「即戦力求む!」
「即戦力募集!」
「即戦力の転職!」
このように、転職・中途採用においては「即戦力」という言葉が使われます。
ですが、少し冷静に考えれば「どんなに優秀な人材でも、転職してすぐ”即戦力”になるのは難しい」とわかります。
もし読者が「自分は転職しても即戦力になれる気がしない…」とお悩みでしたら、それは当たり前のことです。
そして、そこに気づけるということは、実は「慎重に自分に合った転職先を選べる能力がある」ということでもあります。
ですので、転職を考えていて「即戦力になるのは無理かも…」と悩んでいる方ほど、最後まで読んでみてください。
どんなに優秀な人材でも”即戦力”になるのは無理
まず、読者にしかと覚えておいてほしいことは「どんなに優秀な人材であっても”即戦力”になるのは無理」ということです。
会社には、独自のルールや社風がある上に、人間関係・対人関係に関するしがらみもあります。
ですので、どんなに前の職場で目覚ましい功績を上げていたとしても、転職先で即戦力になれるとは限りません。
人事もそれはわかっていますので、あくまで「1日でも早く即戦力になってくれるようなやる気やポテンシャルのある人材が欲しい」程度に受け取っておくと、認識を間違わずに済むでしょう。
企業の採用募集は「理想」であることが多いと知っておこう
「即戦力」という文言に関わらず、企業側の募集条件は「理想」が非常に多いです。
企業側の人事もしょせんは”人”なので、中途採用で求める人物像を高望みしがちなのです。
社会経験のない新卒採用ですら、
「即戦力」
「コミュニケーション能力の高い人材」
「自分の頭で考えて、会社を改革できる人材」
…と高望みしていますが、これは冷静に考えると「自社にそんなにスペシャルな人材もいないのに、新卒・中途採用者に高望みするな!」とツッコミたくなる求人もあったりします。
ですので、転職活動の際に見極めておきたいのは、
- 募集の文言で求めている人物像は、実際はどれぐらいなのか?
- 人事側が中途採用者に求めている条件の「理想と現実」をしっかり分けて考えているか?
…など、求職者側にも「人事側の力量・経験不足を見抜く能力」が求められます。
そういう意味で「即戦力なんて無理でしょ…」と気づいている時点で、その能力が読者にはあると言えます。
たとえば、企業側が本気で「入社1日目から即戦力として活躍しろ!」などと言い出したら、その会社に入社してもブラックな働き方を強要させられる可能性が高いので、避けておくほうが無難です。
逆に面接で具体的な業務内容や将来の人事の方向性などを語ってくれれば、言うほど「即戦力」を中途採用者に求めていない可能性もあります。
当サイトでも「転職したばかりだけど思ってたよりもつらくて辞めたい…」という方も訪れていますが、その多くは「事前の確認不足」が原因です。
転職活動では「事前にしっかり条件を確認しておく」というのが鉄則ですので、即戦力という表面上の言葉にとらわれない慎重さを大事にしてください。
即戦力を求めている企業に転職するのが不安なら?
もし、読者の方が転職を考えていて「即戦力を求められすぎても困る…」と不安なのでしたら、以下のようなポイントを事前に面接で聞き出しておくといいでしょう。
企業側の「採用意図」を聞き出しておこう
転職活動で中途採用枠で入社するのであれば、まずは「企業側の採用意図」を聞き出しておくと、間違いのない転職が出来るはずです。
中途採用枠と言っても、色々なパターンがあります。
中途採用の企業側の採用意図の例
この中で即戦力が求められるケースは、
「抜けた人員の代わりが欲しい(前任者と比較されやすい)」
「慢性的に人手不足で常に募集をしている(人材教育する余裕がない)」
…でしょう。
ですので、即戦力を求めている企業に対しては、こちらも「なぜ、即戦力が必要なのか?」と事前に聞いておき、企業側の採用意図をしっかり知っておくといいでしょう。
「即戦力」が実際どれぐらいの能力を求められているか聞き出しておこう
中途採用枠で転職する場合、実際の業務内容や雇用条件を突き詰めておくと、ミスマッチ採用が防げます。
「即戦力」と一言で言っても、企業側の求めている「即戦力」と求職者が想像している「即戦力」は、必ずと言っていいほどギャップがあります。
そして、面接でそのギャップを事前に埋め合わせられる優秀な面接官が人事をしているとも限りません。
たとえば、営業の募集をしていたとして、求職者側が「前の職場と同じような仕事でしょ…」と思って採用されたら、今までとまったく違う客層・商品を扱うためまったく通用しなかった…ということも十分ありえます。
そういう意味でも「即戦力なんて無理でしょ…」と気づいている方は、事前にミスマッチ採用を防ぐことが出来るわけですので、面接で出来る限り質問しておき「この会社の求めている”即戦力”にはなれない」と判断したら、内定を辞退することも立派な防衛策です。
会社の「社風」を知っておき、なじめるかどうか判断しておこう
会社には通常「社風」と呼ばれる、会社の雰囲気やノリ、あるいは考え方や社員の属性が存在します。
社風が違う会社に入社すると、同じ職種・業種であっても、今までのやり方がまったく通用しない可能性も十分ありえます。
中途採用者が意識したい会社の社風の例
- 自発的に仕事を取る・勉強する社員同士の競争が激しい社風
- チームワーク重視で職場内での情報共有を徹底している社風
- 上司が面倒見がよく、長い視野で人材育成を行う社風
- 会社の運営期間が長く、社内マニュアルが熟成しており、ある程度は自分で調べて学べる社風
以上のように「社員が自発的に伸びていく環境か?」「社員教育をしっかり行っている会社か?」という要素でも、即戦力に求めている要素は変わってくるので、事前に社風も調べておくといいでしょう。
過去の中途採用実績も聞いておくこと
中途採用者にどれぐらいの即戦力性を求めているかを判断するためには、応募先の過去の中途採用実績を聞いておくのが一番でしょう。
中途採用の前例や実績がまったくない会社の場合、読者が想像している通り「即戦力を求めすぎている」ことも十分ありえるので、注意が必要です。
逆に人事が経験豊富で、会社全体で中途採用実績もあれば、企業側も中途採用者のノウハウが蓄積されているはずですので、あまりに求められ過ぎる事態は避けられるはずでしょう。
これは面接の際に「過去の中途採用者はどのようなご活躍をされているのでしょうか?」とでも聞いておけば探り出せるので、必ず聞いておきたいです。
採用先の「人材教育方針」も聞き出しておくこと
即戦力を求めている企業に振り回されないためには、採用先の「人材教育方針」も聞いておくと、ミスマッチ採用を防げるはずです。
極論、中途採用に関しては、
- 将来、企業側としては自分にどんな人材になって欲しいか?
- 自分はその企業の仕事を通して、どんな人材に成長したいか?
…この2つがマッチすれば、企業と求職者側の利害は一致します。
とくに20~30代の人材採用は「将来性」「管理職候補」という長期的視野で採用されるわけですから、両者とも先を見据えて長く働けることの方が「即戦力になる」ことよりも、よっぽど重要です。
ちなみに筆者はリクナビNEXTの「グッドポイント診断」の性格診断で「悠然性」が第一位なのですが、これも「即戦力にはなれない性格」だと言えます。
リクナビNEXT・グッドポイント診断に関する記事
何が言いたいのかと言うと「必ずしも即戦力になれる人材だけがすべてではない」ということですので、自分の強みを自覚して、潔く「即戦力になれないかもしれませんが、我慢強さや長く働く粘り強さには自信があります」と「即戦力になれない」と自白してしまうのもありだと言うことです。
中途者に即戦力を求めてくる企業を避けて転職するには?
以上のように「即戦力を求めてくる会社は、慎重に見極めておいた方がいい」というのは、紛れもない事実です。
ただ、現代の日本は余裕のない会社も多いので、転職活動の方法を間違えれば、文字通り「中途採用者に経験者並みの即戦力性を求めている会社」に採用されてしまうリスクもあります。
ですので、即戦力を求めてくる会社を避け、長い視野で働ける会社を見つけたいのであれば、しっかりと人材会社の転職サービスを活用し、妥協のない転職先を見つけ出すことをオススメします。
20代なら「既卒・第二新卒」向けの就職支援サービスを使っておくこと
転職で即戦力級を求められることに不安がある方で、まだ20代の方であれば就職支援サービスの活用をオススメします。
20代向けの就職支援サービスは新卒採用している企業と範囲が被るので、
- 人材採用に余裕があり、教育もしっかり行っている会社
- 長期的視野で若手を求めている会社
- 場合によっては人材業者自体が研修・教育を担当している
…など、即戦力を求めている会社は少なめです。
大手転職エージェントも使っておこう
即戦力としての中途採用に不安がある方は「転職エージェント」も使っておくと間違いないでしょう。
転職エージェントとはプロが相談に乗ってくれ、自分に合った求人を紹介してくれるサービスのことです。
ただ、転職エージェントを使う場合は以下の点に注意。
- 運営会社ごとに紹介先企業の傾向や担当者の方針があるので、いくつかのエージェントを併用して提案求人を比較・検討しておくこと
- 担当者ごとに実力にムラがあるので、納得行かない提案には乗らないこと
- 紹介先企業向けの営業と面談担当者が別れているため、紹介先企業の詳しい情報を聞き出せないこともある→分業型と両面型についての記事
転職エージェントを経由している企業は採用意欲が高い分、即戦力級の人材を求めている企業も少なくないので、慎重に転職を検討しておけば、後悔のない転職出来るはずです。
今回ご紹介した考え方や知恵を活かして、即戦力として求められて消耗することのない、理想の転職先を見つけ出してみてください。