読者の皆様は「既卒・第二新卒」という言葉はご存知でしょうか?
「既卒・第二新卒」というと、2010年台に入ってから人材市場でよく使われるようになった言葉で、聞き馴染みのない方や卒業後に知った方も多いかと思います。
既卒・第二新卒の意味
既卒…就職が決まらずに大学(または短大・専門学校など)を卒業してしまい、アルバイト・無職として過ごしている人。
第二新卒…新卒入社後、3年以内に離職してしまった人。または離職を考えている人。
この「既卒・第二新卒」という言葉の定義や、実際の人材市場での扱われ方ですが、偏見や誤解も多く、まだまだ正しく理解されていないと感じることも多いです。
とくに私が既卒であった2010年前後は、リーマンショックで買い手市場で採用状況が厳しかったこともあり、既卒・第二新卒層に関してのサポートや情報がまったく充実しておりませんでした。
ですが、最近では大手のリクルートが既卒・第二新卒向けの「就職Shop」を運営するなど、ようやく人材業界・企業側の動きも追いついてきています。→就職Shopの解説記事
逆に言えば、まだまだ社会側は既卒・第二新卒に対してのサポートが十分とは言えず、情報が錯綜しており、実態がわかりにくくなっているとも言えます。
そこで当記事では、企業・社会側の事情も踏まえた上で「第二新卒・既卒が企業側に歓迎される理由」を一緒に考えていきましょう。
「既卒」「第二新卒」という言葉が生まれた経緯
既卒・第二新卒を正しく理解するためにも、まずは言葉が生まれた経緯を考えていきましょう。
私の記憶が正しければ「既卒・第二新卒」という言葉が人材市場で頻繁に扱われだしたのは、2010年代前半ぐらいからだったはずです。(当時、私は既卒に該当していましたが、それを知ったのは卒業後しばらくしてからでした…)
それ以前は単に「フリーター」「ニート」「無職」とひとまとめにされていました。一昔前風に言えば「プータロー」とも。
逆に言えば、それまでは「新卒採用されるのが当たり前」という考えが主流で、企業側も「新卒採用されなかった人材には興味がない」という考えで採用を行っていたのです。
ですが、少子高齢化の進行や、国内の慢性的な人手不足もあってか、政府側から企業に対して「若手の無職・フリーターを採用するように」と法規制が入り、そこから徐々に「既卒・第二新卒」という言葉と人材区分が広がっていった背景があります。。
政府・国の取り組みによる「既卒・第二新卒」の需要増加の背景
厚生労働省の公開している「青少年の雇用促進」をしっかり読み込めば、既卒・第二新卒の採用が増えた背景はわかるのですが、企業側が対応に追いついていない部分もあるので、見極めが必要です。
国側の規定では「既卒」「第二新卒」という明確な区分がないことも、実態をわかりにくくさせている遠因だと、ご理解いただけるかと思います。
また「3年以内」という期間を設けている理由に「国から助成金が出る」ということを知っておけば、第二新卒・既卒が一般的に「3年以内」とされる事情も見えてくるかと思います。
マーケティング面における「既卒・第二新卒」という意味
では、なぜ「既卒・第二新卒」という言葉が広まったのか?
それは以下のような理由が考えられます。
- 既卒・第二新卒に該当する人材が多いため
- 既卒・第二新卒層を採用する企業が増えたため
- 既卒・第二新卒層をサポートする人材サービスが増えたため
- 既卒・第二新卒層に向けての情報や、転職ノウハウが充実してきたため
ひとまとめに言うと「マーケティング対象として、明確に”既卒・第二新卒”という人材に価値があると認知されだした」とも言い換えられます。
ですので、20代の若手向けの就職支援サービス・転職エージェントも、多くの場合は「既卒・第二新卒向け」とされることがほとんどです。
そういった事情を知っておくと「既卒・第二新卒」という言葉は、あくまでマーケティング都合で「20代の若者で、就職活動で挫折・早期離職してしまった人」という人材層を、企業・人材会社側が獲得するために、用いていることが見えてきます。
感覚としては「中途採用者として即戦力として雇うには不安があるけど、就活生と同じ人材価値はある」という扱いを企業側から受けられるのが、既卒・第二新卒層だと言えます。
既卒・第二新卒が企業から求められる理由とは?
以上のように「既卒・第二新卒という言葉の定義」が広まっていった背景を踏まえた上で、今度は「なぜ、既卒・第二新卒層が企業側から需要があるのか?」を考えてみましょう。
これには以下のような理由があります。
既卒・第二新卒層が企業から求められている理由
- 知名度が高くない小さめの企業から需要がある
- 既卒・第二新卒層の「失敗・挫折経験」にポテンシャルを感じている企業もある
- 未経験者でも一から育てる余裕のある企業からの需要がある
- 急成長中のベンチャー企業からの需要もある
知名度が高くない小さめの企業から需要がある
既卒・第二新卒層を最も求めているのは「知名度が高くない、小さめの企業」です。
これは、大手人材会社であるリクルートの各サービスの運営方針を見ているとよくわかり、全キャリア層向けの「リクルートエージェント」「リクナビNEXT」と違って、既卒・第二新卒向けの「就職Shop」では、明確に”従業員数の少ない小さめの企業”に紹介を絞ってきています。
画像出典:就職Shop公式サイト内より
なぜ、既卒・第二新卒層向けに小さめの企業の紹介が多いかと言うと、以下のような理由があるからです。
既卒・第二新卒層向けの求人で小さめの企業が多くなる理由は?
- 小さめの企業は「人柄・人間性重視」の傾向にあり、経歴を問われにくい
- 就活生のニーズが「有名な一流企業」「安定性のある大企業・公務員」になりがちで、その他の企業は就活生からは注目されにくい
- 大きな企業と違って、社員一人一人に教育しやすい環境にあるため、柔軟な採用が出来る
- 若手不足の企業の場合は、将来の管理職・経営者候補としての採用を視野に入れていることもある
日本の就職・転職情報は多くが「影響力や資本力を持つ大手企業向けのもの」になりやすいのですが、世の中の99%の企業は中小企業に属します。
そのため、実態は「中小企業の本音や考えとまるで違う、一部の優秀な人材を求める大手企業側の採用方針」が目に付きやすくなってしまうわけです。
その結果、大手企業が影響力を持つ就活市場では、中小企業以下の目立たない企業が埋もれてしまい、就活生からなかなか見向きされなくなってしまう…という事情があります。
その中には「意外な優良企業」「自分に適正のある仕事」「自分と考え方が合う経営者や社員のいる会社」もたくさん存在します。
そういった企業が、既卒・第二新卒層向けのサービスを利用しているわけです。
失敗・挫折経験にポテンシャルを見い出す企業もある
既卒・第二新卒層を求める企業の中には「あえて、既卒・第二新卒として失敗や挫折経験のある人材」を求めている企業もあります。
世の中には決して「新卒採用後、辞めないでずっと同じ会社に勤め続けている人」ばかりではありません。
むしろ「アルバイトの現場仕事から成り上がって出世した人」「無職期間を経て経営者担った人」など、色んな経歴を持つ人がいます。
そういった人が経営者や人事を務める会社であれば、失敗や挫折を経験している既卒・第二新卒層に対しての理解力があり、中には「あえて新卒よりも既卒・第二新卒層を採る」という企業もあるぐらいです。
たとえば、既卒・第二新卒向けの「ウズキャリ」を運営している株式会社UZUZは、経営者本人が第二新卒としての挫折を味わった経緯から、既卒・第二新卒向けのサポートサービスを立ち上げております。社員自体も既卒・第二新卒経験者ばかりですので、より既卒・第二新卒者目線の対応に期待できます。
【昔既卒就活してて気づいたこと】
・新卒みたいに何回も面接しない(1〜2回が普通)
・選考結果が出るスピード早い
・素直に話せば企業から経歴を詰められることはほぼない
・ESは書かない
・既卒を採用してる会社は意外とある
・「既卒 やばい」で検索してる暇があったら動いた方がいい— UZUZ【就職/転職エージェント】 (@UZUZ_uzcc) December 20, 2018
決して世の中は「新卒採用されなかった人材は要らない」「一度辞めた人材は要らない」という、狭い考え方しか出来ない人間ばかりではないのです。
未経験者でも一から育てる余裕のある企業からの需要がある
既卒・第二新卒層は、未経験者でも一から育てる余裕のある企業からの需要があります。
そういった企業は「将来を担う若手がいない」「人材不足ではないけど、将来を見越して何人か採用しておきたい」という中長期的視野での採用になるので、教育に時間をかけられる優良企業が多めです。
これが完全な中途採用の場合「即戦力」としての経歴や能力が求められるので、会社側の教育にはあまり期待できません。
一方で、既卒・第二新卒層の場合は「ポテンシャル」に期待されて採用されるため、即戦力というよりは「辞めないで続けて、しっかり仕事を覚えてくれ」という意図での採用になります。
そのため、企業側が一番重視する要素が「定着率(=長く続けてくれる確率)」となるわけです。
ですので、会社側と人柄・人間性・考え方がピッタリ当てはまれば、経歴がなくても採用される可能性が上がると言えます。
※知っておきたい既卒・第二新卒層向けの助成金制度
これについて捕捉しておくと、政府側から助成金が出ているという背景もある点は知っておきたいです。
具体的には「既卒3年以内の人を雇って1年間定着させると補助金が支給される」という制度が、国によって設けられています。
参考リンク:特定求職者雇用開発助成金(三年以内既卒者等採用定着コース)|厚生労働省
いくら既卒・第二新卒層が需要があると言っても、企業側の本音としては「出来るだけ若いほうがいい」わけですので、政府側から補助金が出ることで「それなら、採用してみてもいいか」と思うわけですね。
政府側が「卒業後3年以内」と制定しているため、そこから外れる20代後半は未経験職への就職・転職が厳しくなりやすい傾向にあります。
急成長中のベンチャー企業からも需要あり
既卒・第二新卒層は、急成長中のベンチャー企業からの需要も一定数あります。
急成長中のベンチャー企業の場合「知名度が低い」「事業拡大しているため人手が足りない」などの理由もあるため、未経験者でも採用されやすい傾向にあります。
ただし、急成長中のベンチャー企業の場合は、ややブラック寄りになりやすいため、その点は注意です。
その分、既卒・第二新卒の方が急成長中のベンチャー企業への就職を希望する場合、以下のようなメリットも考えられます。
既卒・第二新卒層が急成長中のベンチャー企業に就くメリット
- 人手不足の企業が多いため、採用ハードルが低め
- 会社や経営者と考え方が合えば、働くことに大きなやりがいやモチベーションを感じられる
- 会社の業績が上がれば、成果報酬(インセンティブ)・昇給・ボーナスなど年収面に期待できる会社が多い
- 勢いのある会社が多いので、将来大きな企業に成長する可能性がある
- 忙しい分経験が身につくため、後の転職活動や独立のための経歴にもなる
既卒・第二新卒向けの人材会社で、この方針が強く出ているのは「JAIC(ジェイック)」「Re就活」などです。
また、効率重視の大手転職エージェントである「リクルートエージェント」「doda(デューダ)」なども、経歴のない既卒・第二新卒層には人手不足で採用確率の高い業界・職種を薦めてくることが予想されます。
既卒・第二新卒が有利に就職・転職先を決めるには?
以上のような、社会的背景や企業側の事情を知っておけば、既卒・第二新卒層が歓迎される事情は見えてくることかと思います。
とくに、既卒・第二新卒の言葉の定義通り「卒業後3年以内」であれば、政府側から補助金の支援制度もあるため、実質的には就活生と同じぐらい優遇されやすい年齢層だと言えます。
逆に言えば、就活生・新卒採用というのはそれだけボーナス期間であり、実力のわからない若手を正社員として採用するのは、企業側すれば非常にリスクが高いのです。
「就活生として優遇されやすい期間が3年間延長される=既卒・第二新卒に区分される期間」だと考えていただければ、わかりやすいことでしょう。
一方で、20代後半となると正社員採用が控えられ、人材会社によっては派遣社員・契約社員を紹介してくるケースも増えてきます。
また、30代以降は人材サービスではサポート対象外とすることも多く、優遇されることはなくなってきます。
文字通り「若ければ若いほど、就職・転職活動も有利」になるわけですが、そこにはしっかりとした理由や事情があります。
若いうちに受けられる社会的な恩恵を受けないでチャンスを逃してしまうと、既卒・第二新卒層の区分から外れてしまうは間違いないので、若い方は出来る限り早めに就職・転職活動を開始しましょう。
既卒・第二新卒向けのオススメ就職支援サービス
文中でも何度もお伝えした通り、既卒・第二新卒の採用に積極的になっている企業が増えてきております。
ですが、転職サイトの求人情報だけでは「本当に既卒・第二新卒でも採用してくれるのか?」ということまではわかりません。
そこでオススメしたいのが、既卒・第二新卒向けの求人を取り扱っている、就職支援サービスです。
就職支援サービスでは、既卒・第二新卒を欲しがっている企業と強いコネがあり、求人票だけではわからない情報を提供してくれます。
また、面接の指導から、自分に向いている企業の探し方まで、様々なサポートを無料で行ってくれるので、既卒・第二新卒の方は必ず活用しておきましょう。