漁師の仕事内容は?
「漁師」と言ってもその仕事内容は幅広く、単に川釣りをしたり浅瀬で魚介類を収穫する人も広い意味では漁師と言えるかもしれません。
一般的に「漁師」と呼ばれる仕事は、船を操舵して漁場へ向かい魚介類を捕る仕事で、大きく分けて「遠洋漁業」「沖合漁業」「沿岸漁業」の3つに分かれます。
「遠洋漁業」はカツオやマグロなどを獲るために世界中の海をめぐり、数ヶ月、あるいは1年もの長期におよぶこともある仕事です。
「沖合漁業」は日本近海を主な漁場とし、航海の期間は日帰りから、数週間の操業で、狙う魚によって様々です。
「沿岸漁業」は基本的に日帰りの操業となり、漁業協同組合に加入する必要があります。また、一定の漁業実績やその地域の定住義務などの条件があり、日本の漁師の大半が沿岸漁業に携わっています。
上記の「漁師」と呼ばれる仕事の他に、魚介類を収穫する仕事には以下のような職業があります。
- 川漁師
- 海女・海士
- 魚介類養殖業者
- 釣り船船長
それぞれ、詳しく解説していきます。
川漁師
川漁師とは、アユやコイ、ウナギなど川に生息する魚を捕る仕事です。
川漁師は魚の習性はもちろん、天候や川面の満ち引きなど川に関わるあらゆる自然現象を熟知し、竿や網だけではなく、さまざまな仕掛けを駆使して魚を捕獲することになります。
最近では渓流釣りが人気となっているため、一般の釣り人を対象に渓流釣りガイドをしたり、民宿を経営、あるいは釣り教室を開講するなど、活動の幅を広げてる人も少なくはありません。
海女・海士(あま)
海女・海士とは、主にアワビ、サザエ、トコブシ、ウニ、ナマコなどの魚介類や海藻を獲る仕事です。
一般的に海女は女性、海士は男性を指しますが、どちらも「あま」と読みます。
長時間海水に浸かっていなければならないため、体質的に寒さに強いことが条件となり、体力と技術も必要とされます。
最近は男性の海士も多くなりましたが、漁師との兼業の人がほとんどです。
魚介類養殖業者
魚介類養殖業者の仕事として、陸上で大きな水槽の中で養殖する「陸上養殖」と、海に生簀を設けて養殖する「海上養殖」があります。
どちらの養殖を行うにしても、他の産地と差別化するための品質管理や研究も仕事に含まれるため、専門知識が必要とされます。
養殖業は大規模な企業や研究所のほか、家族経営も多く、様々な経営形態が存在します。
魚介類養殖業者として働くには、企業や企業研究所に就職することになりますが、高校や大学の水産課程を修了しておくと有利になりやすいです。
なお、独立したい場合は地域の漁業協同組合に入り、漁業権を得なければなりません。
釣り船船長
釣り船船長になるには、小型船舶操縦士試験に合格した上で、小型旅客安全講習を受講して、特定操縦免許を取る必要があります。
この小型船舶操縦士免許は、独学して日本海洋レジャー安全・振興協会が行う国家試験に直接調整する人もいますが、多くは同協会の教習を受けたり、国土交通大臣の認定を受けた登録小型船舶教習所などで取得しています。
釣り人気とともに釣り船業を営む人も多くなりましたが、民宿も併せて経営してる人も多いです。
漁師になるには?
どの漁師になるにしても、組合や団体に所属したり弟子入りするなどして、経験を積みながら一人前を目指すことが前提となります。
逆に言えば、一般職のようにスキルを身につけて面接対策を行い就職するような採用方法は行われていないため、漁師になるには現場で実践していく必要があるのです。
そのため、漁師になるには勉強してスキルを身につけることよりも、行動力と体力が大事になることは言うまでもないでしょう。
具体的には、漁師になるには最寄りの漁業協同組合、川漁師や海女・海士になるには直接弟子入りを頼み込むなどする必要があります。
漁師の仕事はハローワークや求人サイトなどでほとんど出回らない都合上、受身の姿勢では求人情報すら見当たらないことは覚えておきたいところです。
ですので、まずは自分の住む地域や住みたい地域の漁業関連の組合を見つけ出し、直接連絡して採用してもらえないか問い合わせてみるといいでしょう。
より詳しく漁師の採用事情を解説しておくと、遠洋漁業の漁師は求人が少ないため、経験がなければ挑戦することは難しいですが、沖合漁業は未経験者可能の求人もあります。
一方、沿岸漁業の場合、港を中心に地域と密着しているため、その地域に何の縁故もない一般人が新たに漁師として生計を立てるのは容易ではなく、初めは漁師の船に乗って漁船員として漁の修行をするのが大半です。
また、各自治体が後継者を募集している場合もあります。
いずれにしても、自治体や漁業組合に問い合わせてみたり、現役で働く人に直接採用を頼み込むなどした方、どの漁師になるにしても近道になるのは間違いないでしょう。
漁師に必要な資格やスキル
前にも紹介した通り、漁師になるには行動力や体力が重要であり、特別な資格やスキルはなくても働くこと自体は可能です。
ただし、釣り船船長になるためには「小型船舶操縦士免許」を取る必要があります。
しかし、この免許を取得するだけでは釣り船業(遊船船業)を始めることはできず、遊漁船における利用者の安全の確保などに関する業務を行う遊漁船業務主任者を選任し、都道府県に申請して遊漁船業者の登録をしなければなりません。
その場合、全日本釣り団体協議会や都道府県などが実施する講習を受講する必要があります。
遊漁船業務主任者になれるのは、1級または2級の小型船舶操縦士か海技士(航海)の資格を有し、遊漁船業務主任者講習を受けた者となっていますが、船長が兼任してもいいことになっています。
いずれにしても、漁師として働く中でキャリアアップしていく過程で、船の操縦に関する資格を取る段階では資格が必要となることがあることは予め知っておくといいでしょう。
また、学生時代に水産課程を修了しておけば基礎的な知識は身についていると言えるので、とくに養殖業者などの研究も必要な仕事ではあるに越したことはないと言えます。
何度もお伝えしている通り、漁師全般が資格やスキルよりも、まずは現場での実戦経験が重視されやすい仕事であるため、資格やスキルの習得は就職した後に改めて勉強し直す方が堅実でしょう。
漁師に向いてる人は?
- 体力や行動力がある
- 海や川などの水辺が苦手でない
- 長期間の漁や移住に抵抗がない
- 独立心のある人
漁師になるには、勉強が得意であったり特別なスキルを身につけるよりも、一にも二にも体力と行動力が大事です。
ですので、勉強が苦手で専門スキルもないが、体力や行動力に自信があるのであれば、挑戦してみる価値はあるでしょう。
仕事の性質上、海や川での仕事が主となるため、水辺が苦手だと向いてないかもしれません。
住んでる地域によっては、就職の際に移住が必要となることもあり、漁業自体も数週間から数ヶ月に渡ることもあるため、今の住まいから出たくない人や、毎日帰宅しなければ気がすまない人にはやや不向きかもしれません。
また、漁師として働く以上、最終的に独立を目指したほうが自由に働きやすくなるため、独立心も必要とされることもあります。
こうして考えていくと、漁師は一般職とは違ったサバイバル能力が必要とされるため、自分の適性と相談してどのような働き方で関わるかを決めておくといいでしょう。
漁師と関連性の高い仕事は?
漁師と関連の高い仕事は様々ですが、水産品を加工する食品加工メーカーなどは商流的に関連性が高いと言えるでしょう。
水辺の現場で働くという意味では「潜水士」「釣りインストラクター」なども関連性が高いと言えます。
近年、川漁師や釣り船船長が民泊を営んでいる事情も考えると「ペンション経営者」などの、観光関連の仕事も関連が高くなってきています。
広くで言えば、農林水産業全般も関連性が高く、漁業にこだわらないのであれば農業や畜産、林業についても知っておくといいかもしれません。
どの職種や業種を選ぶにしても、漁業関係の仕事はビジネス面の強い一般職と比べて性質の違う仕事が多いため、一般的なキャリアではなくそれぞれの職業・業界に合わせたキャリアプランを考えておく必要があります。