意識しておきたいです。
エージェント側の都合に振り回されるリスクがある
非公開求人の大前提としては「エージェント側が非公開求人について、ウソをついていない」場合にのみ、有用な情報となります。
ですが、担当者が非公開である理由についてしっかりとした説明をしてくれない場合は、一般公開求人と対して変わりがないです。
前述の通り「わざとエージェント側が非公開にして情報を絞っている」場合もあります。
つまり、非公開求人を釣りエサにしているエージェントも言えれば、純粋に非公開にすべき理由があって非公開求人として取り扱っていることもあるということです。
ですので、明らかにエージェント側が不自然に推してきたり、あるいは自分の希望を無視してきた場合は、疑っておくに越したことはありません。
非公開で情報が限られてくるため、知りたい情報を得られない
非公開求人が、正当に非公開にされる理由がある場合、採用されるまで秘匿性の高い情報を一切提供してもらえない可能性も十分に考えられます。
その場合、知りたい情報については事前に提供してもらえないため「相手が知らないから答えられないのか?」「採用するまで説明してもらえないのか?」の判断が不能となります。
これも利用者側の”読み”が必要になってくるので判断に困るところではあります。
非公開求人の紹介は経歴・実績重視なので、その他の要素で勝負しにくい
非公開求人の紹介ですが、エージェント登録段階では「経歴・実績」などの登録情報・職務経歴によって判断されます。
そのため、その他の「人間性・人柄・考え方」などで勝負しにくくなります。
ですが、そこは「人対人」ですので、工夫することはできます。
- 面談に積極的に参加して、心象を良くしておく
- 担当者個人と直接連絡をとって、根回ししておく
- 登録しているレジュメ(職務経歴書)を定期的に更新しておく
- 求人選びを担当者任せにせず、しっかりと要望と意志を伝えておく
逆に言えば、機械的・事務的にしかエージェントを利用していなければ、向こうも機械的・事務的にしか非公開求人を薦めてきません。
経歴不足の場合、非公開求人を紹介してもらえない
経歴不足の場合、非公開求人を紹介してもらえない可能性もあります。
利用しているエージェントの利用対象に合っていないだけなのかもしれないので、他のエージェントも活用しておくといいでしょう。
それでもダメな場合は、残念ながら非公開求人を紹介してもらえるほどの人材ではない…ということなので、現実的に転職エージェントでの非公開求人の紹介に期待するのは諦めましょう。
転職では「非公開求人」は当たり前だと心得ておこう
以上、非公開求人のメリット・デメリットをご紹介してきました。
全体を踏まえておくと、転職活動の求人選び全体に当てはまることばかりですので、非公開求人自体のメリット・デメリット以外の要素も含んでいます。
転職サービス自体が、登録してしっかりと面談参加しなければまともな情報提供に期待できない仕組みになっているので、非公開求人かどうかはそこまで重要ではない…というのが実情でしょう。
人材業界の動向を見ていると、今度もますます非公開求人制の機運は高まっていくのではないか…と思われます。
というのも、ネットで誰もが情報を手軽に得られるご時世になってしまったため、情報業者としての顔を持つ人材業界は「あえて公開情報を絞る」という方針に向かっているからです。
ですので「非公開求人だから~」という判断基準で転職先を選ぶのではなく、もっと深く「なぜ、転職業者では非公開求人が8割以上を占めているのか?」を考えて、転職活動に望めば、方向性を見誤らずに済むかと思います。
ひとつだけ言えるのは、無料で誰でも閲覧できて、カンタンに得られる情報にはその程度の価値しかないということです。