仕事を辞めたいと思った時に、多くの人が悩むのが「どうすればいいかわからない…」ということです。
学校では仕事の辞め方を教えてくれないため、退職経験がない人は悩むのは仕方のないことです。また、退職経験がある人でも、今の職場の勤務状況や人間関係次第では責任問題もあるので辞めにくい場合もあります。
当記事では、企業側の事情/法解釈/各種手当や制度/辞める時の心理的な不安/転職市場の状況や人材業界の事情などの多角的な視点も交え、仕事を辞めたいと思っている人が本当に知っておくべき情報を厳選してまとめています。
会社を今すぐに辞めてはいけない!
まず初めにお伝えしておきたいのが「辞めたいと思っても今すぐに辞めてはいけない!」ということです。
理由としては、以下のようなデメリットがあるからです。
▼仕事をすぐ辞めてはいけない理由は?
- 労働法では2週間、雇用契約では約1ヶ月の間は辞められないから
- 有給休暇の消化、失業手当の受給などの社会保障制度を受けられない
- 一度辞めてから転職先を見つけると転職条件を妥協しがちで失敗しやすい
退職届を出したとしても、法律上の決まりとしては最低でも2週間、会社側の規則/契約としては1ヶ月間は辞められないため、すぐに辞めて出社しなくなるのは社会人としては避けたい行動だと言えるでしょう。
また、社会保障制度や転職活動などの「辞めた後」のことを踏まえると、事前の準備なしに仕事を辞めると後悔してしまうことが多いので、すぐに辞めない方が損せずに済みます。
よく「辞めてもどうにかなる」とは言いますが、あくまでそれは多少の損も受け入れられるなら…の話で、なるべく有利に転職活動を進めたいと思うのであれば、在職中に転職先を決めてから辞めた方がいいでしょう。
うつ病寸前なら「休職」するという手も
ただ、例外だと言えるのはブラック企業に入社してしまっていて、うつ病寸前まで無理して働いているケースです。
もし、自分がうつ病寸前だと思うのであれば、心療内科で診断書をとってきて会社側に休職手続きをしてもらい、休養期間を挟んだ上で辞めるか辞めないかを判断するという手もあります。
うつ病の診断が出た場合、最低でも1ヶ月、長くて半年ほどの休職期間が得られるので、まずは休職することから検討してみてください。
また、うつ病の診断書をもらうには心療内科で診断してもらう必要がありますが、厚生労働省の運営する「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」でセルフチェックから最寄りの心療内科の検索まで出来るので確認しておくといいでしょう。
仕事を辞める前に絶対に知っておくべきこと
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円満退職で済まないことを覚悟しておく
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退職に関する手続き/法制度を抑えておく
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辞めると決まったら有給休暇は消化しておきたい
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場合によっては失業手当の支給を検討する
円満退職では済まないことを覚悟しておく
会社を辞めることは、事務手続き通りに進めば辞められるとは言え、人間感情が絡む以上は円満退職で済まないことが非常に多いです。
▼転職活動/退職の際に会社側から受けた妨害の例
- 辞めるために必要のない面談に何度も付き合わされる
- 退職理由が曖昧だと何度も引き留めにあう
- 嫌がらせで退職までの期間の仕事を増やされる
- 社内で裏切り者扱いされることもある(→転職を裏切りと言われたら?)
とくに中堅以上の社員の場合、会社側も手放したくないことが多いでしょうから、勤務経歴が長い人ほど上記のような妨害は念頭に入れておきたいところ。
勤務経歴が短い社員の場合でも、辞めることを許さないブラック企業や、退職に関しての手間が増えることを嫌う上司であれば、上記のような嫌がらせを行ってくるとの報告も多いです。
もちろん、退職したいことを伝えればあっさりと退職届を受理してくれる企業もありますが、企業側がすんなり退職させてくれない時に強硬策を通せる準備は整えておきたいです。
退職に関する手続き/法制度を抑えておく
人間関係面のしがらみを無視して退職手続きを進める際に有効なのが、企業側の退職に関する手続き/退職に関する法律を知っておくことです。
- 退職に関する法的根拠を抑えておく(最低2週間)
- 社内規則/雇用契約を確認しておく(1ヶ月とされることが多い)
- 上記を踏まえた上で退職までの日程を調整するように会社側と交渉
- 会社側に交渉余地がなければ上記の根拠を持ちだして退職届を受理させる
早い話が「法律/雇用契約で○○と決まっており、会社側は退職届を拒否できないはずです」「引き留め交渉は一切受ける気はありませんので退職手続きを進めてください」と言い通し、会社側の言い分を一切聞かない姿勢を貫いておけば、変に情に流されずに済むということです。
この場合、厳密には「退職」ではなく「辞職」として扱われ、労働者側は撤回できない代わりに会社側も受理しなければならなく、どのような都合があっても2週間以内に退職できます。
ただ、これはあくまで強硬的手段で退職する場合の法的根拠の話であって、後述の有給消化から会社側への義理立ても考えると、雇用契約/社内規則で定義されていることの多い「1ヶ月」を目処に辞めるように調整するように交渉しておく方がスマートでしょう。
あくまで「2週間で辞められる」は法的根拠の話であって
出来る限り会社を話で合って穏便に辞めたいところだ
会社側が強引に引き留めてくるんなら
こちらも強引に辞めないといけないってことですね
雇用契約/社内規則に関しては、入社前に合意した書面が渡されているはずですので、それに沿って話を進めていくといいでしょう。また、書面を保存してない場合は会社側が保管している雇用契約書を持ち出させるなどして、感情的にならずに書面上の契約内容に沿って話を進められるようにしておくことが大事になってきます。
辞めると決まったら有給休暇は消化しておきたい
会社を辞めると決めて退職手続きを進める際に、忘れてはならないのは「有給休暇を消化してもいい」ということです。
有給休暇の申請は、会社側は原則として拒むことができませんが、退職に合わせての消化もこれに該当します。
労働者から年次有給休暇の請求があった場合には、原則としてこれを拒めません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、これを他の時期に変更することができます。
出典:厚生労働省
実際、当サイトを経由して転職を成功させた方や筆者の身の回りでも、退職に際して有給休暇を取得している人は非常に多いです。
退職手続に慣れている会社であれば、退職の際に有給休暇の消化を受理してくれることがほとんどなので、遠慮なく有給申請をしておきたいところです。
逆に言えば、退職手続きに不慣れな会社や有給取得に理解のない会社では、退職の際に有給を消化できずにその分の給料が丸々損となるので、事前に会社側に確認した上で退職の日程を調整するといいでしょう。
場合によっては失業給付金の支給を検討する
会社を辞める際、雇用保険に加入していれば自主都合の退職であっても失業給付金を受けとれるため、これも必ず知っておきたいです。
失業給付金は会社を辞めても給料の何割かを収入として得られる国の制度で、ハローワークに申請することで受け取ることが可能です。
ただ、以下の点には注意。
- 転職先が決まっている場合には受け取れない
- 就業意志がない場合は受け取れない(家事手伝いなど)
- 受け取りまでは時間がかかる(書類の用意、ハローワーク側の対応、企業側の審査や手続きなど)
仮に失業給付金を受けとれたとして、転職活動のことを考えると「無職期間が出来てしまう」「収入が落ちてしまう」というデメリットもあるので、受け取るべきかどうかは検討した上で辞めた方がいいでしょう。
失業給付金はやむを得ない事情があって辞めた場合に
再就職先を見つけるための資金ぐらいに考えておきたいな…
収入が落ちることや手続きのめんどくささを考えると
素直に転職先を決めてから辞めた方がいいってことですね…
退職理由をしっかり考えておくとスムーズ
会社を辞めたいと思った時は、退職理由をしっかりと考えておくとスムーズに進みます。
前述の通り、会社側に退職を引き留められた際に退職理由を説明できると交渉しやすいというのと、転職活動の際に前職の退職理由を説明した上で志望動機にもつなげられるという意味で、退職理由は自分の中でハッキリさせておきたいです。
辞めるきっかけはネガティブでも構わない
退職理由を考える際に、非常に多いのが「ネガティブな退職理由はいけない」「悪く思われる理由はいけない」と悩み、企業側への説明で手間取るケースです。
そもそも、ネガティブな理由がなければ退職しない上に、退職する時点で会社側に悪く思われてしまうのは避けられないので、これに関してはとくに悩む必要はないでしょう。
重要なのは「自分自身がしっかりと今の会社を辞める理由を理解しているか?」であり、外向けに説明する理由と自分が本当に辞めたい理由は切り分けて考えておくべきです。
建前でもいいので「前向きな退職理由」を用意しておく
ネガティブな退職理由だけでは転職活動の際にマイナス印象になりやすいので「前向きな退職理由」も用意しておきたいです。
これについては転職活動を通して第三者からカウンセリングを受けないと思いつかないことも多いので、仕事を辞めると決めた段階では用意出来てなくても構いません。
たとえば「上司が嫌いだから辞めた」という理由では、転職活動時に「人間関係面で問題がある人だ…」と警戒されますが、より踏み込んで「上司とこういう部分で考えが合わず、仕事にこのような支障が出るので辞めました」と説明出来れば説得力が上がり、次の会社で求める上司の人物像もわかりやすくなります。
筆者の転職サポートの経験上、しっかりカウンセリングさえすればどのような人物でもネガティブな退職理由でもポジティブな動機につなげられるので、退職段階では気にしなくていいでしょう。
逆に言えば、カウンセリングを受けないでネガティブな退職理由を引きずったままでは転職活動も難航しがちなので、事前に転職エージェントなどでキャリアカウンセリングを受けておきたいところです。
「転職先が決まった」という理由ならスムーズに辞めやすい
何度もお伝えしている通り、退職の際に難航しがちな原因が今の会社側から引き留めにあうことですが、転職先から内定さえもらっておけば心理的にも強気に出られる上、変に建前を用意せずに済むので、出来る限り転職先は決めた上で辞めたいところです。
ただ、それでも以下のような妨害をしてくる会社もあるので注意。
- 転職先をしつこく聞いてくる
- 「そんなんじゃ続かないぞ!」などと脅してくる(→どこ行っても続かないぞと脅された時は?)
- 嫌がらせで過剰に仕事を振ってくる
どの事例も転職先が決まってさえいれば無視していいと言えるレベルの問題なので気にしなくてもいいのですが、人によっては精神的にしんどいと感じることもあるかもしれません。
それでも、転職先とのスケジュール調整さえ進めてしまえば、今の会社も諦めて退職手続きを進めてくれることが多いので、とにもかくにも転職先を決めることを最優先にして退職計画を立てておくといいでしょう。
どうしても辞められないなら「退職代行」の利用を検討する
用意周到に退職/転職を進めたとしても、会社側が退職を引き留めてくるのであれば「退職代行」を活用して、自分の代わりに退職の意志を伝えてもらうという方法もあります。
ただ、ここまでお読みの方であれば、退職代行を使わずに自分自身で交渉した上で辞めた方が、有給/失業給付などの面で損しないとわかってるはずなので、退職代行はあくまで最終手段程度に考えておくといいはずです。
必ず在職中に転職活動を進めて内定を取っておこう
以上のように、会社を辞めたいと思ったなら在職中に転職先から内定をもらった上で辞めるのが、もっともスマートかつスムーズに辞められると言えます。
とはいえ、中には「在職中に転職活動を進めるのは厳しい…」と思われている方もいるはずですので、在職中に少しでも楽に効率よく転職活動を進めていく方法をご紹介していきます。
転職エージェントは必ず活用しておきたい
在職中に転職活動を進めたいなら「転職エージェント」の活用はほぼ必須と言ってもいいでしょう。
転職エージェントは無料で利用でき、プロが転職のサポートをしてくれるサービスです。
▼転職エージェントで受けられるサポート内容
- 自分に合った転職先/求人の紹介
- キャリアカウンセリングによる転職相談
- 履歴書/職務経歴書の添削
- 面接対策
- 転職先との面接スケジュール調整
- 内定後の年収交渉やスケジュール調整
上記のようなサポートを隙間時間に電話面談/メール対応/スマホアプリで進められるため、在職中で忙しい人ほど転職エージェントは役に立つと言えます。
また、転職エージェントを利用した場合、内定が決まって実際に転職するまでの目安は3ヶ月なので、今すぐ辞めたい人でもゴールが見えやすいところもメリットだと言えます。
転職サイトは情報集めや適性診断が便利
転職活動を始める際に、転職求人サイトの登録から始める方も少なくないと思います。
ただ、以下のような理由から転職サイトに頼りきりなのはオススメできません。
- 求人情報だけでは判断できない会社の情報が多い
- スカウト・オファーが来ても多くの人に届いてるので競争倍率が高い
- 登録情報から機械的に求人が届くので経歴に依存しがち(=意外な求人に出会いにくい)
- 適職診断を過信すると自分の適性を見失うこともある
総じて言えば、転職サイトに登録した段階で多くの利用者が求人情報/適性診断の内容をしっかりと参考に出来るレベルではないことばかりなので、転職エージェントでプロに相談した上で基礎的な知識や転職方針を理解した上で転職サイトを併用するといいでしょう。
転職先が決まらないなら今の会社に残る選択も確保しておく
会社を辞めたいと思って転職活動を進める中で、今の職場環境が恵まれていたり、自分の経歴では希望する条件の求人が見つからないなどして、今の会社で働く意欲が戻ってくるケースもあります。
その場合、素直に今の会社に残って働き続けるという選択を受け入れるのもありでしょう。
というよりも、転職活動を通して今の会社に残りたくなる可能性を考慮した上でも、辞めたいと思ってもすぐには辞めないで、辞める準備から始めておいた方がいいというわけです。
また、転職は時期や経歴によって求人の量や質が変わるため、今の会社に何年間か残りつつキャリアを積んでいきながら、優良求人の紹介を待つという選択も考えられます。
いずれにせよ、一度辞めたら取り返しのつかないことが多い以上は、これぐらい慎重に辞める段取りをしておくと後悔せずに済むはずです。
最後に|辞めたいと思ったなら行動は開始しておこう
以上、会社を辞めたいと思った時に知っておくべき/考えておくべきことの紹介でした。
ここまでお読みの方ならおわかりでしょうが、出来る限り損しないように退職から転職まで進めようと考えたら、やるべきこと/知っておくべきことはかなり多いのです。
そのため、途中で転職を諦めてしまったり、あるいは見切り発車で退職してから無職期間を経て、妥協した転職先を選んでしまう人は少なくありません。
もちろん、一度退職してじっくり転職活動を行うのも一つの選択肢ではありますが、退職した後のリスクも考えると、出来る限り在職中に転職先を決めてしまい、スムーズに次につなげておきたいです。
いずれにせよ「辞めたい!」と思った時はすでに退職/転職について動き出すタイミングなのは間違いないので、今回紹介したような知識や情報を参考にして転職活動の計画を練りながら、少しずつ行動を開始していくといいでしょう。
転職したいけど行動できないでいる人は
以下の記事でやるべきことを整理してみてくださいね