私は地方住みで転職ブログを運営しているのですが、調査でハローワークの求人を定期的にチェックしたり、あるいは自身で大手の転職エージェントを活用しております。
すると「やっぱり、地方での転職は厳しいなあ…」と実感することが非常に多いです。
その理由について、人材業界のビジネス的な事情も踏まえ、実際に地方で転職活動している私の視点から、解説していきます。
地方の転職が厳しい理由6つ
地方の転職が厳しい理由は、ざっくり以下の通り。
- 人材会社が地方の転職に力を入れていない
- 地方の企業に情報発信・広報力が欠けている
- コミュニティ重視の閉じこもった企業が多い
- 職業選択の幅が狭い
- 人件費・給料が安い
- 地方創生・地域おこし協力隊などは”都市部の人材優遇”政策
ビジネス的に利益になりにくいので人材会社が力を入れていない
地方の転職が厳しい最大の理由は、人材会社が「ビジネス的に利益になりにくい」という理由で、あまり力を入れていないからでしょう。
都市部に優秀な人材やディープな情報が集まる一方で、地方は取り残されてしまうわけでしが、それは人材誘致の面でも大きく格差が出ています。
なお、支社は全国にあるので、地方の求人情報を作成することだけなら可能ですし、大手転職エージェントを活用すれば、理論上は「地方の求人を紹介してもらう」ことは出来ます。
しかし、地方支社の営業部隊が作成した求人情報だけでは、情報の量や質には限界がありますし、エージェント部門が地方に存在しない以上は現地の情報の確認や連携は物理的に無理です。
ですので「全国対応」とは言っても、実質的には「都市部優遇、地方は不利」という構図になってしまうわけです。
また、ネットの転職情報も「誰でもどこでも使えて平等に情報が得られる」と思いがちですが、実際は「都市部優遇」になりがちです。
というのも、都市部に拠点のある人材会社が広告費を出して運営しているサイトばかりなので、必然的に都市部で働く人前提の情報ばかりになるわけです。
なので、リクルートなどの人材会社の情報を頼りに転職活動している人は、地方の転職は厳しくなってしまうのです。
ちなみに私も大手転職エージェントに登録して求人情報を受け取ってますが、9割以上の求人が都市部の求人ばかりな点からも、地方の転職が情報面で不利かはおわかりいただけることでしょう。
地方の企業は情報発信・広報力が弱く、優良求人が埋もれやすい
「人材会社は都市部優遇になる」という事情を踏まえておけば、少しかしこい人なら「じゃあ、人材会社使わなければいいんじゃね?」と考えるはずです。
しかし、そこでも問題が出来ます。
地方の企業は、情報発信力や広報力の弱い会社が多いため、自分に合った転職情報や求人が非常に見つけにくいのです。
その理由も、情報発信力や影響力のある情報業者(人材会社・出版社・広告代理店・マスコミ関連など)が都市部に集まっているためです。
求人情報を広める力を持つ企業や人材が都市部に集中しているため、地方の情報力・広報力は弱いものになってしまうわけですね。
企業側の人材募集に関する意識も「とりあえずハローワークに求人を出しておこう」「学校経由での採用に力を入れたり、企業説明会で学生が来るのを待っておこう」程度ですので、仮に優良企業の求人があったとしても、埋もれてしまいます。
ですので、地方で転職活動するのであれば、ハローワークなどの地方自治体が運営するサービスを活用したり、地道にセミナーや説明会に参加せざるをえないことになるのです。
もちろん、そういった地道な営業活動をしっかり行えれば地方にもたくさんの魅力的な企業があるでしょうが、地方住まいで時間のある人ならともかく、都市部に住んでいる人が地方に何度も足を運んで転職活動に時間とお金をかけるのは厳しいものがあります。
コミュニティ重視で閉じこもった会社が多い
地方の転職が厳しい理由は、コミュニティ型社会重視で、閉じこもった会社が多いからです。
これは「職場の人間関係が閉じこもっている」というよりは「地方経済自体が、コミュニティ内で仕事とお金を回している」という意味です。(ですので、地方の給料は低くなるのです)
また、地方の企業は地域社会との密接なつながりがあるので、地元の事業活動への参加などを半ば強制されることもあります。
地方の会社がコミュニティ重視で閉じこもった会社になりやすい理由
- 地方の経団連を中心とした経済圏
- コネ入社がかなり多い(親族や友人の紹介、仕事外のコミュニティからの紹介など)
- 地方自治体が主な受注先の会社が多め(インフラ関連など)
- 地域のコミュニティに属することで社内の立場が保障される(スポーツクラブ・地域会の参加など)
これには「困ったときは助け合い」「社内の人間や取引先とのつながりが強くなる」というメリットがある一方で「閉鎖的な村八分の人間関係になりやすい」「新規のビジネス展開に対して消極的になってしまう」などのデメリットもあります。
この閉じこもった性質のせいで、地方の企業は情報発信や広報力が弱くなっている側面もあります。
これが何を意味するかと言うと…地方の閉じこもったコミュニティ内に溶け込むためのコミュニケーション能力が必要だと言うことです。
場合によっては事前の根回しやコネづくりも重要となるので「書類を送って、面接するだけ」の転職活動では、限界が見えてきます。
実際、地方住まいの私の知人も、年齢層・職種問わずコネ入社している人が多いです。
職業選択の幅が狭い
地方の転職が厳しいのは、職業選択の幅が狭いからです。
全体的な企業の数と求人数が少ないのですから、これは当たり前です。
これが何を意味するかというと、都市部で転職先を見つけ出すよりも待遇・給与の面で妥協する必要が出てくるということです。
地方の職種・業種は以下の区分(一次~二次産業)が多くなります。
- 農業
- インフラ関連(建設、電工など)
- 工場・製造関連(機械、食品加工など)
一方で第三次産業に値する仕事は、以下のように極端に狭くなります。
- 全国展開の小売・サービス業
- 教育・医療・介護などの公共事業関連
- その他、地方密着型の小規模な会社
大手資本会社のM&A(企業買収)の流れを見ていればわかりますが、地方の第三次産業は資本力や影響力の点では、どうあがいても都市部の大企業には勝てないのです。
その大手資本会社の下請けとなる中小企業や、業務委託先となる派遣業も地方に集中しており(人件費が安いため)、資本主義の搾取・階級構造によって割を食っているのです。
ですので、単純に「出来るだけ待遇のいい安定性のある企業がいい」と考えていると、どうあがいても都市部の企業を選んだほうがいいという結論にしか達しません。
「これからは地方移住の時代だ!」なんて言っていられるのは、場所にとらわれずに仕事できるIT・WEB業界ぐらいなもので、そのIT・WEB業界だって大きな会社は都市部に集中しております。
少なからず、資本主義的な「給料の高さ」「会社の安定性」以上の価値観を仕事に見い出せないのであれば、地方の転職は心理的に気が進まなく、厳しいものになることは覚悟しておきましょう。
人件費・給料が安い
地方の転職が厳しいのは、単純に人件費=給料が安いため、年収面での妥協を強いられるからでしょう。
物価が安いので、実際は年収が下がっても生活に困ることはないでしょうが、詳細な生活費は実際に地方で暮らしてみないとわからないので、都市部から転職する前は確実に不安になるはずです。
(生活費切り詰めれば、手取り10万クラスでも一人暮らし出来るのは事実ですが…)
都内で働く私の友人の多くも「地方は給料が安いし、職業選択の幅が狭い」という理由で、地方から都市部に移住して働いている人がほとんどです。
これに関しては「収入<地方で働くこと」という絶対的な価値観を持っておかないと、まず割り切れない問題でしょう。
地方創生・地域おこし隊は”都市部の人材優遇”政策
地方への転職に興味のある方は、もしかしたら「地方創生」「地域おこし協力隊」などの、国の取り組みの影響を受けているのかもしれません。
しかし、これも一度しっかりと「現実」を考えておく必要があります。
地方暮らしの私からすれば「勝手に自治体や広報が盛り上がっているだけで、実態がまったくおいついていない…」と感じることが多いです。
単純に「経済的な地方への貢献」という観点で見れば、工場建設して雇用を生み出している企業や、全国展開の小売店が店を作ってくれた方が効果は大きいですから。
逆に地方創生の取り組みに関しては、広報を見る限り「これ、本当に地方のためになるのか…?」と疑問を感じざるをえない取り組みも、結構あります。
これには理由があって「政府が地方自治体にお金を配って、そのお金で人材を呼び寄せているだけの事業」だからです。
ですので、その給付金を受けるためには「都市部から地方に移住しなければならない」という、条件が付いております。
これは、そもそもの大きな目的が「都市部から地方に人材を移したい」ですので、当たり前の条件です。
逆に言えば「地方にいる人材を自治体側で育てる気はない」「地方に人を呼び寄せるだけの力がない」「都市部で育った優秀な人材を給付金ばらまきでおびき寄せたい」という、裏の意図も隠されています。
また、政府の給付金ばらまきには民間企業のように「投資」「対費用効果」というシビアな感覚がかけているので、その点にも注意です。
早い話が「都市部から移住を呼び込んでおいて、その後のアフターフォローは一切しない」という性質になりやすいのです。
…実際、受け入れる自治体や企業側にその意志がなければ、冗談抜きで「給付金を受け取るためだけに、人材をおびき寄せる」という悪どい運用の仕方も可能です。
地方過疎化は深刻な社会問題ですので、給付金ばらまき自体は「しないよりかはマシ」です。
しかし、自治体・政府側のビジネス感覚のなさや、地方の企業側の当事者意識の低さを知っておかなければ、痛い目にあうのは明らかです。
政府側の施策や取り組みが「目的だけ先行して、結果が伴わない」というのはよくあることですが(ゆとり教育など)、地方創生に関しても地方民の私からすればそういった印象を強く感じております。
もっとハッキリ言っておくと「余所者が地方に来て、いきなり活躍できると思うなよ!都会で成功したからと言って、地方に住むんなら地方のルールを理解しておけよ」ということです。
地方自治体側も「給付金を受け取っても具体的に何をすればいいかわからない…」という手探り状態ですので、仮に地方で活躍することに期待して転職を考えているのであれば、しっかり自治体側の取り組みをチェックして「本当に自治体側は転職・移住に協力してくれるのか?」「転職後の定住に向けての協力もしてくれるのか?」は見極めておきましょう。
まとめ:地方の転職は厳しいし、妥協と地道な努力も必要
「地方の転職が厳しい」というよりは「地方では都市部で人材会社が効率化している求人情報や転職活動のサポートを受けにくい」という事情が大きいです。
また、経済的な事情により、年収を始めとした妥協しないといけない条件も増えてきます。
ですので、その性質をよく理解した上で、人材会社の情報だけに頼らない地道な情報集めを行う必要があります。
地方への転職を考えるのであれば、ダメ元で転職エージェントは活用しておこう
地方への転職を考えるのであれば、ダメ元で転職エージェントは活用しておくといいでしょう。
転職エージェントはプロのアドバイザーが転職に関する相談に乗ってくれ、無料で使えます。
全国展開の転職エージェントを活用しておけば、地方の求人情報を紹介してもらうこと自体は可能です。
また、履歴書・職務経歴書の作成も指導してもらえるので、転職活動自体初めての方は、使っておくだけ損はありません。
あるいは「地方に転職したいけど、どこに住むかは考えていない…」という方であれば、経歴から自分に向いている仕事を紹介してもらえるため、意外な会社を知るチャンスも生まれます。
転職エージェントで紹介してもらえる地方の求人は、その人材会社の主要取引先が多いため、以下のような企業が多めになります。
- 大手企業グループの地方支社の求人
- 年収の高めの求人(人材会社の利益になるから)
- 大手人材会社を利用して人材を採用している、情報力のある企業
逆に言えば「あまり情報発信に精力的でない地方の企業」「コネ入社・コミュニティからの紹介を重視している企業」は、まず見つからないことは知っておきたいです。
そういう会社はハローワークを使ったり、あるいは地方自治体の運営するポータルサイトをこまめにチェックすることでしか、出会えないでしょう。
その他の大手人材会社も、地方創生自体には取り組んでいますので、出来る限り様々な転職エージェントを利用しておくと後悔せずに済むでしょう。