「障害者施設の仕事がきつい…辛い…」
「障害者施設を辞めたい…」
障害者施設とは、障害者の方々が生活や就労を支援するために設置された施設です。
障害者施設には、大きく分けて「入所施設」と「通所施設」の2種類があります。
- 入所施設:障害者の方が24時間365日、生活を送ることができる施設です。入所施設では、食事や排泄、入浴などの日常生活の介護や、就労支援、レクリエーションなどのサービスを提供しています。
- 通所施設:障害者の方が日中のみ、施設に通所してサービスを利用する施設です。通所施設では、作業活動、日中活動、集団活動などのサービスを提供しています。
また、実際に勤務する施設の正式名称としては、以下の呼称が一般的です。
- 障害者支援施設(グループホーム、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、自立訓練(職業訓練))
- 児童発達支援センター
- 放課後等デイサービス
- 特別支援学校(肢体不自由、知的障害、自閉症、情緒障害、言語障害、難聴、視覚障害)
- 養護学校
一方で、俗称であったり、運営団体・組織が用いる呼称によっては、
- 障がい者福祉施設
- 障がい者ケア施設
- 障がい者センター
- 障がい者生活支援施設
- 障がい者リハビリテーションセンター
- 障がい者グループホーム
などと呼ばれることもあります。
これらの障害者施設は、障害者の方々が自立した生活を送るために重要な役割を果たしており、社会的価値は高い一方で、福祉職特有の辛さやきつさもあり、辞めたいと悩む人も数多くいます。
そこで当記事では、障害者施設を辞めたいと悩む人に向けて、仕事でとくに辛いと感じる部分から辞めたい時の転職先まで、まとめて知りたい情報をお届けしていきます。
障害者施設勤務の辛い部分やきついと感じる瞬間
障害者施設で働くことは、社会的に貢献できるやりがいのある仕事ですが、同時に厳しい面や辛さも存在します。この項目では、障害者施設で働く人たちが日常的に直面する辛い部分やきついと感じる瞬間について探っていきます。
不規則な勤務体制
障害者福祉施設での仕事は、夜勤や二交代制を含む激務な勤務体制が特徴的です。
まず、夜勤は障害者のケアや緊急時の対応を行うために必要な勤務形態です。夜間は利用者の介護や安全確保が求められるため、職員が24時間体制で施設に常駐する必要があります。夜勤勤務は睡眠不足や生活リズムの乱れといった健康面の負担を伴い、職員の身体的・精神的なストレスが増大する要因となります。
また、二交代制も一般的な勤務形態であり、職員が日中と夜間のシフトを交代で担当します。これにより施設が24時間運営されることで、利用者への支援やケアが継続されます。しかし、二交代制は生活リズムの不安定さを招き、睡眠や食事の時間が乱れることがあります。職員は日中勤務と夜間勤務を切り替えるため、十分な休息を取ることが難しく、体力の低下や疲労感が蓄積されることもあります。
これらの勤務体制によって生じる生活リズムの不安定さは、職員の身体的・精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。睡眠不足や疲労は業務の遂行に支障をきたし、集中力や判断力の低下を引き起こすこともあります。また、生活のリズムが不規則になることで、職員自身の生活の充実度やプライベートな時間の確保も困難になるかもしれません。
理想と現実のギャップに苛まれる
障害者施設に就職した動機として、
「過去に障害者と関わった原体験がきっかけでその道を志した」
「障害者の方々のために貢献できる立派な職業だから」
といった理想や理念を抱いている場合、障害者施設の過酷な現実にギャップを感じることがあります。
たとえば、平気で施設利用者に差別的な言動を行う上司や先輩の存在であったり、施設利用者の家族からの過剰な要求やクレームに心が痛むといった事態です。
施設利用者とのコミュニケーションの難しさ
障害者福祉施設で働く職員にとって、施設利用者とのコミュニケーションは重要な課題です。障害の種類や程度によって、利用者のコミュニケーション能力や特性は異なるため、職員はそれぞれの利用者に適切な対応を行う必要があります。
一つの課題は、言語障害を抱える利用者とのコミュニケーションです。一部の利用者は言葉でのコミュニケーションが困難であり、代替手段や非言語的なコミュニケーション方法が求められます。職員は身振りや表情、視覚的な手がかりなどを活用しながら、利用者との意思疎通を図る必要があります。
また、認知機能の低下がある利用者とのコミュニケーションも難しい場合があります。記憶力や判断力の低下によって、職員が伝えた情報を理解し続けることが困難になることがあります。職員は繰り返し説明したり、分かりやすい言葉や手がかりを使って情報を伝える工夫が必要です。
さらに、行動や感情の制御が難しい利用者とのコミュニケーションも挑戦的な課題です。一部の利用者は自己表現や感情のコントロールが困難であり、怒りや不安といった感情を適切に表現することができません。職員は利用者の気持ちを読み取りながら、適切なサポートやアプローチを行う必要があります。
以上のように、施設利用者とのコミュニケーションは多様な課題を伴います。職員は個別の利用者のニーズや特性に敏感に対応し、コミュニケーションの障壁を乗り越える努力が求められます。
閉鎖的な職場での人間関係に悩まされる
職場での人間関係のストレスはどのような職種や会社でもあるものですが、障害者施設の場合、閉鎖的な社内環境に起因する問題が発生しやすいです。
障害者福祉施設での職場は、閉鎖的な雰囲気や独特の人間関係が存在することがあります。その中で、以下のような悩みや問題が生じることがあります。
- 施設利用者の陰口や悪口: 職場内での利用者に対する陰口や悪口が広がることがあります。これは、ストレスや疲労からくる発言や、利用者に対する理解不足から生じる場合もあります。しかし、それは利用者の尊厳を傷つける行為であり、職員同士の信頼関係を損なうものです。
- 新人イビリ: 新しく入ってきた職員へのイジメや嫌がらせが行われることがあります。これは閉鎖的な職場環境や上下関係の強さから生じるものであり、特にヒエラルキーの上位に立つ職員が新人をいじめることがあります。これはチームワークや職場の雰囲気に悪影響を与えます。
- 立場の違いによる確執やいざこざ: 職場内には施設長や看護師など、異なる立場の職員が存在します。それぞれが自身の職務や責任を果たすために行動する中で、意見の対立や確執が生じることがあります。これは職場全体の雰囲気や協調性に影響を与える可能性があります。
これらの問題は、閉鎖的な職場文化や上下関係の強さ、コミュニケーション不足などが要因となって生じる場合があります。職場内の人間関係が悪化すると、ストレスや不満がたまり、働く意欲や職場満足度が低下する可能性があります。
倫理観に欠けた職員の言動や職場環境に心が病む
障害者福祉施設で働く職員には、過酷な環境で働くうちに倫理観が欠けていくのか、時に信じられない言動を行う場合があります。
たとえば、施設利用者である障害者を見下し差別するような言動を平然と行うといった行為です。これは障害者福祉施設とは名ばかりの悲惨な職場環境です。
「障害者を見下すためにここに入ったの?」
「障害者はモノと思って仕事しないと長く続かないよ?」
私が直面した障害者差別は、職員たちの陰口や冷たい言葉でした。驚くべきことに、彼らは障害者を見下すために施設に入ったのではないかと私に向かって言い放ちました。私はその非難に反論しましたが、彼らは冷笑的な態度で「障害者はモノと思って仕事しないと精神病む」とまで言い放つのです。
末期状態の職場環境では施設利用者の虐待につながる事例も…
しかし、これはまだ序の口です。
最悪の場合、障害者の耳が聞こえないことをいいことに、罵声を浴びせたり、粗暴な態度で接したりする職員も存在します。さらに、職場内でも障害者に対する悪口が絶え間なく飛び交い、私は正気を保つのが難しくなりました。
こんな異常な職員たちが福祉施設で働いている現実に直面すると、私たちの心は病んでいきます。障害者の尊厳を守るべき場でありながら、そこには人間性の欠落と人権の軽視が蔓延しているのです。
一般的に、閉鎖的な環境や狭い人間関係の中で人としての尊厳や自由が奪われるような生活が続くと、人はその鬱憤や加虐性を弱い者に向けがちです。
たとえば、恋人同士ではDV(ドメスティックバイオレンス)に発展したり、周りから支援や理解が得られない家庭環境のストレスから子供への虐待につながったり、歴史的に見れば共産主義国や社会主義国での大量虐殺など、その例は枚挙にいとまがありません。
その最たる例は、戦後最大の殺人事件となった、あの「相模原障害者施設殺傷事件」という痛ましい事件でしょう。
相模原障害者施設殺傷事件とは?
相模原障害者施設殺傷事件は、2016年(平成28年)7月26日未明、神奈川県相模原市緑区千木良476番地にある、神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」に、犯行当時26歳の元施設職員の男Aが侵入し刃物で19人を刺殺、26人に重軽傷を負わせた大量殺人事件である。第二次世界大戦後の日本で発生した殺人事件としては犠牲者の数が最も多く、戦後最悪の大量殺人事件として日本社会に衝撃を与えた。
この例は極端であるとしても、日夜、ニュースになる福祉職従事者の利用者虐待の報道などを踏まえると、こういったストレス解消のための虐待行為が障害者施設で密かに行われている可能性はないとは言い切れません。
障害者福祉施設は、利用者の生活支援や安全な環境の提供を目的としています。
しかし、職員たちが過酷な労働条件やストレスにさらされ、精神的な疲弊を抱えている場合、その負の影響が施設利用者にも及ぶことがあります。
職員たちが心身の疲弊を抱えると、利用者との適切なコミュニケーションや配慮が行われなくなります。倫理観の欠如やストレスのはけ口として、利用者への暴力や虐待行為が起こることもあります。
これらの状況に直面すると、私たちは精神的な苦痛を抱えることになります。自分の倫理観とのギャップ、理念との衝突によって心が傷つき、心の健康を脅かされるのです。
障害者福祉施設で働く職員たちの中には、倫理観の欠如や差別的な態度を持つ人々が存在していることを知ると、職場での心の健康を守ることが非常に困難であると感じるでしょう。このような状況下で働くことは、私たちが抱える重い悲壮な現実なのです。
障害者支援員の将来性は?無理に働き続けた末路はどうなる?
辛いと感じる仕事を辞めるかどうかを判断するポイントに「その仕事の将来性は?」「将来、高い年収や安定した働き方が実現できるか?」といった要素もあります。
無理に向いてない仕事で働き続けてもしんどい状態が続きますし、たとえ高年収の仕事や世間体のいい仕事でも、精神的に安定して働き続けられるかどうかは、別に考えなければなりません。
また、昨今では内閣府の提唱する「人材の流動性」が示すように「転職が当たり前のキャリア」の時代となっています。
そのため、自分の所属する業界の将来性の高さや、働くことで身についたスキルや経歴が転職市場でも評価されるかも知っておく必要があります。
介護職自体の需要は高いが平均年収や労働環境はワースト状態
障害者支援員の仕事は、現代社会において高い需要があります。しかし、その一方で、平均年収や労働環境は非常に厳しい状況にあります。多くの支援員は長時間労働や過重な業務負担に直面し、身体的・精神的な負荷がかかります。これは介護職全体の問題であり、改善が求められています。
障害者支援員の将来性は、需要の高さから一定の安定性を持っていますが、労働環境や給与・待遇面の課題が依然として存在します。支援員が無理に働き続けた場合、身体的・精神的な健康への影響や働く意欲の低下などの末路が待ち受ける可能性があります。より良い労働条件や働き方の改善が求められ、施設の運営や社会全体の支援体制の充実が重要です。
安定性や給与・待遇面は施設の財源や運営状況による
障害者支援員の安定性や給与・待遇面は、所属する施設の財源や運営状況によって大きく左右されます。一部の施設では賃金や福利厚生が充実している場合もありますが、多くの場合は資金不足や予算制約により、給与や待遇が十分でない現状があります。そのため、支援員自身が経済的な不安や不満を抱えることも少なくありません。
半年間の休養期間
私はあの事件を契機に、職場を辞めることにしました。
実家暮らしなので生活には困りませんでしたし、今まで忙しかった分、これからについてしっかり考えてみるために、半年間思い切って休むことにしました。
あの事件のその後の動向を見守りながら、改めて障害者と社会の在り方について、自分なりに考えをまとめて、今後どう生きていくか考えるための、有意義な休養期間となりました。
転職エージェントで込み入った相談をしました
その後、私は接客業でアルバイトする傍らで、転職エージェントという転職支援サービスで転職先を紹介してもらうことにしました。
最初はハローワークや大手求人サイトで職を探していたのですが、前職での不信感から、どこの求人も信用できない状態に陥っていたからです。
そこで転職エージェントというサービスを知って、思い切って専門家に私の心情を話し、自分に向いた仕事を紹介してもらおうと考えました。
転職エージェントではプライバシーにも配慮されていますので、前職の不満や事情なども落ち着いて話すことができ、担当の方も私の意図をくんだ上で仕事先を紹介してもらえました。もともと、障害者支援にも力を入れている転職支援サービスでしたので、私の社会と障害者の在り方についての考えに共感してもらえ、真摯な対応をして頂けました。
障害者支援に関わる仕事に転職しました
その後、何度も相談やアドバイスを経て、私は障害者の社会支援に関する民間事業から内定を頂くことになりました。
決め手は前職での過酷な職務経験と、そこで培った障害者と社会の在り方についての持論とのことでした。
勤め先の民間事業も、障害者の社会支援の理想と現実に常に悩み続けて挑戦している会社で、まさに「企業と同じ悩みを持つ人材」として、私は高く評価して頂けました。
業務内容は多岐に渡り、障害者に就職支援の提案や、障害者施設の業務改善に向けた事業アイデアなど、今まで障害者の社会支援について向き合ってきた私だからこそ、続けられる仕事だと自負しています。
もっとも、障害者自身と触れ合う機会が少なくなってしまったため、たまにボランティア活動などに参加したり、あるいはボランティア自体を企画・提案して、決して事業側の独善で終わらないようにも勤めています。
障害者福祉施設の異常な環境で働いている方へ
最後に、転職を成功させた私から、同じ悩みを持っている方へアドバイスです。
あの事件にも代表されるように「障害者にも社会支援を!」と言っていても、理想と現実のギャップは著しいものがあり、現場では過酷な労働に精神を病む人も多いのが実情です。
残念ながら、理想や想いだけでは、障害者を助けることは難しいのです。
何も障害者と関わる現場で仕事し続けるだけが、すべてではありません。
少しずつ、社会の仕組みを変えたり、障害者でも活躍できる機会を作っていく道もあるのです。
また、障害者福祉施設のような過酷な現場で働き、障害者が嫌いになってしまっている人も、あの事件の加害者のような過激な発想になる前に、一度他の仕事に就くことを考えてみてください。
日本では健常者でも格差が進んでいますが、やはり理想だけでは平等は実現できませんし、その理想の下には、過酷で残酷な現場があるんです。
あの事件のような悲しい出来事を二度と起こさないためにも、自分の能力を活かして社会貢献できる、自分に合った仕事を探しましょう。
転職サービスを利用してプロのサポートを受ける
以上のように、「障害者施設を辞めたい」という悩みに対し、一概に「これをすべき」という正解はなく、それぞれの状況に合わせて最適な行動を取捨選択する必要があります。つまり、多くのことを考えて計画的に行動する必要があるのです。
それを在職中の考える余裕がないうちに行うのは、かなりハードだと言えるです。
そこでオススメしたいのが、転職サービスでプロに相談してサポートを得るという方法です。