「会社が全面禁煙になってつらい…」
「禁煙が理由で退職したい…」
そうお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
昨今、喫煙に対する風当たりが強くなっており、条例や法律での企業に対する禁煙や分煙に対する取り組みを推奨する流れが進んだり、ハラスメント行為の一つとして社内で受動喫煙をもたらす行動を「スモハラ(スモークハラスメント)」と呼ぶ声も出てきています。
しかし、日頃から喫煙が仕事時の息抜きやストレス発散となっている人からすれば、全面禁煙はつらいと感じるものですし、現に教職員が職場の敷地内で喫煙したことが理由で懲戒処分になるニュースも報道されています。
このことから、仮に勤務中にコッソリ喫煙できるとしても懲戒免職のリスクを抱えることになりますし、喫煙時の息抜きや雑談が仕事に良い影響を与えていたと感じる人もいることでしょう。
ですから、会社内で全面禁煙になったことを理由に退職したいと考える者が出てきたとしても、なんら不思議なことではありません。
ただ、世間での喫煙者の風当たりが強いことから、そのような退職理由は中々理解が得られないでしょうし、仮にそれで辞めて次の職場で喫煙できたとしても、また禁煙になってしまうリスクも抱えることとなります。
そこで当記事では、世間で社内禁煙の流れが進んでいく背景を踏まえた上で、禁煙を理由に退職する場合に考えておきたいことや注意点、またその後に喫煙できる可能性が高い職種や会社の見つけ方など、知りたい情報をまとめてお伝えしていきます。
企業の完全禁煙は増加傾向…その理由や背景は?
冒頭にもお伝えしている通り、企業での完全禁煙の取り組みは年々強まっております。
飲食業・サービス業などの不特定多数向けの仕事はもちろんのこと、そうでない一般企業内でも禁煙に関しての取り組みが行われており、喫煙者は肩身の狭いを思いをするハメになっています。
このような時代の流れがあるため、中には「喫煙者=悪」「喫煙はハラスメント行為」という過激な風潮まで存在します。
その背景となる事情を見ていきしょう。
2020年、健康増進法の改正で企業側の受動喫煙対策が厳しくなることに
完全禁煙が進む背景となっているのが「健康増進法」と呼ばれる、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律です。
2020年4月に改正・施行された「平成30年法律第78号」には、以下のような記載内容が盛り込まれております。
▼基本的考え方
- 「望まない受動喫煙」をなくす
- 受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮
- 施設の類型・場所ごとに対策を実施
出典:受動喫煙対策|厚生労働省
具体的には、以下の三種類の施設の区分により、喫煙の可否、スペース設置の義務が決められることとなります。
第一種施設~学校、児童福祉施設、病院 、診療所、行政機関の庁舎 等
第二種施設~事務所、工場、ホテル、旅館、飲食店、旅客運送事業船舶、鉄道、国会、裁判所 等
喫煙目的施設~喫煙を主目的とするバー、スナック等、店内で喫煙可能なたばこ販売店、公衆喫煙所
通常のオフィスの大半は「第二種施設」に含まれるため、経営判断によって以下の禁煙処置をとらなければいけません。
- 屋内完全禁煙
- 喫煙専用室設置(喫煙のみ)
- 加熱式たばこ専用の喫煙室設置(飲食可)
この条件から照らし合わせると、喫煙専用設備を取り入れる気のない会社は屋内全面禁煙の経営判断をするしかなくなるわけです。
「スモークハラスメント」の提唱で「喫煙は嫌がらせ」との声もある
企業側が完全禁煙に取り組む理由や背景として「スモークハラスメント」という言葉の登場および、訴訟事例の存在です。
スモハラとはスモークハラスメントの略で、喫煙者が煙草を吸うことを強制したり、喫煙によって受動喫煙を生じさせたりして迷惑をかける行為のことを指します。
元職員の30代の女性が、解雇無効と未払い賃金の支払いなどを求めて東京地裁に申し立てた労働審判の調停が2018年6月29日に成立しました。
一方的な解雇を合意による退職との扱いにし、日本JC側が女性に未払い賃金など440万円を支払うことで和解に至りました。
上記の事例からわかる通り、企業側は禁煙対策を徹底しなければ、ハラスメントとして訴えられるリスクを背負うこととなるわけです。
現実的に訴えてくる人が多いかどうかはともかく、前述の健康増進法に準拠した取り組みを行わない限りは、喫煙を許容した企業側はスモハラで訴えられるリスクを抱えることになります。
職場の禁煙がつらい理由は?
喫煙者側にとって会社での完全禁煙がつらい理由について解説していきます。
勤務中の喫煙タイムでの雑談がなくなりコミュニケーションが滞る
職場の完全禁煙がつらい理由として、勤務中の雑談タイムや情報交換の場がなくなり、リフレッシュができなくなるからでしょう。
ある街頭調査では、タバコ休憩が「アリ」と答えたのは男性46.2%、女性41.6%だったという。「アリ」の理由として「多少のリフレッシュは必要だから」という声が目立っていたが、注目したいのは「情報交換の場でもあるから」という声だ。
出典:勤務中の全面禁煙打ち出す大企業 憤慨する梅沢富美男に本村弁護士「職場で勤務中に喫煙する権利ない」 | キャリコネニュース
筆者自身、勤務中の休憩時間に喫煙を通して交流を深める社員がいたなど、喫煙文化を通して得た仕事上のメリットは数多く存在します。
勤務中にイライラしやすくなる
タバコにはニコチンという成分が含まれ「イライラを抑える効果」が存在します。
ですので、今まで勤務中に喫煙していた人が禁煙になることで、仕事中にストレスを感じ落ち着かなくなり、イライラしやすくなることが増え、辛いと感じることもあるでしょう。
無意識の習慣がなくなることに不安を感じる
喫煙が習慣化してしまっている場合、喫煙タイム自体がなくなることに不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。
人は決まった習慣を強制的に乱されると、不安を覚えたり、落ち着きがなくなるものです。
禁煙に関する取り組みの場合、強制的に喫煙の習慣を奪われるわけですから、このことに不満を抱える人がいたとしても何ら不思議はないでしょう。
職場禁煙に労働者はどう対策するべきか?
お伝えしています通り、法令や条例により職場禁煙が進みつらい思いをしがちな喫煙者ですが、労働者側の立場でできる対策はあるのでしょうか?
残念ながら、前述の健康増進法に準拠した会社経営を行う限り、喫煙専用室を設けるメリットのある職種や業種でもない限り、現実的に会社側に完全禁煙を解いてもらうのは難しいと言えます。
ですので、消去法として「自分も禁煙に取り組む」「諦めて喫煙できる会社に転職する」ぐらいしか選択肢が残りません。
会社の禁煙を機に自身も禁煙に取り組む
会社が完全禁煙に取り組んでいるのであれば、自分自身も禁煙に取り組むのもありでしょう。
禁煙に取り組む際、内科に通って「禁煙外来」を受けることで、医者のサポートを受けながら禁煙に取り組むことが可能です。
禁煙外来の予算は1万~3万円ほどと、たばこの購入費と比べればそこまで高いわけでもないので、禁煙に取り組みたいのであれば一考の余地はあるでしょう。
会社にかけ合い喫煙・分煙スペースを設けてもらう
会社側にかけ合い、喫煙・分煙スペースを設置してもらうことも、一応は考えておく手段です。
ただ、設備投資がかかる以上は会社側に喫煙専用室を設置してもらうのは現実的ではないと言えます。
社長の権限で自由にできる小さな会社であればともかく、コンプライアンス対策をしなければならない大きな会社では予算の確保および法令対策の都合上、一社員の権限で喫煙スペースの設置要望を通すのは現実的に困難だと言えます。
どうしてもダメなら転職を考えておく
どうしても禁煙がダメなら、転職することも考えておくといいでしょう。
職場禁煙が理由での転職活動については、次の項目で詳しく解説していきます。
職場禁煙が理由で転職する場合の注意点は?
読者の中には、職場禁煙が理由で退職・転職を意識しだした方もいらっしゃるかと思います。
そこで、ここから職場禁煙が理由で退職・転職する際に気をつけておくべきことや、具体的の行うべきことをご紹介していきます。
退職理由を「職場禁煙」とするのは避けて転職活動する
退職理由に「職場禁煙だから…」、転職時の志望動機に「職場喫煙ができるから…」という理由を表に出すのは、転職活動上あまり好ましくありません。
何度もお伝えしている通り、健康増進法により企業側では禁煙の取り組みに積極的にならざるを得ない事情があるので、たとえ面接官や経営階級が喫煙者であっても、社内での禁煙・喫煙を理由に転職が成功することはほぼないと見ていいでしょう。
ですので、退職や転職を決めるきっかけが禁煙であったとしても、他の退職理由や転職理由を見つけておき、面接時にアピールできるようにしておきましょう。
喫煙に厳しい業種や職種は避け、喫煙に理解のある会社を選ぶ
喫煙に厳しい業種や職種を避け、喫煙に理解のある会社を見つけ出すことも重要です。
前述の健康増進法に照らし合わせると、子供や患者の受動喫煙に配慮しなければならない「学校、児童福祉施設、病院 、診療所、行政機関の庁舎」など、公務員全般や医療関係の仕事は喫煙に関して非常に厳しい職場が多いと言えます。
ただ、それ以外の業種・職種であっても、喫煙スペースを設置するメリットや予算がない限りは実質的に屋内禁煙に取り組まざるを得ないため、業種・職種問わず、禁煙に厳しい会社が多い点に注意です。
どうしても喫煙できる職場で働きたいのであれば、健康増進法で定められているところの「喫煙目的施設」に該当する、スナックやバーで働くしか選択肢がなくなってきます。
ですので、考えられる方法としては「会社内に喫煙スペースを設置しているかどうか?」「仕事の性質上、喫煙スペースを設置するメリットがあるか?」ぐらいでしか、喫煙可能な職場かどうかを見分けるしかありません。
面接時に喫煙場所の有無を確認しておく
事前に得られる求人情報だけでは、社内での喫煙が可能かどうかは判断しにくいため、面接時に喫煙場所の有無を確認しておくといいでしょう。
健康増進法で定められている項目は「屋内禁煙」についての制定が多いため、屋外禁煙に関しては注目です。
たとえば、ビル屋外に喫煙スペースがあったり、社員が隠れて喫煙しているスペースがあるなど、意外な抜け穴が存在するものです。
また、車内での喫煙ならOKであれば、休憩時間内にタバコを吸える可能性もあるので、面接時に社員用駐車場を確認しておくのもいいでしょう。
都道府県別の条例毎の禁煙エリアと事業所の所在地を確認しておく
前述の屋外喫煙についてですが、都道府県の定める条例にて禁煙エリアに指定されているかどうかが、一つの判断基準となってきます。
条例で明確に禁煙エリアに指定されていない以上、屋外喫煙に関しては曖昧なラインも多いため、オフィス外に喫煙スペースが設けられていることもあります。
面接時の確認と合わせて、喫煙できる可能性があるかどうかの判断基準として、条例も抑えておくといいでしょう。
転職エージェントを活用して喫煙可能な職場を見つけ出す
禁煙を理由に転職を考えるのであれば、転職エージェントと呼ばれるサービスを活用しておきたいです。
転職エージェントは転職に関する相談、自分に合った求人の紹介、面接対策など、様々な転職サポートを行ってくれるサービスのことで、内定が決まるまで完全無料で利用できます。
転職エージェントを利用する場合、事前に紹介先企業の情報を聞き出すことが可能なので、完全禁煙ではない職場を見つけやすくなるはずです。
具体的には、応募・面接前に以下のような文言でメールしておき、事前に情報を引き出すといいかもしれません。
社内環境に関して、事前にお聞きしたいことがございます。
- 禁煙に関しての取り組みは行われているか?
現職(前職)の職場全面喫煙を理由に転職を考えているのですが、もし○○社様内で完全禁煙の取り組みが行われているのであれば、これを機に禁煙外来を受け、私自身も禁煙に取り組もうかと考えております。
お差し支えない範囲で問題ありませんので、○○者様の禁煙に関する取り組みについて情報共有していだたきますと幸いです。
気をつけておきたいことは、完全職場禁煙の取り組みを行っている会社が多い以上、建前として「紹介先企業が完全禁煙なら、自分も禁煙に取り組む気がある」と前面に出しておくことです。
転職するにしても、喫煙可能な会社を見つけるよりは自身も転職活動を機に禁煙に取り組んでみる気持ちで活動した方が、転職先の選択肢は広がるはずです。
いずれにせよ、転職活動をする際には転職エージェントを利用しておき、効率よく求人情報を集めておき、日程調整や事前に情報を調べてもらうなどした方が効率的ですので、この機会に登録だけでも済ませておくといいでしょう。