「自分の会社ではなぜか若手がよく辞めていく…」
「最近の若者はすぐ辞めていき職場に定着しない…」
「若い人ほど頻繁に転職したり離職するように感じる…」
このようにお悩みではありませんか?
昔より「最近の若者はすぐ辞める」と言われていますが、厚生労働省のデータを見る限り、平成初期より若年層の離職率は横ばいで、統計的には「七五三現象」という用語通り、おおよそ中卒7割、高卒5割、大卒3割で3年以内に離職しているとわかります。
全体で見れば、若者が急激に辞めるようになったというよりは、若手の働き方の価値観や会社に求める要素が変わった、また若手のニーズに自社が応えられなくなって離職率が上がったと考えるのが順当でしょう。
最近の若手は「Z世代」と呼ばれ、1990年代後半から2010年代に生まれた世代となります。
このZ世代の働き方に対する価値観としては
- 多様性を大事にする
- 柔軟な働き方を求める
- 環境問題に関心がある(SDGsを学んでいる)
- 未来に対する期待値が低く現実主義
- 競争を避け仲間を大事にする
- ジェンダーレスな価値観
- パラレルキャリアに関心がある
- ひとつの職場に固執しない
- タイムパフォーマンスを重視する
といった特徴が挙げられています。
1987年から2004年ごろに生まれた「ゆとり世代」と比べると、ネガティブな理由で早期退職していたゆとり世代と違い、Z世代は転職に対してポジティブな価値観を抱いている印象があり、いわゆる「退職エントリ」が「カジュアルに退職」と揶揄されることもあります。
一つの要因は、若手社員が求める価値観やキャリア意識の変化です。昔と比べて、若者たちは安定した給与だけではなく、自己成長やワークライフバランスといった要素を重視する傾向があります。これに対して、古い体制や伝統的な組織文化を持つ会社では、若手社員のニーズに対応しきれず、彼らの離職につながることがあります。
また、若手社員が経験やスキルを積むために異業種や新しい分野への転職を選ぶケースも増えています。特にテクノロジー関連の企業やスタートアップ企業では、新たなチャレンジの機会や成長の可能性が若手社員にとって魅力的に映ります。その結果、伝統的な産業や大企業において若手の流出が進んでいるのです。
このような世代間ギャップや企業の人材流出に関する基礎知識を前提に、本記事では若手が辞めていく会社の特徴や問題点、若手の定着率を上げるために有効な取り組み、若手が定着している会社の特徴など、若手が辞めていく会社でキャリアや人事に関して悩んでいる人に向けて、様々な角度の情報をお伝えしていきます。
最近の若手社員の価値観は「働きやすさ>年収・出世」「報酬>やりがい」「友人>仕事で関わる人」
若手社員が辞めていく理由を探る中で、まずは最近の若手社員の仕事に対する価値観についてご紹介していきます。
見出しでご紹介している通り、最近の若手社員は
「働きやすさ>年収・出世」
「報酬>やりがい」
「友人>仕事で関わる人」
…という優先順位や価値観であることを理解しておくことが大事です。
「働きやすさ>年収・出世」
最近の若手社員の価値観として、とくに顕著なのが「働きやすさ>年収・出世」というものです。
「経済成長が横ばい状態の平成時代に育ったので年収が上がるビジョンが見えない」「出世して管理職になって苦労する親世代の姿ばかり見てきた」という条件もあって、年収アップや出世に対して否定的な考え方の若者が多いのです。
少なからず、仕事が一人前にこなせない段階の新卒入社員に関しては、年収・出世よりも働きやすさを重視する若手の方が間違いなく多いと言えるでしょう。
また「働きやすさ」と言っても、人によってその価値観は様々です。
▼若手社員にとっての「働きやすさ」とは?
- 上司や顧客から怒られたり叱られることが少ない
- プライベートの時間を会社の都合で拘束されない
- 過剰な責任を課せられない(→責任のない仕事は?)
- ノルマなどのプレッシャーに追われない
「仕事は辛いもの」「仕事は我慢するもの」という価値観が強かった昭和世代と比べれば、平成世代は「いかにストレスを避けて仕事をするか?=働きやすさ」という考え方が強い傾向にあります。
その背景には「ストレスを排除した生活用品の普及」「我慢して働き続けてうつ病や過労死になる人の増加」により、辛い仕事を我慢して働くことに価値を見い出せない人が増えたことがあると言えるでしょう。
「報酬>やりがい」
「報酬>やりがい」という価値観も、最近の若手社員の考え方の特徴です。
ここでいう「報酬」とは決して給料だけではなく、待遇や将来性などの要素も含みます。
これは以下の著書がわかりやすいですが「報酬が割に合わないと、やりがいを求めて働かされることを搾取だと感じる」という、ビジネス・交渉思考の若者が増えているのです。
このような価値観が生まれた背景として、終身雇用制の崩壊と共に欧米の働き方が取り入れられ、派遣社員やフリーランスなど、様々な雇用形態が生まれたことがあると考えられます。
終身雇用制前提であれば、社員は家族や仲間だという意識が強く、やりがいも「家族のため」と考えれば安心感の高い仕組みでしたが、若手社員は恋愛・結婚にも消極的で自分の時間を大事にする人が多いなど、プライベートに対する価値観も変わってきています。
また、キャリアアップ思考が強くなり、転職を意識したキャリア形成をする若者も増え、若手社員の中では「何かあったら会社は辞めて当たり前」という価値観が当たり前になったことも、若手社員が辞めやすくなった理由だと言えるでしょう。
「友人>仕事で関わる人」
最近の若手社員の価値観としてよく言われているのが「友人>仕事で関わる人」という意識です。
ですので、会社や社員に対しても「友人のように接することができる関係」を求めることが多く、ビジネスライクな付き合いを求める人や、年功序列型の規律立った関係を求める人からすれば、理解しにくい感覚かもしれません。
それも「仕事で共通の目的を達成する同士」というよりは「一緒に遊べる仲間」「趣味や関心の合う友達」を求める傾向が強いため、仕事での人間関係でも共通の趣味や遊びを求める若手社員も少なくはないです。
このような価値観の若手社員が仕事上で付き合う人間と友人感覚を共有できないと、完全に公私を切り分けたがったり、必要以上の仕事をやらないなど、人間関係面が大きく仕事のパフォーマンスに影響を及ぼすこともあります。
背景として、YouTuberなどの登場で有名人やビジネスパーソンが身近な存在となり、本来は一線を置いて付き合うべき相手との人間関係の距離感が必要以上に近づきすぎたことや、自他の境界線が曖昧となり「社会人として自分がどう見られているか?」よりも「自分がどう感じているか?」を重視するようになったことがあるかもしれません。
若手社員が辞めていく会社の特徴は?
最近の若者の価値観を踏まえた上で、次に若手社員が辞めていくような会社の特徴を見ていきましょう。
古い体質の年功序列の会社
若手社員が辞めていく会社は、古い体質の会社でしょう。
▼古い会社の特徴
- 上からの指示・命令に従うだけが仕事だと思ってる会社
- 若手の活躍に否定的で意見を取り入れない・挑戦させない
- 効率化や問題解決に消極的で精神論・根性論ばかり
- 時代に合わせた柔軟な働き方や価値観を取り入れられない
- 飲み会などの無駄なコミュニケーションも仕事のうちだと考えている
このような古い会社の価値観は、最近の若手社員の価値観と相反するものばかりで、居心地が悪く感じてしまうものです。
年寄りの多い会社
古い体質の会社が生まれる原因となる「年寄り」が多い会社も、若手社員が離れていく原因だと考えられます。
また、中でも若者の活躍を拒む「老害」と呼ばれる存在が職場にいると、若手社員はやる気を削がれ挑戦心をなくしてしまい辞めていきます。
▼老害の特徴
- 若者の意見・相談すべてに否定から入る
- 自分自身の経験が絶対だと思っている
- 若者に無条件で尊敬されると勘違いしている
- 仕事においても感情で動く
- 挑戦しない言い訳をする
- 非を認めない・反省する
総じて言えば「自分では動かない上に若者が挑戦することも拒む」という、組織が活性化するためには害悪になりやすい性質を揃えたのが老害の特徴です。
ハラスメント行為が許容されている会社
ハラスメント行為が当たり前に許容されているような会社も、若手社員が離れていく原因です。
▼代表的なハラスメント行為
- 性的な会話を持ち込むセクシャルハラスメント
- 暴力・威圧的な言動で部下を脅すパワーハラスメント
- 無視・職場いじめで精神的に部下を追い詰めるモラルハラスメント
このようなハラスメント対策が叫ばれて久しいですが、中にはハラスメントが何かを理解していないような会社もあり、そのような会社では日常茶飯事にハラスメントが行われていることも珍しくありません。
過剰なノルマ主義の会社
過剰なノルマ主義の会社も、若手社員が離れていく原因のひとつかもしれません。
最近の若者は「働きやすさ>年収・出世」という価値観なので、ノルマを達成して高年収・スピード出世よりかは、ストレスなく働ける労働環境を望むのです。
また、上からの理不尽な指示に対するストレス耐性がなく、受け流したり無視することもできないような真面目な人も多いため、ノルマが達成できないことに過剰な責任感を感じて自分を追い込んでうつ病になる人も少なくはありません。
過剰な責任を負わされたり怒鳴られるような会社
新入社員に過剰な責任を負わせたり、失敗すると怒鳴って人格を否定するような会社も、若手社員が辞めていく会社の特徴です。
上司や先輩が𠮟咤激励のつもりで怒ったとしても、真面目な性格の若手社員は自分が否定されたと感じるため、自信を失くしてしまうのです。また、過剰な責任を負わされるような職場は、失敗した時に怒られる恐怖から、若手社員は伸び伸びと働けないため、中には逃げるように退職してしまう人もいます。
職場の雰囲気が暗くギスギスしている職場
雰囲気が暗くてギスギスしている職場も、若手社員が辞めていく会社の特徴です。
最近の若者の価値観としては、仕事においても「友達感覚」が強いため、気難しい上司よりはフレンドリーな上司の方が好まれます。
また、緊張感のある職場よりは、和気あいあいと仕事が進められる職場の方が好まれるなど、若手社員が求める「職場の雰囲気」や「社員同士の接し方」と価値観がズレている会社は、若手社員が辞めやすいと言えるでしょう。