転職理由でとくに多い理由の一つが上司に対する不満。
とくに上司の仕事の割り振りが下手な場合、部下に過剰な業務が押しつけられることは十分起こり得る事態です。
そして一部の部下に仕事が偏りすぎた結果、不満を抱えて職場から離れていく結果になるわけですね。
ただ、ひとつ皆様に覚えておいて欲しいことがあります。
それは「上司が仕事ができないことは”チャンス”でもある」ということですね。
詳しくは「無能な上司に関する記事」に書いていますのでご覧ください。
関連:上司が無能ならどうする?使えない上司の特徴と対処法について
ネットや若手の間では「上司が使えないで仕事が増えるのであれば転職すればいい」という考えが目立ちますが、正直なところを言えば”転職しても問題が解決しないこともあり得る”というのが実情です。
なぜなら、その考えは「上司や会社の裁量に依存しすぎているから」ですね。
上司が有能で仕事量が減るのであれば、それは「部下があなたである必要もない」とも言い換えられるわけです。極端な話、上司が有能なら部下はアルバイトでも問題なくなってしまうわけですね。
あなたがアルバイトレベルの仕事で満足したいのであれば話は別ですが、多くの方は社員としてより責任感とやり甲斐のある仕事を任せられたいと考えているはずです。
今回はそういった事情も踏まえた上で「上司が仕事が出来ない場合の部下の立ち回り方」についてご紹介していきましょう。
知っておきたい「上司の仕事の範囲」
まず「上司が仕事できなくて困る」と悩まれている方に知っておいて欲しいのが「上司と部下の”仕事”の範囲は異なる」という点ですね。
この点を知っておかなければ、チェーン店のアルバイトで働く人が「本社の奴らは仕事が出来ない!」と言ってるぐらいに、見当違いの愚痴にしかなりません。
ですので、まずは「本当にうちの上司は上司としての仕事が出来ているのか?」を見極める必要があります。そのためには、まず「上司の仕事の範囲」を知っておくことが大事になります。
・上司(中間管理職)の業務範囲
経営陣・上司からの仕事 |
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自分の仕事(部署内) |
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部下への仕事 |
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ざっくりとしたまとめ方ですが、中間管理職は「上からの仕事」「自分自身の仕事」「部下への仕事」の3つを受け持つ必要があるのです。
そして、あらかじめ知っておきたいのは「全部がこなせる完璧な上司はいない」ということですね。もし仮にすべてがこなせるのであれば、出世しています。→上司が無能になる理由
ですので、一番大事になってくるのは「自分の上司がどの部分の仕事ができないで、どういう優先順位・判断基準で仕事しているか?」を見極めることになってきます。
上司の短所を知っておけばフォローも可能になりますし、あるいは上司の優先順位や判断基準を知っておけばわざわざ上司に指示を仰がなくとも、自分自身で判断してこなせる仕事も増えてきます。
「経営陣・上司→部署」の仕事が出来ない上司
中間管理職はまず第一に「会社の経営方針」を理解し、自分の部署に求められている役割を理解する必要があります。自分のチームに求められている役割がわからないまま仕事をしても、最悪の場合すべてが無駄になってしまうおそれがあるからです。
しかし、この「上から求められていることを正確に把握する能力」の欠けている上司は少なくないです。
会社の経営方針が理解できない上司は、ハッキリ言って一番無能だと言ってもいいでしょう。
なぜなら、経営陣からの要望に応えられないのであれば、部下に無駄な仕事を振ってしまうリスクがあるからです。1部署5人体制の企業であれば、5人分+上司分の時間と給料を無駄に使ってしまう結果になり、それは会社としては大きな損失だと言えます。
ただし、この「上からの指示を上司が適切に守れているか?」を部下が判断するのは実に困難です。社風によっては末端の部下まで情報を共有しないことも珍しくなく、部下は「会社や経営者が求めていることもわからないまま、ただ上司の指示に従わなければならない」という状況に陥るからですね。
「自分の業務範囲」がしっかり出来ていない上司
現場目線で考えた場合に「仕事ができない」と上司・部下共に評価される中間管理職の特徴が「自分の業務範囲の仕事」がしっかり出来ていないタイプです。とくに中間管理職上がりたての上司は、自分の業務範囲を把握できていないことすらあり、容量が悪い場合はいつまで経っても気づきません。
そのような上司は、部下目線ではこのように映ります。
- 仕事の優先順位を的確に判断できない
- 部下に上手く仕事を割り振れない
- 部下のミスや力量不足をフォローできない
中間管理職は「自分の受け持つ仕事の範囲」だけをこなしておけばいいわけではありません。部下の失敗やミス、あるいは能力の差をすべて考慮した上で、適切に仕事を割り振る必要があるのです。
それが出来ていなければ「仕事のできない中間管理職」として、上司・部下共に見限られてしまう立場でもあります。
「部下に対して」の仕事が出来ていない上司
多くの部下が「うちの上司は仕事ができない」と感じさせてしまうケースが、部下に対しての仕事がこなせていない上司です。
大前提として、部下が仕事ができないのは当たり前です。
そして部下が勝手に成長して自分の仕事を楽にしてくれるなどと思ってはいけません。
そんな当たり前のことにも気づけず「部下が使えない」「思い通りに動いてくれない」などと愚痴る上司もいますが、それは単に上司の力量不足でしかありません。少なからず、会社には「部下が使えないからオレは悪くない!」という言い訳は通用しません。
そこに気づけずに、いつまで経っても部下頼みの他力本願上司は決して少なくはありません。
そのような上司はいくら自分の業務範囲を完璧にこなせても、部下からすれば「指導放棄」「無責任」「口だけ」という”仕事のできない上司”として評価されます。
給料を支払う立場である経営者や取引先であれば、指示だけして後は寝て待つだけでも問題ないかも知れません。
しかし、中間管理職は会社から給料をもらっている上に、部下まで預かっている責任ある立場です。
会社から預かっている部下をないがしろに扱うなど、無責任の極みと言ってもいいでしょう。
そのような無責任な仕事のできない上司の配下になった場合、いちいち律儀に会社の序列を守る必要はありません。仕事のできない上司には早々に見切りをつけ、他の部署やさらに上の上司とコネをつくっておくなど、仕事のできない上司に依存しない人間関係を築いておくことが大事でしょう。
それも出来ない場合は、転職を考えておきましょう。あなたが能力を最大限に発揮できないのは、仕事のできない上司にも責任があるのです。
仕事のできない上司についていくべきか?
仕事のできない上司に対し部下としてフォローするという立ち回り方は、あくまで上司や会社が正当に仕事を評価してくれる前提があっての話です。
現実的には会社での仕事が正当評価されるなんてことは、まずありません。
仕事においては打算や利害も重要になってきます。
ですので「本当に仕事のできない上司をフォローする必要はあるのか?」を見極めておくことも大事でしょう。
これについては「自分の将来の会社での立ち位置や仕事に対する考え方」にも関わってくる問題ですので、常に考えておくべきです。
「今の上司、会社についていくべきか?」と考えることで、今の会社への理解も深まります。
続けるにしても、辞めるにしても、現状認識は重要です。
まずは「仕事のできない上司」と、その上司を配置する会社の意図を見極めましょう。
人柄や人間性を重視する場合
仕事のできない上司についていくかどうかを考える際に、一番大切になるのは「人柄や人間性」です。
意外かもしれませんが、給料や待遇以上に「上司や経営者の人柄や人間性」の方が続けるか辞めるかの重要な判断基準になるのです。
というのも、転職したところで年収が上がる保証はありませんし、今より悪い職場に就いてしまうリスクがあるからです。
とくに組織規模の小さい会社になるほど、経営者や上司との距離感も近くなってきます。
早い話、仕事のできない上司であっても人望があれば、部下は何もせずとも支えたくなるものなんです。
ただし、これはあくまで会社の経営方針が安定していて、それなりの待遇と給料が保証されていることが大前提です。
いくら人柄や人間性のよい上司や経営者であっても、給料や待遇が悪ければ「ただのお人好し」「夢や理想だけを語っている」状態にもなります。
漫画で言えばワンピースのルフィが「海賊王になる!」「お前を泣かすやつをぶっ飛ばす!」と言っておきながら、悪役に負けて何も出来ないようなもんですね。
そして現実は厳しいもので、ワンピースみたいに正義の海賊団が勝てることはまずありません。
仕事に「人間関係の良さ」「上司や経営者の人柄や人格」を重視している人は、一度ドライに会社の将来性や経営状況を考えてみる時期も必要です。
権力や出世・昇進に期待する場合
仕事において、権力や出世・昇進に意欲的な人物もいることでしょう。
その場合、仕事のできない上司は踏み台として絶好のチャンスでもありますが、立ち回り方を間違えれば嫉妬からの揚げ足取りされる恐れもあります。
会社規模が大きければ他部署への根回しなども可能ですが、組織規模が小さい場合は非常に肩身の狭い立ち位置になります。
とくに日本の企業は終身雇用制度・タテ割り型の風潮が未だに強いですので、完全な成果主義・実力主義で優秀な部下と上司の立場を逆転させるようなことはまずしません。また、組織においては「出る杭は打たれる」という集団心理も存在し、上司をおいて優秀な成果を出した場合に周りから嫉妬をされ、経営者からは警戒され、思うように評価されないリスクもあります。
このように、組織において完全な実力・成果だけで評価されることは非常に難しいことなのです。
ですので、今の会社で仕事のできない上司をフォローしてもメリットがないと感じるのであれば、転職活動も並行しておくといいでしょう。今の職場でやることをやっても無駄だと分かれば、もっと正当評価してくれる転職先を見つければいいだけの話です。
仕事とプライベートのバランスを重視する場合
仕事のできない上司を持つと残業が増える恐れがあります。
仕事のできない上司は根本的に時間の割り振りや、仕事の効率化ができません。
そのため、部下は過剰な残業を任せられるケースもあります。
とくに最近の若者は、出世や功績よりもライフワークバランスを重視する傾向が強めです。そして、仕事も効率重視で残業を嫌う傾向が強いです。
出世欲は強いくせに仕事ができない上司の「残業上等!」の方針には耐えられない方も多いことでしょう。
この場合も素直に転職を考えることをオススメします。
なぜなら、仕事を効率的にこなせばこなすほど、仕事が増えるハメになりかねないからです。
日本の古風な会社では「とにかく仕事は数こなしておけばいい!」という考えもまだまだ強いので、仕事を効率的にこなせばこなせる人ほど、仕事量が増える結果になりがちです。その上、出世や昇進には仕事の効率性はそこまで重要にならないため、不遇の評価になりやすい側面もあります。
関連:なぜ優秀な人ほど突然辞めるのか?仕事の出来る真面目な人から辞めていく職場は自分も辞めた方がいい?
仕事のできない上司の部下になったら「チャンス」だと肝に命じておこう
ネット上では「仕事のできない上司は無能!」という声も大きいですが、私はむしろ「チャンス」だと考えております。
そして、企業の人事もあなたにそれを期待してあえて仕事のできない上司の部署に配置しているのかもしれません。だとすれば、あなたは”会社から試されている”かもしれないわけですので、これはチャンスです。
ですので「仕事のできない上司が使えない…」と悲観的にならず、挑戦心を持って仕事に取り組んでみましょう。そうすれば思う以上の評価は得られずとも、自分の糧となって得られるものが必ずあるはずです。
転職活動と並行してリスク管理をしておこう
仕事のできない上司の下で働くことは、チャンスでもありピンチでもあります。
というのも、組織では部下の手柄を横取りは当たり前、正当に評価されないのも基本です。
もし今の上司の下で必死に働いたとして、見返りが得られる保証は一切ありません。
とくに今は終身雇用制度も崩壊しており、会社のために尽くしておけば報われる時代は終わってます。
ですので、リスクマネジメントとして転職活動も並行しておくといいでしょう。
今の職場の上司をフォローしても一切見返りが得られないような会社であれば、頑張るだけ無駄です。
もっと自分を高く評価してくれる会社で働きましょう。
ただ、いきなり転職しようとしても、経歴が不十分なうちや自己アピールが不十分なうちは自力で転職しようとしても採用されにくいばかりか、下手をすると年収ダウンしてしまったり待遇がさらに悪くなる…なんて失敗にもつながりかねません