「取引先の担当者が高圧的でムカつく!」
「取引先の担当が態度が悪くて失礼…」
「取引先の相手がいつも喧嘩腰で困る…」
このようにお悩みではありませんか?
仕事では人間関係の悩みが付き物でありますが、それは社内外だけではなく、取引関係にある会社間での人間に対しても生じるものです。
これが社内での上司と部下の関係であれば、上司の個人的な人格や感情が原因となることが多いため、たとえばより上司の上の立場に相談するなどすれば、対処できる可能性があります。しかし、取引関係の場合は立場やしがらみがややこしくなっていたり、誰がどの役割や責任を持っているかも曖昧になりやすいため、対処が難しいように思えます。
しかし、冷静に状況を分析してみたり原因を考えてみると、見えてくるものもたくさんあります。
たとえば、取引先が自分に対して理不尽な態度を取ってきた場合、過去、自社と何かしらのトラブルがあって不信感を抱かれていたとしましょう。その場合、自社に対する不信感を上手く汲んであげることで、信頼を勝ち取るチャンスにもなるかもしれません。
このように、たとえ取引先が横暴で理不尽でやり返したい気持ちになったとしても、その状況を冷静に分析し最適な対応を行うことで、上手くビジネスチャンスにしてしまうのが一流のビジネスパーソンというものです。
もし読者の方が取引先とのコミュニケーションにストレスを感じているなら、それはもしかしたらチャンスになり得るかもしれないと、一度、前向きに考えてみるべきです。
本記事では、取引先の理不尽な対応や高圧的な態度にお困りの読者に向けて、それをチャンスに変えていくための考え方や交渉術についてご紹介していきますので、ぜひ、ご自身の仕事や人生の参考にしてみてください。
取引先相手とは「友好的に」が原則
取引先相手にムカついている方に知っておいて欲しいことは、取引とは”あくまで友好的”にが大原則です。
別に「取引先と仲良くしろ」と言っているわけではありません。
取引において、相手に不快な顔を見せたら負けだという、当たり前の話をしているのです。
わかりやすく、政治で考えてみましょう。
他国の敵対関係にある政治家同士が、表面上ニコニコして悪手を交わすのは、あくまで友好的に接することが鉄則だと知っているからです。
これが両首脳が怒った状態で「お前の国ぶっ潰すぞ?戦争するぞ?あ?」みたいなヤンキーレベルの知性のないやりとりでは、品性の欠片もありませんよね。
ですので、両首脳とも敵国をぶっ潰したくてたまらないと思っていても、表面上は笑顔で仲良く振る舞うわけです。
もっとハッキリ言うと、ビジネスでは先に怒って感情を露わにした方が負けなのです
以下の記事でも、仕事でむやみ敵対するメリットがないという原則についてご紹介していますので、ぜひとも参考にしてみてください。
取引先相手に感情を表に出したら「負け」だと知っておこう
取引においては「先に怒ったほうが負け」というのは常識です。
それには「オラオラ交渉の対象になる=揚げ足を取られやすくなる」からという、交渉戦略上不利になりやすいという理由があります。
オラオラ交渉とは、わかりやすく言えば「オレの命令に従わなければ、どうなるかわかっているよな?」という、相手を威圧して従わせる交渉術のことです。
これは相手が露骨に嫌な態度を表に出してきて、ケンカを売ってきた場合、効果的に活用できます。
たとえば、相手が露骨に嫌味な態度を取ってくれば、
「あなた、ウチの商品をバカにしているんですか?」
「〇〇さんと申しましたね?あなたでは話になりません。他の担当者に替えてくれなければ、この商談は打ち切りで」
「その態度は私では話にならないということでしょうか?」
…など、相手の態度や対応をダシにして、取引の話を打ち切る方法が使えるからです。
そこからさらに、
「あなたのような人の話を真面目に聞かない相手では、今後の信頼関係にも不安が残ります。ウチの商品は提供できません」
「あなたのような理解力も愛嬌もない担当者を対応に出してくるなんて、ウチもずいぶんナメられたものですねぇ」
「私では話にならないというのでしょうか?であれば、今この場で社長をお呼びしても構いませんが、その場合は何時間も私とここで待っていただきますよ?」
…などと、相手を追い込ちをかけるための方便として使えるわけです。
要は「あなたの会社、ウチの会社をバカにしていますよね?こちら側は取引を今ここで打ち切ってもいいんですよ?」と、相手を威圧することが出来るのです。
ですので、先に相手が怒りを露わにすれば、こちらが勝ったも同然と思って、冷静に対処しましょう。
逆に相手があからさまに挑発してきている場合は「その手に乗るか」と受け流し、相手に隙を見せないことが大切なのです。
取引先にムカつかないで上手く付き合うための方法とは?
高圧的な取引先に感情的になってしまい、ついついムカついて関係を切りたくなることはあるかと思います。ですが、読者が一社員の権限ですと、自分の意志だけで関係を切るのは現実的には困難です。
また、冷静に相手を分析すれば、味方につけて良好な取引関係になれるチャンスが見つかることだってあります。
本来、お互いに友好的な態度でいた方が得なはずの取引先に対して、理不尽な態度を見せつけるということは、その裏に何かしらの不満があるということです。
その不満を特定して上手いこと懐柔できれば、すんなり話の通してくれる心強い味方にもなり得ます。
理不尽な要求をしてくる取引先は厄介に見えますが、上手く手懐けることで得られるメリットや身につく自信やスキルは計り知れませんので、少しでも仕事に対して熱意があるならチャンスだと捉えてみて、ここで紹介する方法を少しずつ実践してみましょう。
まずは取引先と自社との力関係を測る
ビジネスにおける交渉事では「力関係」を測ることが大事です。
たとえば、下請け企業が大企業と取引をしていたとして、その大企業が「他に乗り換え先企業ないため、その下請け企業が困る」という状況だったとしましょう。
大企業の担当者が「なんとしても予算を下げろ」と上から無茶ぶりされていたとします。
そうすると、大企業の担当者は予算を下げなければ上からお叱りを受けるわけですから、下請け企業に対して理不尽な要求を行うことになることは想像に難くないでしょう。
この場合、一見すると下請け企業が理不尽な要求をされているように見えて、実際に困っているのは下請け企業に無理な要求を通さないと自分の立場が危うい大企業の担当者なわけです。
人は余裕がなくなったり他人からプレッシャーをかけられると、他人にも怒りやすくなる性質を持ちます。
加えて、穏便に理不尽な要求を通す交渉力もなければ、無理難題を通す際に用いる手段は「怒りの感情で相手を威圧する」になりがちです。
ですので、取引先が高圧的で怒っているのであれば「本当に困っているのは相手だ」と仮定しましょう。
ただ、これだけでは取引先との力関係は「あくまで仮定」の域を出ません。
ですので、次に行うのは「他の競合との取引はあるか?」「自社との取引が打ち切りになると困るのは相手側ではないか?」ということです。
また、そこまで裏取りを行わずとも、一社員の権限で取引関係を切ることが難しい立場の場合、単純に「その話を通さないと不利になるのは相手自身」であれば、企業同士の力関係抜きにしても、相手側から見れば実際には自社の方が上に見られている可能性も高いです。
この力関係を測る部分は非常に難しいですが、高圧的であるにも関わらずあっさりとこちらの話を聞く素振りがあれば、少なからず「こちらが何かしらの条件を出すこと」を待っている可能性は非常に高いです。
そもそも、取引先に理不尽な要求を通す仕事自体が汚れ仕事で気が重いわけですから、こちらが譲歩して協力する姿勢を見せるだけで、あっさり対話に持ち込めることも多々あります。
わがままは上手く突っぱねる
威圧的でない取引先にしても、妙に人が良い割に要求してくることはわがままばかりなケースもあります。
これはこれで甘えられるとこちらの負担が増えるわけですから、上手く突っぱねる対策が必要となります。
上手いやり方としては「Noとは言わないがYesとも言わず、条件付きなら請ける」と適度な距離感を保ちながら話を進めることです。
単に相手が「何の考えもなしにワガママを言っているだけ」なら、条件を指定することですんなりこちらの言い分を聞いてくれることは珍しくありません。
逆に相手のワガママを2つ返事で受けると、都合の良い相手と見られて無茶ぶりがエスカレートしがちです。
基本的に取引経験のないクライアントはわがままになりやすい傾向があり、相手のコントロール方法も心得てないことが多めです。
ですので、こちらが上手くなだめればすんなり言うことを聞いてくれることも多いため、事細かにこちらの事情を伝えた上で、わがままをそのまま通さないでワンクッション挟むことを意識しておきましょう。
一度放置して距離を置く
すぐに回答を出す必要のない取引先との関係でしたら、あえて放置しておくのも手です。
前述の力関係において自社が有利な場合、放っておいても向こうから勝手に連絡してくるからです。
それも理不尽な要求の場合、仮に連絡が来なくても理不尽な要求を飲まずに引き伸ばしできるわけですし、相手が焦っているなら向こうが条件を出すまで待てば良いだけの話になります。
また、自社側が不利な場合も社内で検討して話をまとめる時間を確保できることができます。
もし、自分の手に負えない案件だとして、上司からも手助けが得られない状況でしたら、メール文面で相談した記録だけ残しておき、後から怒られること覚悟で上に丸投げしておく方法もあります。
協力者と共に交渉に臨む
理不尽な要求を含むクレーム対応では、とくに自分が何かしらの失敗によって不利な条件を突きつけられているのであれば、他の協力者と共に臨むのが冷静な第三者目線が得られるので、最善の手段です。
直属の上司に相談して交渉戦略を練った上で臨めればベストですし、契約書が絡むような複雑な案件であれば法務部や弁護士が味方につくと非常に心強いため、威圧的な取引先にも毅然と対応できるはずでしょう。
また、読者が経験が浅い場合は、上司側も「ある程度取引先とトラブルを起こしてもカバー可能」という範囲で仕事を振っている可能性もあります。
その場合、あっさりとピンチをチャンスに変えてくれるかもしれませんし、その場面に立ち会えればピンチを乗り越える場面を見て学ぶ経験にもなります。
交渉が主な仕事である政治家や営業マンも、大半の場合は「チーム戦」で事に当たるものです。
どうしても自分の手に負えないと感じる相手は、社内で協力者を見つけ出して事に当たるようにしましょう。
嫌味や失礼な言動はひたすら聞き流す
取引先に嫌味や失礼な言動をふりまく人も少なくありません。
そういった人は十中八九、自社に対して何らかの恨みがあるか、嫌々付き合わざるを得ない事情があると推察できます。
ですので、力関係だけで言えば勝っているのは自社だと考えて問題ないでしょう。
ただ、そのことで取引関係が切れても自社としても困るわけですから、穏便に済ますためには嫌味な言動や失礼な発言も聞き流すに越したことはないでしょう。
上手く聞き流すためには「大事なこと以外は相槌打つだけ」というのが最善の方法です。
そうすることで、とくに理不尽な要求がないのであれば話を聞き流すだけで済み、何かしらの要求がある場合のみは質問を返して話を進めるだけで済むからです。
ある意味で、必要のない情報はすべて聞き流して、必要な情報だけ自社内に持ち帰ることが取引先と関わる者の仕事でもあるので、嫌な取引先に怒らずに冷静に対応できることで上がる評価もあるはずです。
嫌な顧客を呼び込まないようにしておく
これは既存の取引先ではなく、あくまで新規顧客開拓において使える手段ですが「そもそも、嫌な顧客を呼び込まないようにしておく」という未然の防止手段もあります。
たとえば、オンラインミーティングが普及して当たり前に時間を拘束してくる取引先相手なら「リアル商談でしか話を受けない」と説明して相談するためのコストを上げることで弾いたり、自社サイトで集客しているなら問い合わせフォームの必須入力事項を増やしてモチベーションの低い顧客を弾くなどの手段が考えられます。
とくに商談見込みが低い顧客や既存顧客の中でも緊急度が低い場合なら、相手にしなくてもさほど関係が冷え込むことも自社の損害になることもないので、自分自身の元に呼び込まないように立ち回ることも大事です。
法的手段による防衛を講じる【契約書ベースで話が進んでいる場合】
上記の対策はあくまで契約書を攻撃材料と使われない場合の、取引先担当者個人の感情に基づく問題に関しての話です。
厄介になるのが、契約書ベースで理不尽な要求を通そうとされているケースです。
契約書に記載がないことに対してクレームをつけられたり、あるいは契約書に記載があることと違うとイチャモンをつけられれいる場合、感情的な対策だけでは言い返せなくなります。
この場合、まずは契約書を作成した側が相手か自社かを特定しましょう。
前提となりますが、原則的に契約書は作った側が有利になるように出来ていることが多いです。
そのため、契約書を作っているのが相手の会社側である場合、非常に不利な状況になります。
また、契約書をもとにクレームをつけてきているのであれば、相手側も戦略的に裁判を検討している可能性があるため、一社員では手に負えない事態に発展している可能性も高めです。
ですので、社内へ相談することはもちろん、場合によっては弁護士に相談して守りを固めるなどして、自社および自分自身の防衛手段を講じておく必要があるでしょう。
仮に裁判沙汰に発展せずとも、弁護士に相談している旨を相手側に伝えることで、相手側は企業の看板を背負って裁判沙汰におよぶことはリスクになるわけですから、そこで引き下がってくれるかどうかで本当に契約書の内容を履行するかどうかが推し量れます。
取引先との関係は非常に頭を使う仕事である
以上のように、取引先との交渉はもっとも総合的な判断力や機転の要される仕事であることが、おわかりいただけたかと思います。
ハッキリ言いまして「取引先がムカつく!」なんて低次元な感情で動く社会人は、自分側の思慮の浅さを恥じて戒めた方がいいので、この機会に考え方を改めてみるといいでしょう。
逆に「へえ、そんな考え方があるのか」「なるほど、面白そうだな」と思った方は、営業としても大成する素質があるので、この機会について交渉術についてもっと学んでみるといいかもしれません。
今回紹介した取引・交渉についての考え方は「原則立脚型交渉」として、非常に有名な考え方ですので、以下の著書などを参考にしてみるといいでしょう。
取引先との関係がどうしようもない時は転職するも一つの手段
今回ご紹介したように、取引先が態度が悪いことや理不尽な要求が続くのは、今の自分の企業側に、
- 取引先との信頼関係構築を行う意識が希薄
- 取引での立場が不利なので横暴な態度を許してしまいやすい
- 自社提供する製品/サービスがクレームを引き起こしやすい性質である
- 契約による防衛で自社員を守る意識が希薄
など、取引先に高圧的な態度をさせてしまう要因であったり、理不尽な取引先の態度から社員を守る意識が会社に欠けている証拠かもしれません。
そういった状況では、どれだけ自分が努力したところで取引先との良好な関係づくりもできませんし、自社側に問題があるなら本質的な営業力も顧客対応能力も身につくことなく、理不尽な取引先への対応もその場しのぎの対応ばかりとなってしまい、今後も理不尽な取引先との関係が続くことが予想されます。
ですので、どうしても頭のおかしい取引先との関わりにうんざりしていて耐えられないなら、これを機に転職の可能性を検討した上で、取引先とも良好な関係の中で仕事できる会社環境で働く未来を実現する選択肢も持つべきでしょう。