退職や転職を考える際、多くの方が悩むのは「辞める理由」です。
転職理由や退職理由は、ほとんどの場合「口実」「建前」を使います。
なぜならネガティブな理由で辞めることがほとんどだからです。
ポジティブで前向きな理由であれば、わざわざ建前(=ウソ)を用意する必要もありませんからね。
ですので、会社への不満や不安があって辞める場合も、多くの場合は「建前」を用意することになります。
関連:嘘をついて仕事を辞めるのはあり?退職理由でウソをついて転職する場合の注意点とは?
しかし「建前とか口実とかいいから本音が知りたい」という読者も多いはずですよね。
なぜなら前向きな理由だけで退職する人はうさんくさいですから。
私が転職アドバイザー時代に相談を受けていた方も、そのほとんどが「ネガティブな理由から転職を考え出す人」ばかりでした。
つまり、ネガティブな理由で転職や退職を考えることはまったく問題ないのです。
そこで仕事に不満や不安を持つみなさまのために、厚生労働省のデータなどを参考に「転職理由・退職理由に関する本音」を集めておきました。ぜひ、ご参考ください。
会社を辞める理由は「自主都合」が75%以上
よく「会社を正当な理由なく辞めてはいけない」と言われていますが、それはあくまで企業側の都合のいい言い分でしかありません。
そのため転職する人は「リストラを告知されてから、はじめて転職活動を始める」と思いがちです。…が、それでは当然ながら遅すぎます。
ほとんどの人が離職・転職を意識しだし、在職中に水面下で転職活動を行っているのが実情です。
厚生労働省のデータを見てみますと、実に75%以上(全体の4分の3以上)の人が「自分の都合」で転職していることがわかります。
・転職者の離職理由
自主都合…75.5%
契約期間満了…6.6%
リストラ・倒産…5.3%
定年…1.9%
出向(移籍出向)…1.8%
早期退職優遇制度等…1.1%
その他…5.7%
退職に関する法規定を抑えておくと、以下の原則だけを守っておけばまったく問題はありません。
- 退職届の提出から2週間後には退職できる(法規定)
- 企業側は退職届は必ず受理しなければならない(法規定)
- 退職理由は「一身上の都合により~」でのみで構わない
- それ以上は答える義務はない
ですので、もし退職・転職を考えているのであれば、まずは「不満や不安が理由で辞めてはいけない」「自分勝手な理由で辞めてはいけない」という考えは捨ててください。
転職を成功させている人のほとんどが自主都合で退職しており、それも前職に不満や不安を持った上で辞めていますから。
日本人は生真面目でうつ・過労死まで辞めないで続けてしまう人も多いですが、そこまで会社のために尽くす必要はありません。
「仕事を辞めてはいけない!」と考えている人は、まずは自分自身の凝り固まった考え方をほぐすところから始めましょう。「仕事をやめてはいけない」という決まりや法律もありませんし、今の会社で仕事を続けたからと言って必ずしも良い結果につながるとは限りません。
「仕事を辞めてはいけない!」と思い込むことは、自ら人生の可能性や選択肢を狭めているだけに過ぎないことを知っておきましょう。
- 多くの人が「自主都合」で転職をしている
- 会社を辞める理由は「一身上の都合」のみでOK
みんなの退職理由は?
さて、みなさまの気になる「みんなの退職理由」ですが、これも厚生労働省のデータを参考に見ていきましょう。
・転職者の退職理由トップ3
- 「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」… 27.3%
- 「満足のいく仕事内容でなかったから」… 26.7%
- 「賃金が低かったから」…25.1%
また、働く上で男女の性差も決して無視できない問題です。男女の離職理由にも、社会的な事情が反映されている点にも留意が必要でしょう。
女性→「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」…27.2%
男性は「将来的に長く働ける職場」という願望、女性は「働きやすさ、自己実現、やり甲斐」という願望があることがわかってきます。
これらの退職理由を見ていくとわかりますが、決して「賃金(給料や年収)だけがすべてではない」という、最近の労働者の働くことへの価値観の変遷も見えてきますね。
また、自分の退職理由を考える際に大事なのは「理由は複数あってもOK」だということです。厚生労働省のデータにしても「3つまでの複数回答」という調査形式をと採用しており、私が転職アドバイザー時代に相談を受け付けていた方も、例外なく「複数の退職理由」を抱えていることがほとんどでした。
ですので、みんなの退職理由と当てはまる項目が多ければ多いほど、退職・転職を意識しておくべきでしょう。
待遇・労働条件が悪いから
退職理由でもっとも多いのが「賃金以外の労働条件が悪い」という理由です。
- 待遇に不満がある
- 残業時間が長い
- 休日が少ない
- 福利厚生・社会保障が充実していない
- 社内の人間関係が悪い
- 仕事の能率が悪い
…など、様々な原因が考えられます。
また、現代の日本で働くことは「うつ病」「過労死」のリスクが伴うこともあり、とくに待遇・労働条件に関しての関心は多くの人々が意識している要素でもあります。
ただし、今いる会社の待遇・労働条件が良いものなのか悪いものなのかを判断するためには、当然ながら他の職場や業界の事情を知っておく必要があります。
「なんとなく今の職場の労働条件に不満がある」という人は、早い段階から転職を意識しておき、しっかりと情報集めしておく必要があるでしょう。
仕事内容に不満があるから
「仕事内容に不満がある」という退職理由も多めです。
- 仕事にやり甲斐を感じない
- 希望通りの仕事をさせてもらえない
- 挑戦したい仕事に挑戦できない
先進国では、仕事に対して給料や待遇以上に「やり甲斐」「自己実現」を求める傾向があるため、退職理由としても多くなる原因だと言えます。
よく「最近の若者は根性が足りない!」「やりたいことを仕事に出来るわけがない」などと言われ、若者や我慢のない人間特有の退職理由に思われがちですが、実はそうでもありません。
厚生労働省のデータを参考にすると、どの年齢層でも平均25%前後は「仕事内容に不満がある」と答えており、45~49歳の層に関しては32%にも登っています。
賃金・給料が低いから
退職理由第3位が「賃金・給料が低いから」という理由ですね。
年齢別に見てみると、15~34歳までが30%前後近く理由としてあげており、とくに男性に多く見られる理由です。
少し経済や市場のことを勉強すればわかりますが、年収や賃金を決めるのは個人の能力や頑張りなど関係なく、ただの「経済状況・市場価値」だけでしかありません。
ですので、転職すれば年収が大幅に上がるということもありえない話でなく、とくに20代後半~30代前半であれば正しく転職活動を行えば高確率で年収アップにつながります。
逆に言えば、新卒採用者や若者から不当搾取している企業や経営者がかなり多いとも言えますね。
会社の将来に不安を感じたから
とくに男性に多い退職理由が「会社の将来に不安を感じた」という理由ですね。
今や終身雇用制度も崩壊、正社員で勤めておけば安心・安全な時代ではなくなったので、会社の将来性についてしっかりと考えておくことも大事な時代になりました。
「先のことはわからない」と言えば、そこまでですが会社の将来性を考慮する際、以下の要素を考えておく必要があります。
- 経営方針に不安を感じた
- 経営者や役員の能力に不安を感じた
- 業界自体の先行きに不安を感じた
- 業績・売上が年々赤字傾向
とくに数年間勤務して、会社の内情や業績がわかってくると「この会社本当に大丈夫?」と不安感を覚える方も多いことでしょう。
今や大企業でも決して安泰と言えない時代になってきました。しかし、会社の将来性を考える際には、経営者や株主並の視点や情報量が必要になってきます。それを一労働者がすべて考慮していくのはまず無理です。
ですので、会社の将来性について考える際にいちばん重要なのは「直感」です。
実際に現場で働いている人間の感覚が、一番間違いのないものなのですから。
いくら経営者や株主が「この会社は将来性がある」と言おうが、現場の人間との感覚が乖離することは珍しくもありません。今の会社に将来性を感じないのであれば、転職を意識しておくことも大事でしょう。
人間関係が上手く行かなかったから
退職理由で全体の17%ほどにあがるのが「人間関係」ですね。
比率で言えばやや少なめですが、動機や意欲で言えば人間関係で退職・転職を考える方は非常に強い不満を抱えている方が多いです。
年齢層別に見れば、15~24歳の若年層が約25%、間を置いて45歳~54歳からも約25%という割合で退職理由にあげています。逆に働き盛りの25~44歳までは全体の15%以下と若干控えめです。
人間関係を理由に辞めることには賛否両論ありますが、私見で言えば「人間関係が理由で辞めてもOK」だと考えています。
能力・実績が正当に評価されないから
退職理由に多いのが「正当評価されない」という不満です。
とくに中間管理職となる30代以降からは20%を越え、顕著になってきます。
会社の評価基準は一枚板ではなく、人間関係や社風も大いに絡み、30代以降からは会社の評価基準と自分の仕事の価値観のズレに伸び悩む時期です。
30代前半は、一般的に転職市場でも評価されやすい時期でもあると同時に、キャリアプランを見直す最後のチャンスでもあります。
35歳以降になると、問答無用で採用を控えてくる会社も増えるため、少しでも社内評価に不満があるなら転職活動を行っておくべきでしょう。
選択肢は多いに越したことはありませんからね。
他に良い仕事があったから
これは転職活動を並行している場合の、退職理由です。
とくに最近は家にいながらも転職情報を集めることができるため、今の会社よりも良い仕事を見つけ出すことはさほど難しくありません。
ただ注意すべき点は、厚生労働省のデータで「他に良い仕事があったから」と答えている人は全体の15%であり、逆に言えば残りの85%は今の職場よりもいい仕事が見つからないまま辞めているということです。
厚生労働省のデータは公共施設を経由した集計になりますので、必然的にハローワークを活用して転職活動している人が多くなり、全体の41%ほどになっています。
つまり、転職業者を介して転職活動を行っている人のデータは少なめになっているというわけですね。転職において、エージェント制などでキャリアアドバイザーの力を借りたり、優良な転職サービスで情報集めを行う重要性を知らない人がかなり多い証拠でもあります。
転職活動に失敗しないためにも「今の仕事よりいい仕事が見つかったから」という理由で退職できる準備を整えておきましょう。
色々な会社で経験を積みたいから
唯一、退職理由の中でも前向きだと受け取れるのが「色々な会社で経験を積みたいから」という理由です。
ただし、この動機に関しては「会社側によりけり」という面もあります。
なぜなら、多くの会社は正社員終身雇用制度前提の組織運営が基本であり「自社の中での経験が豊富な人材」の価値が高いと感じているからですね。
いくら経験豊富な人材を採用したとしても、自社で活躍できるかどうかは実際に雇ってみなければわかりません。
ただし、働き方改革や働き方の多様化に伴い「多くの職場で様々な経験を積んでいる人材」の価値も高くなりつつあるので、転職先の見極めが大事です。
雇用が不安定だったから
「雇用が不安定だった」という理由も、全体の11%ほどに登ります。
これは若年層に多く見られる傾向です。
非正規雇用者(アルバイト・派遣・契約社員)の方が将来性に不安を感じて、転職する場合のケースです。
今は転職市場は売り手市場であり、非正規雇用者でも比較的正社員になるチャンスを得やすい情勢になっています。
退職理由は「転職理由・志望動機」に変える必要がある
今回紹介した退職理由はあくまで「労働者側の自主都合」です。
当然ながら、バカ正直に転職先の企業に本音を見せてしまえば、採用されない確率が高くなってしまいます。
そのためにも「後ろ向きな退職理由を前向きな転職理由(志望動機)に変える」必要性が出てきます。
「転職は失敗する」と言われがちですが、それは多くの方が「正しい転職の方法を知らない」ことが原因でしかありません。
たとえば、転職が盛んなアメリカで広く採用されている「キャリアカウンセリング」の重要性や「エージェント制(第三者に転職活動を手伝ってもらう)」の利点を知らない人も、少なくはありません。
あるいは知っていても、相手を信用せずに自己流の転職活動にこだわり、挫折して妥協してしまう方もいます。以下の記事に、転職で失敗してしまう人の特徴もまとめていますので、確認しておきましょう。
退職理由で悩んでいるなら転職エージェントに相談しておこう
今回ご紹介したような退職理由で辞めようか悩んでいる方は、転職エージェントでプロに相談しておくことをオススメしますよ。
転職活動は在職中に行っておいたほうがリスクが少なく、今よりいい会社から内定をもらっておくに越したことはありません。
その際、転職エージェントを利用しておけば、効率よく自分に合った転職先を見つけ出せます。