転職エージェントでは、保有している求人の8割以上が「非公開求人」と公表されております。
この非公開求人ですが、
「なんだか怪しい…」
「信用できない…」
「エージェント側が都合よく非公開にしているのでは…?」
…と疑いたくなる方もいるかと思います。
もちろん、転職エージェント・採用企業側が戦略的に非公開にしていることもあり、そう疑われも仕方ないのは、確かではあります。
ですが、それとは別に「非公開にした方が、求職者・企業・転職エージェント3者にとってメリットがある」という、極めて合理的な理由も存在します。
出来れば、この記事にたどり着いたあなたも「非公開求人のメリット」を得られる立場になりたいのではないでしょうか。
そのためにはまず「転職エージェント・企業側が非公開求人を扱う事情」を知っておくことが何よりも大事です。
この記事では、多くの方が知りたいであろう「転職エージェントが求人を非公開にする本当の理由」について、包み隠さずご紹介していきます。
「非公開求人」の多くは優良求人・上位職求人ばかり
国内の主要転職エージェントでは、その8割以上が「非公開求人」で占められております。
単純に人材会社・採用企業にとって、非公開求人で得られるメリットの方が、公開求人で募集することで発生するデメリットよりはるかに大きいからです。
通常、求人情報というのはポジションが高ければ高いほど、秘匿性が高くなり、一般公開されない傾向にあります。
とくに国内でも最上位クラスの求人を扱っている「ビズリーチ」で公表されている、非公開求人に関する説明を見てみましょう。
画像からわかる通り求人情報にも階級構造が存在しているのです。
そのため、一般公開されている「無料で誰でも閲覧できる求人」ほど質の悪い求人が多くなり、逆に非公開求人ほど質の良い求人が増える仕組みになっているわけです。
よくネット上では「ハローワークにまともな求人がない!」などと叫ばれていますが、こういった企業側の事情を知っておけば、その理由もおわかりいただけるはずでしょう。
ハローワーク・無料求人サイトでまともな求人が見つからない理由について
→まともな仕事に就けない人の9割がやっている間違った仕事の探し方。まとまな会社を見つけたいなら読んでおこう!
なぜ、非公開求人が扱われるのか?
なぜ、上位職・優良求人は非公開求人になるのでしょうか?
理由は単純で、転職エージェント・企業側にとって、非常に合理的だからです。
一方で、多くの人材会社が非公開求人を取り扱うことで、求職者が不利な立場になるのも間違いないです。
ですので、むしろ「怪しい」「信用できない」と疑ってかかることは健全な証拠です。
ただし、エージェント側がしっかり非公開求人を取り扱って、的確に求職者に紹介してくれるのであれば、求職者側もそのメリットを受けることが出来ます。
非公開求人の恩恵を受けたいのであれば、まずは以下のような「転職エージェント・企業側にとってのメリット」を把握しておくといいでしょう。
見込みのない人材の応募を弾くため
転職エージェントや企業が非公開求人を扱う理由は「非公開にしなければ、人気殺到で見込みのない人材が応募してくる結果になる」からです。
企業目線で考えればわかりますが、誰もが平等に閲覧できて応募できる一般公開求人ですと、どれだけ求人票で制限を厳しくしても、希望に沿っていない人材が多数応募してくるものです。
企業側も暇ではありませんから、出来れば見込みのない人材は書類選考段階で弾きたい。
そこで、転職エージェント側に選考の一部を任せて、見込みのある人材だけに非公開求人として紹介してもらうビジネスが成り立つのです。
わかりやすく言えば、転職エージェント(人材会社)側は、紹介先企業の代わりに選考の一部も担っている状態なのです。
就活生時代は、経歴が問われないために就職先を選び放題に思えますが、転職は違います。
転職活動においては、求職者側の選択肢は決して広くはないのです。
求職者に「選択肢」を与えないため
エージェント側が非公開求人を扱う主な理由としては「求職者に選択肢を与えないため」です。
転職エージェントは仲介業者として、転職成功のたびに報酬を受け取ります。
本音で言えば「提案してくれた求人を素直に飲み込み、すぐに内定をとってくれる人材」が、一番都合のいい存在なのです。
そのためにもっとも手っ取り早い方法は「一切求人情報を公開しないで、自社が保有している求人を押しつける」です。
…が、求職者にも希望や要望はありますので、まずそうはいきません。
ですので、エージェント側は「求職者側の希望や要望」と「企業側のニーズ」を調整・仲介する力量を試されることとなります。
しかし、中には「ノルマのために求職者の意向を無視して自分都合を押しつけてくる担当者」や「対応は丁寧で親身に相談に乗ってくれるのに、提案求人はズレている」など、エージェント側にも未熟な担当者は少なからず存在します。
これについては、
- 転職エージェント側の運営方針
- その時の経済状況(求人数、採用状況)
- 利用者の人材価値(企業側からのニーズ)
- 担当者の考え方や仕事に対する姿勢
…など、様々な要素が絡んでくるので、利用者側で見極める必要があります。
ただ、紛れもなく「多くの求人を非公開求人を取り扱うことで、圧倒的に転職エージェント側が有利になってしまっている」という事実は、踏まえて利用したいものです。
会社側の秘匿情報を守るため
非公開求人は、企業側にとって、秘匿情報を公開しないための方法としても有効です。
とくに企業の重大な仕事に関わる求人情報は公開するだけで、会社の秘密や弱みが公開されることになり、下手をすれば大きな損失につながる可能性もあります。
転職を考える方や中途採用者クラスになると、仕事において「守秘義務=外部に漏らしてはいけない情報」が存在することは、お察しできるかと思います。
逆に会社で重要な情報を握るほどの立場でない方は、今ひとつ実感できない理由かもしれません。
これに関しては、転職エージェントを経由して転職に成功した人間は、ペラペラ守秘義務をしゃべるような人材ではないので、表にはまったく参考になる情報が出てこないという事情もあります。
求人情報の作成・公開の手間が省け、スピード感に優れる
求人サイト・転職サイトで求人情報を一般公開するのは、非常に手間のかかる方法で効率が悪いものです。
というのも、求人票を制作してネット上に公開するために、以下のような流れがあります。
- 紹介先企業への営業訪問による聞き込み調査
- 会社に情報を持ち帰って、求人票制作
- 制作した原稿を校閲(修正・訂正指示)
- 求人原稿を求人サイト情報を管理している部門に提出
- 公開する優先順位を検討した上で、ようやく公開される
一般的な企業で働いたことがある方は想像できるかと思いますが、人材会社が紹介先企業に訪問して求人情報が公開されるまでには、時間がかかりすぎるのです。
会社が大きければ大きいほど、各部門を通さないといけないため、求職者の手元に情報が届くまでに時間がかかります。
場合によって、取引先の会社に一部の業務範囲を委託することもあります。
そして、各部署やいくつかの会社を経由することで、求人情報の精度は落ちてしまいます。
その間に紹介先企業側から「人材が見つかったので、求人の公開を止めてくれ」という連絡が入る自体も、想定されます。
それだけ「一般向けに求人情報を公開する」というのは、手間も時間もかかる方法なのです。
こういった手間やリスクを想像できる方であれば、人材会社側が非公開求人として曖昧な状態で求人情報を保有しておくことが、いかに効率がいいかはおわかりいただけるはずでしょう。
また、非公開求人を中心に取り扱うことで、見込みのある人材に直接求人情報を紹介することが出来る点で、圧倒的に採用速度と求人情報の精度を高めることが可能となります。
とくに、個人プレイで直接利用者に求人情報を届けやすいベンチャー系・外資系運営の転職エージェントであれば、紹介先企業に営業した直後に求人紹介できるため、圧倒的スピード感に期待できます。
転職エージェントやヘッドハンターでは、むしろ「求人情報を公開する意味がわからない」ぐらいに思われており、求人情報が非公開なのは当たり前なのです。
「特別感」を出すため
転職エージェントが「非公開求人」を扱っているのは「特別感」を出すためです。
これはマーケティング戦略の一環です。
ビジネスにおいては「ここだけの話ですが…」と前置きをして、大したことない情報を利用者全員に吹いて回るテクニックは基本です。
非公開求人についても、それと同様の効果をもっております。
冒頭にもお伝えした通り「一部の優良求人や上位職求人」のほぼすべてが非公開であることは、事実です。
それと同時に、非公開にする必要性のない求人まで「非公開求人として扱っている」事実も、否定はできません。
とくに大手転職エージェントであれば、登録ハードルは低い分、経歴のない人材でも登録できてしまいます。
ですので、大したことのない求人も「非公開求人」として、もったいぶって紹介しない方向になってきているわけです。
そういう求人であれば、非公開求人であっても、ちまたの転職サイトにも公開されている…というケースは十分ありえます。
「転職エージェント使えない」「非公開求人は大したことない」と言っているのも、おそらくそういった事情を考えられない残念な利用者でしょう。
もちろん、この記事をしっかり読んでいる読者は、そういう残念な人にはならない心得は出来ているかと思いますので、安心して利用してください。
「非公開求人」の紹介で有利に転職を進めるためには工夫が必要
以上のように、非公開求人にはエージェント・企業側の様々な思惑があり、一概に「すべてが優良求人」とも言い切れません。
ですが、一般公開されている求人には上位職・優良求人はほとんどないが、非公開求人の中には存在する…というのは、紛れもない事実です。
そして、非公開求人が圧倒的にエージェント・企業側のとって都合のいいように使いやすい性質がある以上は、求職者側は限られた選択肢や情報から、自分に有利な転職先を見つけ出すための防衛策が必須になってきます。
具体的には、以下の通り。
- 転職エージェントを複数併用しておき、紹介される求人を比較しておく
- 一般の転職求人サイトも併用しておき、非公開求人との違いを比べておく
- 非公開求人先の情報を独自に入手しておき、社内の状況を事前に確かめておく
- 自分の経歴に合わせた転職エージェントを選ぶ(業界特化、ハイクラス向け、外資系、20代若手向けなど)
また、非公開求人で優先的に優良求人を紹介してもらえるのは「見込みのある人材」になります。
「見込みのある人材」とは、具体的には以下の通り。
- 経歴・職歴・実績・資格が、転職エージェント側の保有している条件と一致している
- 年齢が若く、未経験職に挑戦しやすい立場(既卒・第二新卒の場合)
- 転職意欲が高い(レスポンスが早い、意欲が高い、求人応募に積極的など)
よく勘違いされている方もいるのですが「登録しておくだけで、転職エージェントからサポートしてもらえる!」と思ったら、大間違いです。
むしろ「転職エージェント登録段階から選考は始まっている」という意識がなければ、まともな非公開求人も届かないまま、終わってしまいます。
そういった事情も踏まえながら、転職エージェントでより有利な非公開求人を紹介してもらえるように、意識して活用してみてください。