転職理由でとくに多いのが「上司(経営者)と合わない」という理由です。
日本では和を重んじる心があるので「上司に合わせるのが当たり前」「人間関係を理由に辞めてはいけない」とする傾向が強いです。
しかし、現代の日本では人間関係や会社の組織も欧米化が進んでいるため、必ずしも上司を理由を辞めてはいけないというわけでもありません。
ただし、転職活動において「上司と合わないことが転職動機」というのはマイナス評価になりやすいので辞める前に注意も必要です。
今回は、職場の上司と合わないことを理由に辞める際の注意点や考え方、そして転職活動において不利にならないための方法をご紹介していきましょう。
「上司と合わない」を理由に辞める人はかなり多い
まず、皆様に知っておいていただきたいことは「上司が合わないので仕事を辞めるために転職活動を始める」という人はかなり多いという事実です。
日本の組織では、タテ割り社会型の組織運営が当たり前でしたが、それも今はほぼ崩れ去ってきていると言えます。その証拠に非正規社員が増え、終身雇用制度も完全に崩れ去っています。
昔であれば「上司に言うことを聞いておけば間違いない」わけだったのですが、今はそうではありません。むしろ、どこの業界でも人手不足・若手不足が当たり前になっている現代の日本では「上司や経営者はしっかり選んだ方がいい」と言えるんです。
狭い職場になるほど上司との相性が大事になる
そもそも「上司を選ぶな」「どんな上司とも仲良くしろ!」というのは、組織規模の大きい大企業だけに限った話です。大企業では部署替えから転勤まで人間関係の入れ替えが頻繁に起こるため、どんな上司とも上手く仕事できる能力が求められます。
しかも組織が大きければ、上司が変わる可能性もあるため、どんなに嫌いでウマの合わない上司でも「そのうち上司も変わるだろうからいいや」と辛抱することができるのです。
ところが、会社の規模が小さくなればなるほど、上司が変わる可能性は低くなってきます。早い話、自分か上司が辞めなければ一生同じ職場で合わない上司と働くことになりますからね。
ですので上司が変わることに期待できない場合、「上司と合わない」ことは、仕事だけではなくこの先の人生においても重大な問題になってくるのです。
この事実を示すのが、厚生労働省のデータです。以下のデータを参考にしますと、組織規模が小さくなれば小さくなるほど離職率(辞める人の割合)が高い事実がわかってきます。
【新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率】
[ 事業所規模 ]
■大学 ■高校 1,000 人以上
24.3 %
25.3 %
500 ~999人
29.8 %
32.9 %
100 ~499人
31.9 %
37.9 %
30 ~99人
38.8 %
47.1 %
5~29人
50.2 %
56.4 %
5人未満
59.1 %
64.0 %
厚生労働省のデータを参考にしてみますと、従業員数30人未満の会社では実に5割以上の人が3年以内に辞めており、さらに500人未満の会社でも3割以上の人が辞めている事実が見えてきます。
それだけ、狭い職場では「上司(経営者)との相性」が仕事に大きく関わってくるのです。
日本の会社の”欧米化”による働き方や価値観の変化
また、日本ではバブル崩壊以降は働き方が欧米化してきたにも関わらず、未だに終身雇用制度の時代の考え方が根強く残っているのも「上司が理由で辞めてはいけない」と考えられている理由です。
高度経済成長期では、どの企業もしっかり人材育成に時間をかけていたため「とにかく上司が嫌でも耐えろ!」という理屈は通りました。現に耐えて仕事を真面目にこなせば、それなりの待遇と地位が受けられる時代だったからです。
ところが、バブル崩壊後に日本の経済成長は横ばいとなり、次第に正社員終身雇用制度が会社の財政を圧迫することになりだしました。その結果、アルバイト・パートと言った雇用形態の普及から労働者派遣法の成立まで、欧米的な働き方が広く取り入れられることになっていったのです。
そうした結果、日本ではより欧米的な働き方に対する考え方や組織での人間関係観が生まれていくことになりました。
- 上司と合わないならすぐに辞めて転職した方がいい
- 上司が理由で待遇面の向上が見込めないなら他の職場に行けばいい
- 派遣・アルバイトならどうせ続けても評価は上がらないから辞めた方がいい
欧米では転職が盛んですが、その背景には日本の組織構造やビジネスにおける人間関係観が違うからです。しかし最近では日本の企業も欧米化してきており、会社にとって正社員でなければいけないような人材も徐々に減ってきています。
将来、組織の中枢を担うような重要な候補であれば「上司と合わなくても続けろ」と言われても仕方ないでしょうが、そうでなければ辞めてしまっても問題ないのです。
こういった社会背景を知らずとも、多くの国民はすでに「会社の言うことを聞いていても幸せにはなれない」と薄々気づいているはずです。その結果、欧米的な価値観で合わない上司が理由で転職する人が増えているわけです。
上司が合わないなら辞めても問題ない理由
以上のような「会社組織の構造」「日本の社会情勢」を知っておくと、上司が合わないことを理由に辞めることは当たり前だという事実に、すでに読者のみなさんは気づかれているはずです。
ただし、上司が理由で辞めたい方はおそらく「上司が理由で辞めると転職先でマイナス評価になる」と心配になっていることでしょう。
ですが、その心配はほぼ無用です。
なぜなら、転職先に今の会社の人間関係はバレないから。
そして、転職先も前の職場の人間関係はさほど気にしないからです。
転職は「人間関係のリセット」だから
上司が合わないで転職してもいい理由は「転職は人間関係のリセット」だからです。
とくに女性に多いのですが「仕事の人間関係に疲れたから…」という理由で辞める人が大半です。転職することで人間関係をリセットし、新たにやり直すことができるわけですね。
とくに上司や経営者に関しては部下の権限だけでどうこうすることはできません。仮に上司をどうにかしようとしてみても、会社の人間関係がさらに悪化する結果につながりますし、最悪自分が嫌がらせを受けてうつ病・退職に追い込まれる危険性もあります。
であれば、残る選択肢は「自分が変わる=転職する」しかなくなるわけですね。他人を変えることは難しいですが、自分を変えることは今すぐにできます。
転職先は人材に「仕事で何が出来るか?」を求めるから
また、企業目線で考えてみましょう。
中途採用人材に対しては「上司が理由で辞めたこと」よりも「うちの職場に入って何が出来るか?」の方が何倍も重要です。
つまり、今の職場の上司と合わないで上手くいかないことは、転職活動においてはさほどマイナス評価にはならないわけですね。
とくに上司に理不尽に仕事を振られている方は「自分がいなければあの上司は何も出来ない!」と思っている方も多いことでしょう。その場合に「上司の替わりに自分がしていた仕事すべて=自分の出来る仕事」だと転職活動でアピールしてしまえばいいだけの話です。
今の上司から評価されないのであれば、自分をしっかりと評価してくれる上司の下で働きたいものですよね。その気持は立派な転職動機になります。
人間関係の合う職場を見つけ出せばいいから
前にもお伝えした通り「狭い職場ほど人間関係が仕事に与える影響は大きい」という傾向がデータにも出ています。組織規模の大きい大企業であったり、対人関係の求められる職業については人間関係を選んでいては話になりませんが、そうでなければ仕事での人間関係はしっかりと選ぶべきです。
とくに会社には「社風」というものが存在し、似たようなものが集まって会社に馴染めばそのまま残り続けます。学校でも自然と自分と似た家庭環境や趣味の人間とつるんでいましたが、社会人になってもそれは変わりがありません。
企業や職場にも似たような考えや性格の人が集まるんです。
そのため、上司が合わないで転職するのであれば、今度はより自分と合う職場を選ぶつもりで臨みましょう。それが転職先にとってもあなたにとっても、最善の選択となりますから。
「上司が合わない」で転職する場合に気をつけておくこと
「上司が合わない」という理由で転職する場合は、いくつか気をつけておくことがあります。バカ正直に「今の会社の上司が合わないから転職したい」と言ってしまうと心証を損ねることにもなるので、本音と建前の使い分けが大事です。
ですので、最低限以下の点には気をつけておきましょう。
- 「上司が合わない」という理由は必要最低限表に出さないようにする
- ただし「上司が理由で仕事に悪影響があった場合」においては効果的に使う
- 出来れば「上司が理由」というネガティブな動機ではなく、より前向きな動機を見つけ出しておく
転職活動での面接の際に「上司が合わないから辞めたい」と言われてしまえば、普通の人事であれば「この人は協調性がないな」と警戒されてしまいます。とくに中途採用では「どれだけ早く会社に馴染んでくれるだろうか?」という面も重視されます。ですので「建前」はしっかりと用意しておき、スムーズに転職動機を言えるようにしておくべきでしょう。
「上司が合わないで辞める」という”本音”はまったく問題ありませんが、それを表に出さずに”建前”を用意する能力は転職を考える社会人であれば身につけておきたいものです。
合わない上司が理由で辞めたいなら転職エージェントで相談しておこう
「上司と合わないから辞めたい」と悩んでいる方は、転職エージェントでプロからキャリアカウンセリングを受けてみることをオススメします。
日本ではあまりキャリアカウンセリングの重要性が知れ渡っていませんが、欧米では何十年も前から当たり前に行われていました。というのも、転職の際にはどうしても人は不満や怒り、あるいは不安などのネガティブな感情が先走ってしまい、前向きな動機を持てずに失敗してしまいだちだからです。
上司が理由で辞める前に冷静になるためにも、プロから客観的なアドバイスをもらっておくことで、間違いのない将来設計を見直す機会にもなりますよ。
転職エージェントはプライバシーにしっかり配慮してくれ今の職場にバレることもないので、上司への不満なども口に出しやすいのも特徴です。私も転職アドバイザー現役時代にキャリアカウンセリングを行っていましたが、意外と今の職場の生々しい愚痴をこぼす方も少なくはありませんでした。
転職エージェントは完全無料で利用でき、転職についての前向きなアドバイスももらえますので、上司が合わないで辞めようか悩んでいる方はぜひ利用してみてください。相談しておくだけでも心がグッと楽になり、転職の選択肢も広がりますよ。