私が現職時代によく相談されたケースが「技術職(現場仕事)のせいか、思うように会社で評価されない」という悩みです。企業組織の性質上、たしかに技術者・エンジニアが評価されにくいと感じてしまうところはあることでしょう。
かのMicrosoft創業者「ビル・ゲイツ」も「エンジニア(オタク)は大切に」というスピーチを学生相手の講演会でしたことがあることは有名ですね。
オタクには親切に。
あなたたちは、いつか、彼らの下で働くことになるでしょうからby ビル・ゲイツ(Microsoft創業者)
これは逆説的に言えば「エンジニア(オタク)は不当な扱いをされやすい」ということでもあります。
ところで日本といえば技術大国としても知られ、第二次大戦前から戦後の高度経済成長まで、高度な技術力が国の成長を支えてきた歴史を持ちます。しかし、バブル崩壊後の経済成長の停滞に伴い、技術者ならびに現場で働く人たちが不当に低く評価されやすくなってきた側面は見逃せないでしょう。
とくに顕著な例が「派遣社員の使い捨て」「海外工場進出による人件費のコストカット」など、過度な利益重視で人材育成・技術力向上の視点を欠いた製造業者の経営方針と言えます。
このように、エンジニアや技術者にとっては世知辛い世の中になってきている我が日本ですが、技術者やエンジニアを大事にしている企業も少なくはありません。大切なのは「本当に今の自分の会社は技術者を大事にしているのか?」と見極めることです。
今回は日本の企業組織体質などを踏まえた上で、エンジニア・技術職の方が出世、あるいはスキルアップしてこの先の日本社会を生き抜くための働き方について考えていきます。
大卒と高卒(高専・専門)出身の格差を知っておこう
エンジニア・技術者の方に再確認していただきたいのが「学歴による待遇・昇進の差は当たり前に存在する」ということです。これについては、学費を払って努力した大学組が評価されるのは当然のことなので、仕方のないことでしょう。
現場とデスクワーカーの差は大きい
多くの組織では「現場とデスクワーカーの差」というのは、発生してしまうものです。とくに大卒入社組は将来の管理職ポジションとして、現場仕事はほどほどでも出世していくことができます。ですので、中には「現場の苦労なんて全く知らないで、指示や要求だけはいっちょ前」なんていう高学歴デスクワーカーも一定数現れます。
これについては、歴史的に見ても前例は数え切れないほどあります。
「前線で戦う兵士の苦労も知らない大将や司令官」
「司令官の苦悩を知らないで、好き勝手言ってくる政府」
「到底無理な予算で無理難題を押し付けてくる経営陣」
いつの時代も「現場の苦労を知らずに好き勝手言ってくる上層部」という構図は、変わらないものなのです。
そして悲しいかな、予算や経理の決定権を持つデスクワーカーは、場合によっては現場で働く技術者(エンジニア)の手柄を横取りし、自分だけ高い評価を得ることもできてしまう立場にあります。
とくに今の日本では、複雑な法律や社内規則、あるいはお金に関するルールに加え「派遣労働法」による人材使い捨てが横行し、モラルのない経営者やデスクワーカーが現場で働く人間を不当搾取しやすい構造になってしまっています。
そういった面もしっかり踏まえた上で「自分の会社は本当に現場の人間や技術者を大事にしているのか?」を見極めていくことが、今後も人手不足で厳しくなっていく日本の労働環境で生き抜くためには必要なことだと言えるでしょう。
技術力だけでは評価されにくい理不尽さ
日本人はオタク気質(職人気質)が強い傾向があり、それは伝統工芸品から戦前の高い技術力が証明していると言えます。
しかし、バブル崩壊後の「利益最優先」という経営方針の会社が増えてからというもの、技術者や現場で働く人々を軽視する会社が増えた側面は否定できないでしょう。過度な利益重視の会社が増えていく中で「ブラック企業」や「ワーキングプア」のような社会問題が生まれた経緯も見逃せません。
あくまで、儲けは”手段”であって”目的”ではないのです。
もちろん、営利企業である以上は利益を出してこそですが、あくまで利益は「技術力を活かした良い製品」や「高い技術力がもたらすより豊かな生活」をサービスとして提供して初めて、企業に還元される必要があるものなのです。
技術者・専門家の扱いの違いのわかる「原発事故」の例
この「技術者・専門家軽視の利益重視の企業」の例は、2011年の東北大震災の原発事故の例がわかりやすいでしょう。
東京電力は利益を重視した結果、福島原子力発電所の安全性を確保せずに事業計画を進めていったことが、多くの専門家・有識者により指摘されています。
国会事故調は、東電は従来の想定を超えた地震・津波が襲来する可能性、そして原発がそれに耐えられない構造であることを、何度も指摘されていたにも関わらず、これを軽視し、十分な対策をとらなかったことが事故の根本原因だとしている。
そして、当時の専門家や有識者の指摘が軽視された結果、あの原発事故が国民の安全を脅かしたことは誰もが記憶に残っていることでしょう。その責任から逃れるために東京電力が杜撰な対応をし、今も多くの国民を苦しめている事実も決して我々が忘れてはいけない「歴史の過ち」のひとつなのです。
一方で女川原子力発電所は、当時のエンジニアの研究や主張を受け入れ、コストをかけてまで「安全第一」という経営方針を選び、福島原子力発電所のような惨状を免れました。
平井弥之助氏の勇気ある行動が解説されている。女川原子力発電所は福島第1原子力発電所よりも後の時代に建設された。それにしても、設計は今から40年ほど前のことである。今から40年前の時点で、東北電力の人々は貞観地震で発生した津波のことを調べていた。平井氏は他の人達が想定した津波の高さよりも高い津波に備えることを強く主張し、自分の意見を実現させた。その結果、女川では主要施設が標高14.8mに建設された。
この2つの原発に対する経営方針の違いは、多くのエンジニア・技術者・専門家の方は思うところはあるのではないでしょうか。決して「利益重視」が正解ではないとわかってくることでしょう。
技術者(エンジニア)が出世コースに乗るためには?
話がややそれました。しかし、これは技術者・エンジニア・専門家が「出世」を考える上で無視できない要素でしたので、あえて深く言及させていただきました。
紹介した事例からもわかります通り、技術職の組織における役割は「利益を追求する」ことではありません。そんなものは、営業や企画・販売などのデスクワーカーや文系人間、口だけ野郎どもが担うべき業務範囲です。
技術者・エンジニア・専門家にとっての「出世」とは、昇給・昇進などの名誉や欲のためにあるのではなく「より高度な技術や開発に携わり、社会に価値をもたらすための”手段”」だと言えるのです。
人材育成の出来る管理職的立ち位置を目指す
ただし、現実的に考えると「より高度な技術や開発に関われる立場」になれるのは、一部の技術者や専門家に限られます。それも大学での研究室や博士号の所持者などの高度な知識を備えた者に対し、十分な開発環境や予算などが準備できる企業に限られてきます。
ですので、多くの場合は技術や専門知識はほどほどに「後進を育成できる」「部下をまとめれチームでの生産体制を担える」と言った、管理職を目指すのが現実的な手段となることでしょう。
会社で伸び悩んでいる方はまずは「主任」「工場長」など、現場をまとめる立ち位置に求められる能力を身に着けていくことが大事です。
専門性を磨いて技術力をさらに磨く
一方で、技術職・専門職にはより仕事の精度や専門性を深く追求していくことに価値を見出していくタイプの方も少なくはありません。
カンタンに言えば”オタクの中のオタク”という感じで、対人関係や利益などは二の次のタイプの方ですね。残念ながら、そのようなオタクタイプはあまり組織の仕事では評価されにくい傾向があります。
なぜ、そのような専門的なオタクタイプの技術者が不遇な扱いを受けるかというと、それは「周囲からの理解を得られない」「組織の基準では評価されにくい」からです。
歴史的に見て、アインシュタインやガリレオ・ガリレイ、あるいはトーマス・エジソンのような、天才的な科学者・開発者の成功までの経緯を見るとわかりやすいかもしれません。これらの偉人に共通することは「若いうちには周囲の理解を得られなかった挫折がある」ということです。
多くの組織や凡人は「新しいアイデアや将来的に莫大な利益をもたらす大発明」よりも「目の前の仕事をほどほどにこなししっかり利益につながる仕事」を求めます。現実問題、将来的に大きな結果につながるがどうかは「やってみなければわからない」わけですので、会社側からすればよっぽどの信頼や実績のない人には任せたくない分野でもあります。
そして多くの人の場合は「周囲から理解を得られるように業務内容を変える」という選択肢をとってしまうものです。なぜなら、そっちの方が”楽”だから。確実に会社側から評価を得たいのであれば「今の会社から求められている能力」を身につければいいだけです。
ですが、決して会社の求めるものが、社会やあなた自身にとって正しい基準である保証はありません。「出る杭は打たれる」という言葉もありますが、時によっては「出過ぎた杭は打たれない」結果にもつながります。
もしあなたがより専門性や技術力を磨き上げていきたいのであれば、あえて別の道を突き進むのもありでしょう。ただし、その場合は今勤めている会社がしっかりと自分の専門性や技術力を活かしてくれる環境を用意できるかどうかは見極めておくべきです。もし、自分の進みたい道を用意できない会社であれば、転職を考えておくべきでしょう。
今の会社で出世できないなら転職も考慮しておこう
今の会社で出世が見込めない場合は、転職活動をしておくことが鉄則です。転職活動は「今の自分の社会的価値を客観的に知る」ための前向きな行為です。転職活動で今の自分の経歴や実績が不十分だと感じることで今の仕事にも前向きになれますし、あるいはよりよい職場と出会える可能性もあります。
今の会社で伸び悩み続けるより、前向きに転職を考えたほうが良い結果になることは想像に難くない事でしょう。
とくに前述の通り、日本では「技術者を大事にしない利益重視の会社」と「技術者を大事にし、社会貢献や価値提供を重視する会社」と社風も別れますので、今後より長く自己実現を達成できる会社で働くためにも、会社選びは非常に重要です。
「会社を辞めてはいけない」「今の会社で出世するしかない」という狭い視野で考えるのではなく「自分の実現したいことができる会社はないのか?あったとして転職できる能力や実績は十分か?」と前向きに考えていくことが、転職活動の真の目的なのです。
技術力と専門性を活かしやすい企業・職場を意識しよう
エンジニアの方が転職される場合は、技術力と専門性を活かしやすい社風の企業への転職を真っ先に意識するべきでしょう。中途半端に給料や待遇にばかりを目を向けた場合、自分の能力や適性を活かせない職場に就いてしまい、不当評価されるリスクが高まります。
営業職や販売職などの文系出身者の多い職種でしたら、年収交渉なども重要な要素になりますが、理系出身のエンジニアの場合は「何よりも技術や専門性」が一番重要な要素となります。
派遣社員という雇用形態も視野に入れておこう
最近では多様な働き方が増えてきており、とくに技術や専門性の必要なエンジニアは派遣形態で現場仕事に特化する働き方を選ぶ方も増えてきています。
とくに「旧特定派遣社員(現在は廃止)」の対象となっていた職種はエンジニアとの関連性も高く、特定派遣社員であれば正社員と変わらない待遇を受けられる会社もありました。
旧特定派遣の対象職でとくにエンジニアに関わりの深いもの
- ソフトウェア開発
- 機械設計
- 事務用機器操作
- ファイリング
- 調査
- 建築設備運転・点検・整備
- 研究開発
- 事業の実施体制等の企画・立案
- セールスエンジニアリングの営業
今は「特定派遣社員」は廃止されてはいるものの、平性30年9月までは特例措置で許可されています。まだまだ問題の多い派遣労働法と派遣社員の雇用形態ではありますが、前向きに導入している会社も少なくない事実は忘れてはいけません。
とくに製造業・エンジニア職であれば40年以上の歴史を持つ「メイテック」や世界最大の人材サービス会社アデコの小会社「VDN」などの特定労働者派遣会社も多数存在し、派遣社員として専門性やスキルを極める働き方も前向きな選択肢だと受け入れられています。
「派遣社員は安定していない…」と言った一義的な物の見方は将来の選択肢を狭める結果にもなります。今後の先行きの見えない日本の雇用情勢で生き抜くためには、柔軟に派遣社員という選択肢を取り入れる姿勢大事になってくることでしょう。
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