「優秀なせいで周りに敵が多いと感じる…」
「能力が高いせいか嫉妬されて他人に邪魔される…」
「仕事が出来すぎて嫌われているように感じる…」
仕事では「優秀であること」が良いように思われますが、必ずしもそうとは言い切れない場面も数多くあります。
「出る杭は打たれる」ということわざがあります。
でるくいはうたれる
杭を並べて打つとき、出過ぎた杭が打たれるのは当然のことである。 出過ぎた振る舞いをする者や、頭角を現す者は、人の憎しみを買って、往々にして制裁を受けることをいう。
このことわざが意味する通り、能力があったり優秀すぎる人は「出しゃばったマネをしやがって…」と疎まれることがあります。
また、多くの仕事では集団行動やチームワークが前提になるという視点も欠かせません。
周りよりも明らかに仕事が早すぎると周りと足並みが合わないことで統率が乱れる原因となりますし、上司や先輩以上にリーダーシップを発揮しすぎると面子を潰して厄介に思われることもあります。
以上のように、様々な観点から「優秀すぎることも考えもの」となる場面が社会生活には数多くあるのです。
そこで当記事では、優秀な人が嫌われたり厄介に思われる理由や原因について様々な視点から解説した上で、嫌われないためにはどのように立ち回るべきか、あるいは思うように自分の能力を発揮するためにはどうすればいいのか、ヒントになりそうな情報をお伝えしていきます。
優秀な人が嫌われやすく敵が多くなる理由とは?
仕事において「優秀であること」「能力が高いこと」は歓迎されるべきことですし、それが適切な評価や昇進・昇給につながることが理想です。
しかし、現実ではそう上手くいかないことも多く、下手をすれば上司から厄介に思われ不当に評価を下げられたり、新しい仕事に挑戦する機会を与えられないこともあります。
ここでは、なぜそのように優秀な人は嫌われたり敵視されてしまうのか、嫌う人の心理や集団心理を解説していきます。
自分より優れた者への「やっかみ」や「嫉妬心」から敵視される
第一に考えられる原因としては「嫉妬心」や「やっかみ」といった感情です。
謙虚に自分の非を認めて向上できる人物からすると、自分より優れた人物は「見習う対象」「模倣したい相手」だと思えるかもしれません。
しかし、謙虚でない人物や努力を放棄している人物からすると、自分より優れた人物は「自分の立場を脅かす相手」「自分の存在を否定する脅威」だと思えてしまうわけです。
というのも、自分が努力して上を目指すよりも、自分よりも上の存在を蹴落として自分を上に見せる方が、優秀な人物を敵視する人種からは「楽だから」です。
これは、マスメディアで著名人や成功者の失態を執拗なまでに責める光景を楽しむ大衆心理からしても、普遍的な人間の感情だと言えます。「自分より優れた者は損失、劣った者は報酬」だと無意識に認識している人が多いというわけです。
それを裏付けるように、近年の脳科学では「自分より下位の者と比べる下方比較では報酬を感じる脳の部位が活性化し、上位の者と比べる情報比較では損失を感じる脳の部位が活性化する」という研究結果もあるぐらいです。
また、自分より優れた者を攻撃するためによく用いられる方法として「目立たずに目立つ(自分を有利にする)」という方法があります。
例としては「優秀な人が不利になる噂を流す」「優秀な人より自分の方が優れているとマウントを取ったり、評価を貶める」などです。
優秀な人が過小評価されるように仕向けたり、「あいつが邪魔だ」という空気感を集団内で作り出すことができ、優秀でない者の評価を下げて自分の優位性を確保することができます。
一見すると、嫉妬心から優秀な人を妨害することは愚かな行動に見えますが、優秀でない人物にとっては自分が集団で優位性を保つために合理的な選択肢となるのです。その結果、優秀な人物が目の敵にされることになるわけです。
課題の指摘や提案、自主性のある意見が疎まれている
優秀なビジネスパーソンに求められる資質として「課題発見力」や「提案力」、「自発性・積極性」が挙げられます。
しかし、これらの資質を発揮したとしても、言うべき場所や場面、相手やタイミングを選ばないと、かえって社内で疎まれてしまう結果になることがあります。
たとえば、チームや企業にとって大きな利益をもたらす可能性がある新しいプロジェクトの提案をしたとしても、権限がないうちやチームメンバーから信頼を得てないタイミングで提案したり、実行可能かどうかを考慮しないまま提案すると、聞き入れてもらえないばかりか、かえって余計な仕事を増やす結果にもなりかねません。
また、その提案方法が「うちの会社はダメだ」「そのやり方は時代遅れだ」「あなたの提案はイケてない」と攻撃的であったり、他の同僚の意見や努力を軽視するような形で行われた場合、社内の人間関係に悪影響を及ぼす原因ともなるかもしれません。
同様に、「自発性・積極性」を発揮することはポジティブな資質と見なされますが、その積極性が周囲のメンバーの意見やペースを尊重しない形で表れた場合、チームワークを損ねる結果となり得ます。例えば、ある社員が自分の考えやプロジェクトを推進するあまり、他のメンバーの提案を十分に聞き入れず、チーム内の協調性や信頼関係を損ねてしまう…といった可能性です。
年功序列に従っておらず上を敬ってるようにも思われないから
次にご紹介するのは、どちらかというと「伝統や慣習だから(自分が今までこうしてきたから)、自分と同じでない者は気に食わない」という理由に基づくものです。これにはとくに深い理由や原因などなく、単に「自分と違う存在が気に食わない」というだけの原理であるように思えます。
その最たる例が「年功序列(あるいは組織の指示体型)に従っていない」「年上を敬っていない」という行為に反感感情を抱く層の存在です。もっと幼稚な言い方をすれば「自分が教わっているものとは違うから、お前は間違いだ。お前は敵だ」と無意識に判断している模様です。
年功序列が定着していた時代にエスカレーター式に昇進してきた人、あるいは学生時代から常識を疑わずに順調に「進学→就職→昇進」という人生を進んできた場合、自分自身はそれが当たり前で努力してきた自負もあるでしょうから、それ以外の例外の存在は認めがたいものです。
仮にこのような層が「上から言われた(教わった)ことだけを守ってやってきた」という仕事しか経験していない場合、自発的に動く人材や上の指示を遵守しない存在は、敵だと認識してしまうわけです。また、心の底から尊敬しているわけでもない嫌な上司や先輩を無条件に敬うことで成功してきた経験もあるのですから、自分と同じような立ち振るまいをしない相手も「敵」あるいは「無能」だと感じるわけです。
もちろん、ここで解説したことが絶対にそうだとは言い切れませんが、筆者自身が仕事で関わる人の中で感じた世代間の格差や組織文化の違いから察するに、こういった「(自分たちは)年功序列の考え方が当たり前だから、それに従わない奴は認めない!」という考え方の人はいる模様です。その場合、相手側のルールに合わせなければ(それがたとえ非効率や茶番に見えても)、警戒されたり過小評価されるなど、仕事上の不利益を被りやすくなります。
自分だけ仕事が早いと周りに過剰な期待や負担が押し付けられる原因となる
仕事においては「仕事を早く終わらせり効率化する」「悪いところを発見・改善し短期間で利益を向上させる」といった、本質的な業務に取り組める人材が評価されると思われがちです。もちろん、それ自体は組織にとっても利益となる行為ではあるのですが、職場全体で見ると周りに過剰な期待や負担が押し付けられる原因ともなってしまいます。
筆者がよく挙げる例としましては、在宅ワーク下で増えたチャットツールでのやりとりで、すぐに返答するのが常態化してしまうと、相手は常にそれを求めてしまうという話です。
自分個人の場合もとくに重要でない連絡まで優先度が上がってしまって自ら首を締める結果になったり、最悪、社内全体でその水準が要求されてしまうと、その後、すぐに返答することをやめたら、相手に「手を抜いてる」「対応が杜撰だ」と思わせてしまう結果にもなりかねません。
また、このようなリスクを想定していない上司の場合、往々にして最初は部下が過剰な業務を請け負うことを歓迎してストップをかけることはしません。
その場合、一部の優秀な部下が周りの何倍もの仕事量をこなしてしまうと、相対的に周りの同僚は無能だと思われてしまい、上司から過剰な期待や負担を押し付けられる原因ともなってしまいます。
このような集団だからこそ生じる心理は、仕事で活躍したい人にとっては理不尽に感じるかもしれません。ですが、組織全体として見た場合の利益(あるいは損失回避)を追求したり、上司や取引先に対しての期待値コントロールという観点では、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」という四字熟語が示す通り、やり過ぎるのも良くないということです。
本質的でない仕事が蔓延った環境では優秀すぎる人は現状破壊の脅威となる
心理学には「現状維持バイアス」という用語があります。変化を拒み現状を維持するため、変化の生じる要因に過剰なまでに拒否反応を示す無意識下の思い込み(バイアス)を持つ状態を指します。
これは、終身雇用制度が実質的に破綻しているにも関わらず、変化に適応できていない企業やその考え方に適応してしまった社員全般に生じている心理状態だと言えるかもしれません。
たとえば、人件費の関係で外部委託やアルバイト人材の雇用を考えなければならないにも関わらず「前例がない」「正社員以外は信用できない」といった主張をする人は、現状維持バイアスによって無意識に変化を拒んでいる可能性があります。
エスカレーター式に管理職に出世してしまったものの、リーダーとしての人徳もなく部下を威圧して動かす術しか知らず、マネジメントについての勉強や実践も行っていないような「名ばかり上司」であれば、自分の無能さが露呈してしまう恐怖から「それまでいい感じに仕事が回ってきた現状」を守るため、優秀であっても自分の思い通りに動かない部下は警戒対象となるでしょう。
ただ、現状維持バイアスに関して言えば、これはジレンマのようなもので「何か変えなければならないことはわかっていても、組織が変わることで自分は不利になる」と感じていることが多い印象にはあります。その証拠に、表向きは「うちの会社も変わらなければならない」「変化をもたらす優秀な人材」が欲しいと語りますが、実際には変化を受け入れようとはしませんし、自ら行動することを嫌います。
これに、前述の「自分より優れた者を損失と考える」という人間の習性も合わさると、変化をもたらすかもしれない身近な優秀な人物を「脅威」「敵」だと見做してしまった方が手っ取り早い上に都合が良いのです。
実際、筆者自身も「挑戦する人材がいない。そういう人材を求めている」と経営階級に言われ、そのような役割に応えようとしたところ、実際にはこちらの提案や挑戦をすべて潰してくるような事態(自分たちの都合のいいように歪曲)に出くわしたことがあります。
その真意は知るところではありませんが、いずれにせよ、一個人の判断にせよ組織での判断にせよ「現状維持を維持したい」という無意識の願望が変化をもたらす存在を拒んでいる可能性は大いにあるように思えます。
優秀な人が嫌われたり敵を作らないためのヒント
ここからは、自身が優秀ではあるが周りに敵を作りやすいと感じていたり、周りに嫌われてるとの自覚がある人に向けて、仕事をより円滑に進めたり、周りの嫉妬や妨害で機会を失わないための、立ち回りのヒントや考え方をご紹介していきます。
「率直な物言い」より「角の立たない伝え方」を意識する
往々にして「正論は嫌われる」ものです。自分の非を素直に認められて改善に繋げられるような人は、少なからず「自分の非を自覚でき、受け入れられる」という意味では優秀な部類と言えますが、世の中にはそれすらできない人は案外多いものです。そういった人物にとっては、正論は聞きたくもないどころか、前述のように「本能や無意識レベルで拒絶反応すら起こす」という、劇薬のようなのものなのです。
しかし、だからと言って「正論を言うな」「正しいことをするな」と言うわけではありません。
たとえば、聞き分けの悪い上司がいたとしましょう。業務中の忙しい時間にメール文面で提案をするのと、飲み屋で二人きりで対面して提案するのでは、大きく印象も異なるものです。前者は「事務的な連絡で無駄な仕事を増やそうとしている」と受け取られる可能性もありますが、後者は少なからず「あなたを信用しているからこそ勤務時間外で個人的に相談している」という印象は伝えられると思います。
このように「伝え方を変える」だけで、自分の発言や要望の受け取られ方も変わるものですから、試してみる価値はあるかと思います。
▼参考書籍
忖度が当たり前となった組織では根回した上で改善提案を行う
上司や取引先など、相手の立場が上になるほど、いわゆる「忖度」を無意識に要求する傾向が強くなります。忖度とは、そのままの意味では「他人の心中やその考えなどを推しはかること」となりますが、ビジネスシーンにおいては「相手側が気に入る答えや提案を出す」という性質が強くなります。
過去、政治家において「忖度要求」という問題が大きく話題になりましたが、これは官僚が往々にして「政治家の意図を察して先回りし、相手が必要な業務を、相手の指示や命令なしに行う」という業務性質になりやすいことから生じた問題だと読み取れます。
要は、上の立場側からすれば「勝手に部下がやったこと」と言い訳の余地ができ、下の立場からすれば「自ら提案したこと」と上に責任回避の方便を与えることができるなど、上の立場を守りやすくなるのです。
忖度が良いか悪いかは置いておくとしても、組織が大きくなればなるほど、相手側は無意識に忖度を要求しやすい傾向にあるように思えます。また、組織が大きくなくても、本来最終的な決定をしなければならない相手が決断力がない場合、相手が気に入る提案をした上に実行案から責任範囲まで自分で決めるまですべて請け負うぐらいまでやらないと、意見や要望が通らない場面も多々あります。
また、このような忖度を行うにあたって、関係者への根回しや調整は不可欠です。たとえば、首脳同士が合って握手するだけの仕事においても、複雑な事情や関わる人や組織が多くなるのですから、関係各所への案内や聞き込みなど、事前にクリアしなければならない問題が多くなるわけです。
何も「仕事で関わる人全員と仲良くしろ」とまでは言いませんが「不用意に敵を作ることはデメリットが多くなる」という意味では「忖度」や「根回し」の必要性を理解しておくと、後々、キャリアのプラスになることでしょう。
▼参考書籍

部署外や社外での人脈づくりに励み強力な味方を作っておく
同じ部署内であったり社内での場合、下手に自発的に動けば自分たちの仕事が増えることや敵を作りかねないしがらみがあるので、往々にして「表面上は味方、実際は敵」という状況に陥りやすいものです。組織体質自体が変化を嫌っているなら、なおさらその傾向は強くなります。
ですので、職場内での人間関係構築に労力を費やすぐらいなら、部署外や社外での人脈づくりに励んだ方が、長い目で見てキャリアのプラスになる可能性は高いでしょう。なお、組織が大きく従業員が多い場合は部署外の人脈も有効ですが、小さい会社の場合は社員同士の距離が近く一部の人間が影響を与えやすいという理由から社外の方に重きを置いたほうがリスク分散にもなるはずです。
社外で人脈を作るためには、以下のような方法があります。
- SNSなどで社外の人物と接点を作る
- 交流会(飲み会)や社内イベントに参加し部署外の人物と関わりを持つ
- セミナーやイベント参加して交流しながら名刺交換を行う
- コミュニティに属して定期的な情報交換を行う
中には「部署外や社外に人脈をつくって何の得があるの?」と疑問の方もいらっしゃるかと思いますため、いくつか考えられる利点をご紹介していきます。
たとえば、中小企業に属している人材なら、大きな決定権を持つ大手企業のマネージャークラスと接点を持てれば、それだけで何らかの商談機会になるかもしれませんし、相手側が自社の持つ技術や提供する商材について興味を持った際には自分が対応担当して相手側から指名を受けるかもしれません。そうなった場合「自分を通せば取引するが、そうでないなら取引しない」レベルまでの信頼を得れば、社内の人間にどう思われようとも、実質的に会社の肩書きや力を自分の物に扱えるようなものですから、動じる必要も薄くなるころでしょう。
また、仮に採用に関して困った際にも、社外に人脈があればそこからの採用も行えるわけですから、自分と考えた合う人材をチームに加えたい時や、あるいは今の会社がどうしてもダメな場合に逃げ込む先となる企業も用意できるかもしれません。
加えて言えば、社外との人間で業務外で関わる場合は直接的な利害関係が生まれにくく、しがらみも生じにくいため、本音を話し合って信頼関係を構築したり、社内や業界内で起こっている問題についてもオフレコで話しやすいという性質もあります。
ですので、社内に敵が多いことで悩んでいたり、そのことが社内評価を下げていると感じているなら、社外での人脈づくりに意識を向けてみることで、得られるリターンは大きくなることでしょう。
余裕のあるうちに転職活動を行い自分の能力が活かせそうな会社を見つけておく
どれだけ今の会社内で努力したり工夫したところで、自分を不当に低く評価する上司や足を引っ張る同僚などがいては、報われない可能性があります。また、そのことで大きな仕事を任されなかったり、本来のポテンシャルを発揮できない事態も予想されます。
もし、そのように感じているなら、早いうちから転職活動を始めておくのもありでしょう。
転職活動と言えば「辞めると決意してから始めるもの」「職を失ってから始めるもの」という認識の方も少なくないかと思いますが、それでは実際に転職したくなった時に準備不足が原因となって妥協した転職先選びを行う結果にもつながりかねません。
そのためにも「今はまだ転職する気がない…」と考えている方でも、転職サービスに登録して転職を検討しておく価値は高いと言えます。
早期に転職サービスを活用しておくことで、業界全体の求人傾向や今の職歴と近しい求人の年収レンジを把握しでき、今の自分が本当に過小評価されているかどうか、客観的に優秀であると言えるかどうかなど、今の社内環境だけにとらわれない冷静な判断もしやすくなります。